27 / 62
第27話 勉強教えて宇治原くん! 8 おのれ大黒、やってくれたな!
しおりを挟む
俺が愛莉に成績を聞いたら彼女の顔が強張ったのがわかった。
彼女が勉強できないことは感じ取っている。
何せ「努力をすることが楽しい」と言いつつも俺を頼るほどだ。
自分一人では医学部入学への活路を見いだせないレベルとわかる。
しかしどこまでできて、そして何が得意で苦手なのかまでは分からない。
こればかりは、例え失礼であっても聞かないと教えようがない。
「テ、テストを見せないといけない……、かな? 」
「出来れば見せて欲しい」
そう言ったが絶対に見せて欲しい。
見せてくれないと対策の取りようがない。
学内テストの成績を上げるのは必須。
そして赤本レベルで高得点を維持するのも必須だから。
赤本がどうしても解けないとなると、学内テストで良い点数を取り、生徒会に入る準備をして、内申点を稼ぎにいく、という方法も考えないといけない。
つまり推薦入学だ。
医学部に行く方法はなにも一般入試だけじゃないからな。
「テストは今持っていないから今晩渡しに行くよ」
「今晩?! 」
「マンション近いし、こういうのは早い方が良いでしょう? 」
「……わかった。前のテスト結果は後で見せてもらう」
真剣な表情で愛莉が頷く。
「正直ボクのテスト結果は良くない」
「それは薄々知っていた」
「それはそれで失礼じゃない? 」
「今までの事を踏まえての事だ。むしろ自分でどうにかなるのなら俺に相談しないだろ? 」
「……そうだけど」
少し俯く彼女に申し訳なく思いながらも催促した。
「……下位の中くらい、と言っておくよ」
「となると二百五十位前後、ということか」
この高校は一学年約三百人のマンモス校。
その下の中ということはこの辺が妥当だろう。
これは厳しい。
一気に学力を上げるのもそうだがまず壁を乗り越えるのが難しい。
テスト順位を上げるには幾つかの壁がある。簡単に下位から中位、中位から上位、上位からトップ十までの壁だ。
俺達は自由を手にする為にこれらの壁と戦わないといけないのだが、途中ノイローゼで離脱者が出ることも少なくない。
しかし、なるほど。
陸上部でどんな練習をしていたのかはわからないが、頑張り過ぎて倒れる可能性が高いから、大黒先生はああして息抜きをさせるようにと釘を刺したのか。
適度に息抜きをしつつトップ三を固めている俺とトモ、そして遠藤さんからすれば勉強とは効率の問題だ。
だがスタートラインに立っていない愛莉からすればがむしゃらに頑張るしかない訳で。
「わかった。なら一先ず計画を立てよう。その為にも苦手科目を教えてくれ」
「……全部苦手だけど……、強いて言うなら科学系、かな」
「化学・物理・生物といった所か。なら数学も得意そうではないな」
鞄からメモ帳をとり彼女の話を聞きながら、この前作ったスケジュール表を弄っていく。
聞く限り良くて三十点、悪いものだと一桁もありそうだ。
これは思った以上に難易度が高い。
大黒先生じゃないが不可能じゃないと俺は思う。
要は効率。
今まで彼女が陸上に割いていたリソースを勉強に移すだけ。
もし彼女にやる気がなかったら「無理」と答えていただろう。
だが今の彼女はやる気に満ちている。
次の期末テストで上位三十人に入り、モチベーションを維持する。
それができると本格的に医学部が見えて来る。
逆に、大黒先生が上位三十位と区切ってしまったため、こちらで目標設定を調節することが出来なくなったのは痛い。
目標未達成によるモチベーションの低下が彼女のパフォーマンスを落とす可能性があるからだ。
俺の予定だと最初は下位脱出、そして順当に中の上を狙い、三年までに上位に組み込んで、その勢いのまま医学部の入試を受ける計画だった。
余計なことをしてくれた、と思うもどうしようもない。
「一先ずこのスケジュールで行こう」
そう言いながら彼女にノートを渡す。
腕を伸ばし受け取った愛莉はパラパラと捲った。
「……運動部の練習メニューみたいだね」
「運動部の練習メニューというのが俺にはわからないが、まぁこんな感じだ。後は愛莉のテスト結果を見て細かい所を調節しようと思うんだが……。どうだ? 」
愛莉を見るとキリッとした表情をこちらに向ける。
「やるよ。そして受かってみせる! 」
「……まずは上位三十位だな」
「あ、そうだね」
愛莉がクスクスと小さく笑い空気が弛緩する。
さて。頑張るとしましょうか!
彼女が勉強できないことは感じ取っている。
何せ「努力をすることが楽しい」と言いつつも俺を頼るほどだ。
自分一人では医学部入学への活路を見いだせないレベルとわかる。
しかしどこまでできて、そして何が得意で苦手なのかまでは分からない。
こればかりは、例え失礼であっても聞かないと教えようがない。
「テ、テストを見せないといけない……、かな? 」
「出来れば見せて欲しい」
そう言ったが絶対に見せて欲しい。
見せてくれないと対策の取りようがない。
学内テストの成績を上げるのは必須。
そして赤本レベルで高得点を維持するのも必須だから。
赤本がどうしても解けないとなると、学内テストで良い点数を取り、生徒会に入る準備をして、内申点を稼ぎにいく、という方法も考えないといけない。
つまり推薦入学だ。
医学部に行く方法はなにも一般入試だけじゃないからな。
「テストは今持っていないから今晩渡しに行くよ」
「今晩?! 」
「マンション近いし、こういうのは早い方が良いでしょう? 」
「……わかった。前のテスト結果は後で見せてもらう」
真剣な表情で愛莉が頷く。
「正直ボクのテスト結果は良くない」
「それは薄々知っていた」
「それはそれで失礼じゃない? 」
「今までの事を踏まえての事だ。むしろ自分でどうにかなるのなら俺に相談しないだろ? 」
「……そうだけど」
少し俯く彼女に申し訳なく思いながらも催促した。
「……下位の中くらい、と言っておくよ」
「となると二百五十位前後、ということか」
この高校は一学年約三百人のマンモス校。
その下の中ということはこの辺が妥当だろう。
これは厳しい。
一気に学力を上げるのもそうだがまず壁を乗り越えるのが難しい。
テスト順位を上げるには幾つかの壁がある。簡単に下位から中位、中位から上位、上位からトップ十までの壁だ。
俺達は自由を手にする為にこれらの壁と戦わないといけないのだが、途中ノイローゼで離脱者が出ることも少なくない。
しかし、なるほど。
陸上部でどんな練習をしていたのかはわからないが、頑張り過ぎて倒れる可能性が高いから、大黒先生はああして息抜きをさせるようにと釘を刺したのか。
適度に息抜きをしつつトップ三を固めている俺とトモ、そして遠藤さんからすれば勉強とは効率の問題だ。
だがスタートラインに立っていない愛莉からすればがむしゃらに頑張るしかない訳で。
「わかった。なら一先ず計画を立てよう。その為にも苦手科目を教えてくれ」
「……全部苦手だけど……、強いて言うなら科学系、かな」
「化学・物理・生物といった所か。なら数学も得意そうではないな」
鞄からメモ帳をとり彼女の話を聞きながら、この前作ったスケジュール表を弄っていく。
聞く限り良くて三十点、悪いものだと一桁もありそうだ。
これは思った以上に難易度が高い。
大黒先生じゃないが不可能じゃないと俺は思う。
要は効率。
今まで彼女が陸上に割いていたリソースを勉強に移すだけ。
もし彼女にやる気がなかったら「無理」と答えていただろう。
だが今の彼女はやる気に満ちている。
次の期末テストで上位三十人に入り、モチベーションを維持する。
それができると本格的に医学部が見えて来る。
逆に、大黒先生が上位三十位と区切ってしまったため、こちらで目標設定を調節することが出来なくなったのは痛い。
目標未達成によるモチベーションの低下が彼女のパフォーマンスを落とす可能性があるからだ。
俺の予定だと最初は下位脱出、そして順当に中の上を狙い、三年までに上位に組み込んで、その勢いのまま医学部の入試を受ける計画だった。
余計なことをしてくれた、と思うもどうしようもない。
「一先ずこのスケジュールで行こう」
そう言いながら彼女にノートを渡す。
腕を伸ばし受け取った愛莉はパラパラと捲った。
「……運動部の練習メニューみたいだね」
「運動部の練習メニューというのが俺にはわからないが、まぁこんな感じだ。後は愛莉のテスト結果を見て細かい所を調節しようと思うんだが……。どうだ? 」
愛莉を見るとキリッとした表情をこちらに向ける。
「やるよ。そして受かってみせる! 」
「……まずは上位三十位だな」
「あ、そうだね」
愛莉がクスクスと小さく笑い空気が弛緩する。
さて。頑張るとしましょうか!
34
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件
ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。
一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。
それは……
同い年の子と同居?!しかも女の子!
ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。
とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。
これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!
「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。
主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。
話もだいぶ変わると思います。
コミュ障な幼馴染が俺にだけ饒舌な件〜クラスでは孤立している彼女が、二人きりの時だけ俺を愛称で呼んでくる〜
青野そら
青春
友達はいるが、パッとしないモブのような主人公、幸田 多久(こうだ たく)。
彼には美少女の幼馴染がいる。
それはクラスで常にぼっちな橘 理代(たちばな りよ)だ。
学校で話しかけられるとまともに返せない理代だが、多久と二人きりの時だけは素の姿を見せてくれて──。
これは、コミュ障な幼馴染を救う物語。
毎日更新します。
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです
.
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話
俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる