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第44話 宇治原くんの初デート 4 アミューズメント施設 3
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「お、今日は違う女の子ですな」
「違う女の子? 」
「女の子を連れてきたのは初めてだ! 」
「……皆そう言うのですよ。皆」
ははは、とダークサイドに落ちた司会者が笑いながらカメラを構える。
愛莉が「むぅ~」と頬を膨らませて俺を睨みつけるが「トモのことだ」というと「なんだ」とあっさり引いてくれた。
「ではお二人。もっと肩を寄せ合って」
「え? 今までそんなことなかったと思うのですが」
「なにをおっしゃいますか。仲の良いカップルは肩を寄せ合い密着し、そして爆ぜろ」
完全にダークサイドに落ちた司会者兼カメラマンが本音をぶちまけた。
おいおい、と心の中で呆れながらチラリと愛莉の方を見る。
落ちた照明が元に戻っている中彼女は少し顔を赤らめている。
正常ではないカメラマンの言葉をそのまま受け止めなくても良いんだぞ、と言いかけた所で愛莉がいきなり俺の腕にくっついて来た。
腕を見るとくっつく愛莉が上目遣いでこちらを見てきている。
絡められた腕のせいか控えめなそれが俺の腕に密着し体中が熱くなる。
――このままではまずい。
そう思い顔を逸らそうとするも愛莉の黒い瞳に吸い込まれそうになる。
妙な魔性を持つ黒い瞳から目が離せない。
瞳も心も体も固定される。
ぼーっとしながら愛莉の瞳を見つめていると「爆発しろ」という言葉と共にシャッターが降りる音がした。
「こちらになります、リア充」
「あ、ありがとうございます」
ダークカメラマンの言葉で現実に戻る。
俺の体から温かみが消える。
それに寂しさと安堵を覚えながら声の方を見るとニコニコしているカメラマン (闇)がそこに。
明らかに「早くしろ」という視線に耐えかねて、俺は手を前に出す。
カメラマンの手には二つの写真立ての景品があった。事前に用意していたものをそこに嵌めたのだろう。
写真立ての中には俺と愛莉が見つめ合っている絵が嵌め込まれている。
思い出し、そして多くの目線の前であんなことをしてしまったことに羞恥を覚え顔を逸らしてしまう。
サッサとしろ、という雰囲気の中震える手でそれを受け取り「では残りゲームをお楽しみください」という言葉と共に従業員は去っていった。
「す、すごいインパクトのある人だったね」
「いつもはあんな感じじゃないんだが」
「そんなに頻繁に来てるの? 」
「……試験の合間に、来るくらいかな」
「佐々木君と、だよね」
「他に一緒に行く奴なんていないからな」
「……そっか」
愛莉が写真をぎゅっと体に引き寄せる。僅かに頬を緩ませると安堵に似た息を吐く。
そのまま何も言わずにテーブルへ足を進めて写真を立てる。
「じゃ、次ボクの番だね」
そう言いながら彼女はボールを転がした。
★
「いちゃいちゃしてるね」
「あれで恋人じゃないのが不思議ですね」
簾達から一番遠いレーンから彼らを観察する熟年夫婦こと友和と冴香がそこにいた。
彼らがゲームに入ったのは丁度照明が落とされたタイミング。
真っ暗い中の入場だったため簾達が彼らに気付かなかったのも不思議ではない。
もちろん自分達の存在がバレないようにそのタイミングを狙っている。
「レン君はともかく重原さんは……わざとだよね? 」
そう言いながらゴロンとボールを投げる友和。
投げ終わりジュースを飲んでいる冴香の元へ戻っていると「ガタン」と大きな音が彼の耳に入る。
聞こえると同時に体を反転させて液晶を見上げ結果を確認する。
赤い点滅が一つ。
友和は「げ。ピンが一つ残ってた」と肩を落としながら冴香の元へ行くと、冴香が立ち上がりボールを準備する。
「さて。私もあの二人の仲を熟知しているわけでは無いので……どうでしょうか? 」
「そうなの? 見た感じあからさまだったけど」
「意識しての行動か、と問われれば意識しての行動でしょう。しかしながらそれが本当の意味で「恋愛感情」からくるものなのかはわかりかねます」
冴香はボールを拭きながら友和に言う。
友和はその様子を見ながら「ふ~ん」と納得のいくような、いかないような顔をして冴香に向く。
するとボールに指を入れた冴香が友和の方を向いた。
「ではこの勝負。いただきますね」
「……少しは手加減してよね」
「勝負事は全力で。これが私の信条なので」
今日のランチは友和もちとなった。
「違う女の子? 」
「女の子を連れてきたのは初めてだ! 」
「……皆そう言うのですよ。皆」
ははは、とダークサイドに落ちた司会者が笑いながらカメラを構える。
愛莉が「むぅ~」と頬を膨らませて俺を睨みつけるが「トモのことだ」というと「なんだ」とあっさり引いてくれた。
「ではお二人。もっと肩を寄せ合って」
「え? 今までそんなことなかったと思うのですが」
「なにをおっしゃいますか。仲の良いカップルは肩を寄せ合い密着し、そして爆ぜろ」
完全にダークサイドに落ちた司会者兼カメラマンが本音をぶちまけた。
おいおい、と心の中で呆れながらチラリと愛莉の方を見る。
落ちた照明が元に戻っている中彼女は少し顔を赤らめている。
正常ではないカメラマンの言葉をそのまま受け止めなくても良いんだぞ、と言いかけた所で愛莉がいきなり俺の腕にくっついて来た。
腕を見るとくっつく愛莉が上目遣いでこちらを見てきている。
絡められた腕のせいか控えめなそれが俺の腕に密着し体中が熱くなる。
――このままではまずい。
そう思い顔を逸らそうとするも愛莉の黒い瞳に吸い込まれそうになる。
妙な魔性を持つ黒い瞳から目が離せない。
瞳も心も体も固定される。
ぼーっとしながら愛莉の瞳を見つめていると「爆発しろ」という言葉と共にシャッターが降りる音がした。
「こちらになります、リア充」
「あ、ありがとうございます」
ダークカメラマンの言葉で現実に戻る。
俺の体から温かみが消える。
それに寂しさと安堵を覚えながら声の方を見るとニコニコしているカメラマン (闇)がそこに。
明らかに「早くしろ」という視線に耐えかねて、俺は手を前に出す。
カメラマンの手には二つの写真立ての景品があった。事前に用意していたものをそこに嵌めたのだろう。
写真立ての中には俺と愛莉が見つめ合っている絵が嵌め込まれている。
思い出し、そして多くの目線の前であんなことをしてしまったことに羞恥を覚え顔を逸らしてしまう。
サッサとしろ、という雰囲気の中震える手でそれを受け取り「では残りゲームをお楽しみください」という言葉と共に従業員は去っていった。
「す、すごいインパクトのある人だったね」
「いつもはあんな感じじゃないんだが」
「そんなに頻繁に来てるの? 」
「……試験の合間に、来るくらいかな」
「佐々木君と、だよね」
「他に一緒に行く奴なんていないからな」
「……そっか」
愛莉が写真をぎゅっと体に引き寄せる。僅かに頬を緩ませると安堵に似た息を吐く。
そのまま何も言わずにテーブルへ足を進めて写真を立てる。
「じゃ、次ボクの番だね」
そう言いながら彼女はボールを転がした。
★
「いちゃいちゃしてるね」
「あれで恋人じゃないのが不思議ですね」
簾達から一番遠いレーンから彼らを観察する熟年夫婦こと友和と冴香がそこにいた。
彼らがゲームに入ったのは丁度照明が落とされたタイミング。
真っ暗い中の入場だったため簾達が彼らに気付かなかったのも不思議ではない。
もちろん自分達の存在がバレないようにそのタイミングを狙っている。
「レン君はともかく重原さんは……わざとだよね? 」
そう言いながらゴロンとボールを投げる友和。
投げ終わりジュースを飲んでいる冴香の元へ戻っていると「ガタン」と大きな音が彼の耳に入る。
聞こえると同時に体を反転させて液晶を見上げ結果を確認する。
赤い点滅が一つ。
友和は「げ。ピンが一つ残ってた」と肩を落としながら冴香の元へ行くと、冴香が立ち上がりボールを準備する。
「さて。私もあの二人の仲を熟知しているわけでは無いので……どうでしょうか? 」
「そうなの? 見た感じあからさまだったけど」
「意識しての行動か、と問われれば意識しての行動でしょう。しかしながらそれが本当の意味で「恋愛感情」からくるものなのかはわかりかねます」
冴香はボールを拭きながら友和に言う。
友和はその様子を見ながら「ふ~ん」と納得のいくような、いかないような顔をして冴香に向く。
するとボールに指を入れた冴香が友和の方を向いた。
「ではこの勝負。いただきますね」
「……少しは手加減してよね」
「勝負事は全力で。これが私の信条なので」
今日のランチは友和もちとなった。
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