20 / 62
第20話 勉強教えて宇治原くん! 1
しおりを挟む
「レン。勉強を教えて! 」
「………………え? 」
放課後突然愛莉にそう言われた俺は目を点にした。
トモと遠藤さんの熟年夫婦も帰り他のクラスメイトも少なくなったこの教室で、腰に手を当て真剣な表情で言う愛莉に対して首を傾げる。
「あぁ。ごめんごめん。唐突だったよね」
「ものすごくな」
「冴香にレンが勉強できるって聞いたから教えてもらおうと思って」
笑顔を作りながらそう言う愛莉。理由をきちんと話せていないと思いつつも「トモと同じことをしやがって」と心の中で毒づいた。
看病イベントの次は「二人っきりの勉強イベント」ということか。
いやあの二人が話を合わせて提案したことも考えられる。
トモと遠藤さんからすれば俺が誰かとくっつくのが面白いのかもしれない。
だが被害者は俺だけではなく愛莉もだ。彼女の事を考えると心が痛む。
けれど選択肢として完全に間違っていない所もいやらしい。
あのいやらし夫婦め。
「何で俺に? 」
「冴香に「誰に勉強を教えてもらったらいい? 」て聞いたらレンの名前が真っ先に出たんだ」
やっぱりか、と思いつつ更に聞く。
「けど教え方とかなら同性の冴香でも良いんじゃ? 」
異性と勉強。男の俺からすればはしゃぎたいほどに嬉しいものだが、客観的に見ると同性で勉強した方が集中力は高くなると思う。
むしろ俺なら緊張して勉強どころじゃなくなるし。
「冴香がレンの方が勉強ができるって聞いたから大丈夫かなって」
「……学力と指導力が相関するとは思わないが」
「でも冴香の推しだからね。信用しているよ。けど……」
「けど? 」
「ボクが冴香にレンの学年順位を聞いた時、何故か目を見開いていたけどどうしてなんだろうね? 」
その言葉に、俺はすぐに答えることが出来なかった。
理由は簡単で単純明快だ。
俺がクラスの中で空気なだけ。
学年上位を取っているのに愛莉ですら知らなかったことに遠藤さんは驚いたのだろう。
この高校は県内有数の進学校だ。
無論俺やトモ、そして遠藤さんのように学力で市外県外から来た人も多い。
それ故学年上位を取ると注目を浴びるし嫉妬の目線も注がれる。
成績が良ければ内申点も多く貰えるし、アルバイトが許可される等の優遇措置を得ることができる。
この学校に置いて勉強は自由を手にする為の手段の一つなのだ。
だから今の俺の様に嫉妬すらされない成績優秀者はおかしい。
影が薄いを通り越しての空気。
愛莉の言葉でまさに俺の存在が空気であることが証明された所だ。
「どうしたの? 悲しそうな顔をして」
「いや俺の存在というものがどんなものか再確認していた」
「??? 」
「けどよく考えれば最初会った時、愛莉はよく俺の名前を知ってたな」
「何回か話したことあるからね」
「それで覚えられるとは……、すごいな。クラスメイトの名前、全部言えるんじゃないか? 」
「言えるよ? 」
何を当然、と言うような表情でさらっという愛莉。
その記憶力はすごい。
俺も記憶力は高い方だがクラスメイトの名前は殆ど覚えていない。
俺自身が小さなコミュニティで十分と思っているのもあるが、まずもって周りのテンションに合わせるのが難しいから積極的に関わり合おうとしていないからだ。
この高校は俺やトモ、遠藤さんがいた中学よりも都会である。
その気風のせいか進学校にもかかわらずテンションが高い。
正直合わせるのに疲れる。
疲れる人間関係を率先して作るよりかは小さなコミュニティでひっそりと勉強をしていた方が良いということで、所謂選択ボッチ。いやあの二人がいるからボッチではないが。
「まぁ勉強の話に戻るが、教えるのはいいけど正直人に勉強を教えるのは始めてだ。成績上昇は約束できない」
「それでもいいよ。ボク一人でやるより全然いいと思うから」
そうか、と答えて立ち上がる。
ある程度話がまとまったのでバックを手に取り替える準備を。
俺が引き受けて安心したのかホッとした表情で愛莉は机の方へ向かう。
そして鞄を手にして俺の方へ向かってきた。
「じゃぁ帰ろう! 」
ぱぁっと笑顔を咲かせて愛莉が言う。
温かくも少し体の力を抜いて俺は愛莉について行った。
「………………え? 」
放課後突然愛莉にそう言われた俺は目を点にした。
トモと遠藤さんの熟年夫婦も帰り他のクラスメイトも少なくなったこの教室で、腰に手を当て真剣な表情で言う愛莉に対して首を傾げる。
「あぁ。ごめんごめん。唐突だったよね」
「ものすごくな」
「冴香にレンが勉強できるって聞いたから教えてもらおうと思って」
笑顔を作りながらそう言う愛莉。理由をきちんと話せていないと思いつつも「トモと同じことをしやがって」と心の中で毒づいた。
看病イベントの次は「二人っきりの勉強イベント」ということか。
いやあの二人が話を合わせて提案したことも考えられる。
トモと遠藤さんからすれば俺が誰かとくっつくのが面白いのかもしれない。
だが被害者は俺だけではなく愛莉もだ。彼女の事を考えると心が痛む。
けれど選択肢として完全に間違っていない所もいやらしい。
あのいやらし夫婦め。
「何で俺に? 」
「冴香に「誰に勉強を教えてもらったらいい? 」て聞いたらレンの名前が真っ先に出たんだ」
やっぱりか、と思いつつ更に聞く。
「けど教え方とかなら同性の冴香でも良いんじゃ? 」
異性と勉強。男の俺からすればはしゃぎたいほどに嬉しいものだが、客観的に見ると同性で勉強した方が集中力は高くなると思う。
むしろ俺なら緊張して勉強どころじゃなくなるし。
「冴香がレンの方が勉強ができるって聞いたから大丈夫かなって」
「……学力と指導力が相関するとは思わないが」
「でも冴香の推しだからね。信用しているよ。けど……」
「けど? 」
「ボクが冴香にレンの学年順位を聞いた時、何故か目を見開いていたけどどうしてなんだろうね? 」
その言葉に、俺はすぐに答えることが出来なかった。
理由は簡単で単純明快だ。
俺がクラスの中で空気なだけ。
学年上位を取っているのに愛莉ですら知らなかったことに遠藤さんは驚いたのだろう。
この高校は県内有数の進学校だ。
無論俺やトモ、そして遠藤さんのように学力で市外県外から来た人も多い。
それ故学年上位を取ると注目を浴びるし嫉妬の目線も注がれる。
成績が良ければ内申点も多く貰えるし、アルバイトが許可される等の優遇措置を得ることができる。
この学校に置いて勉強は自由を手にする為の手段の一つなのだ。
だから今の俺の様に嫉妬すらされない成績優秀者はおかしい。
影が薄いを通り越しての空気。
愛莉の言葉でまさに俺の存在が空気であることが証明された所だ。
「どうしたの? 悲しそうな顔をして」
「いや俺の存在というものがどんなものか再確認していた」
「??? 」
「けどよく考えれば最初会った時、愛莉はよく俺の名前を知ってたな」
「何回か話したことあるからね」
「それで覚えられるとは……、すごいな。クラスメイトの名前、全部言えるんじゃないか? 」
「言えるよ? 」
何を当然、と言うような表情でさらっという愛莉。
その記憶力はすごい。
俺も記憶力は高い方だがクラスメイトの名前は殆ど覚えていない。
俺自身が小さなコミュニティで十分と思っているのもあるが、まずもって周りのテンションに合わせるのが難しいから積極的に関わり合おうとしていないからだ。
この高校は俺やトモ、遠藤さんがいた中学よりも都会である。
その気風のせいか進学校にもかかわらずテンションが高い。
正直合わせるのに疲れる。
疲れる人間関係を率先して作るよりかは小さなコミュニティでひっそりと勉強をしていた方が良いということで、所謂選択ボッチ。いやあの二人がいるからボッチではないが。
「まぁ勉強の話に戻るが、教えるのはいいけど正直人に勉強を教えるのは始めてだ。成績上昇は約束できない」
「それでもいいよ。ボク一人でやるより全然いいと思うから」
そうか、と答えて立ち上がる。
ある程度話がまとまったのでバックを手に取り替える準備を。
俺が引き受けて安心したのかホッとした表情で愛莉は机の方へ向かう。
そして鞄を手にして俺の方へ向かってきた。
「じゃぁ帰ろう! 」
ぱぁっと笑顔を咲かせて愛莉が言う。
温かくも少し体の力を抜いて俺は愛莉について行った。
43
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。

モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~
くまたに
青春
冷姫と呼ばれる美少女と友達になった。
初めての異性の友達と、新しいことに沢山挑戦してみることに。
そんな中彼女が見せる幸せそうに笑う表情を知っている男子は、恐らくモブ一人。
冷姫とモブによる砂糖のように甘い日々は誰にもバレることなく隠し通すことができるのか!
カクヨム・小説家になろうでも記載しています!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり

俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※続編がスタートしました!(2025.2.8)
※1日1話ずつ公開していく予定です。
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について
塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。
好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。
それはもうモテなかった。
何をどうやってもモテなかった。
呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。
そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて――
モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!?
最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。
これはラブコメじゃない!――と
<追記>
本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる