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第14話 宇治原くん、風邪をひく 2 看病イベントは突然に 3
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何故か話の流れで愛莉の手料理を取り付けた。
思い返せば「どんな流れだ! 」とツッコみたくなる。
だが俺が知らないだけでもしかすると一般女子高校生は男友達に手料理を振る舞うことが流行っているのかもしれない。
「もしかしたら愛莉は俺に気があるのでは? 」と勘違いしそうになるが、よく考えると話すようになって数日。
そんなことあるはずがないと自分を言い聞かせてソファーに戻った愛莉の方を向く。
「そう言えば時間は大丈夫? 」
彼女の奥に見える時計をみつつ彼女に聞いた。
「大丈夫だよ。家、すぐ前だし。それに友達の所に看病に行くから少し遅くなるって言ってる」
「周到なことで」
遅くなること前提で来た愛莉に呆れ溜息をつく。
女の子にしては少し用心が足りないんじゃないか?
まぁそれを口にして警戒されるのも嫌だから言わないが。
「そういえば」
「ん? 」
「レンって何が好きなの? 」
そう聞かれて首を傾げる。
「料理を作るって言ったからね。食べる人が決まっているのならその好みに合わせたいじゃん? 」
「……そういうのは自分が好きなものを練習するものじゃないのか? 」
「もちろん自分の好きな料理の練習はするよ? だけどそれはそれ。これはこれ。目指すは一番! レンに「今まで食べた中で一番美味い! 」と言わせてみせる! 」
立ち上がり拳を握り天を突いた。
「そ、そんなに張り切らなくても」と思いながらもそこまでして練習してくれることに感謝しかない。
だが愛莉よ。そんな言い方をされると本当に勘違いしそうになるのだが。
「あ、因みにカップ麵とかいうオチは無しで」
「わかってるって」
「ならよし! 」
愛莉が急に冷静になり見下ろしながら俺に言う。
それを苦笑いで返しながら少し目線を逸らし考える。
「……チャーハン? 」
「何故疑問形」
「いや基本的に好き嫌いが無いんだ。ラーメンのような麺類は好きだけど多分欲しい答えと違うだろ? 」
「むむむ……。頑張って麺から作るのもありだけど」
「職人でも目指してるのかよ……」
「そう言う訳じゃないけど、さ。もしラーメンを作るのなら麺からこだわりたい! 」
「愛莉の師匠が困るからやめて上げて」
師匠 (恐らく母親)泣かせな事をいう愛莉を止める。
「ラーメンも好きだが、中華系料理は好きだ」
「チャンポンは? 」
「それって日本産じゃなかったっけ? 」
具体的に言うならばラーメンも中華の分類から外れるが、指摘はしない。
彼女がツッコまないということは愛莉の中ではラーメンも中華に分類されていることがわかる。
「なら小籠包とかもだね」
「だから師匠を困らせないで上げてっ! 」
恐ろしい……。少なくとも料理初心者が作ろうと思うものじゃないぞ。
確かに好きだが普通の家庭は作らないと思う。
愛莉はツッコむ俺に「えええ~」という表情をする。
俺の為に料理の練習をしてくれるのは一人の男としてとて涙ものなのだが、超難易度のものを作ろうとして挫折して欲しくない。
チャーハンの難易度は彼女が上げたものよりか優しい。
だがたかがチャーハンと侮ることなかれ。
その美味しさは個人による。
ラーメン店だとチャーハン一つで人気が変わるほどだ。
たかがチャーハン、されどチャーハン。
愛莉が「今まで食べたチャーハンの中で一番美味しい」と言わせることが目標なら、その目標は彼女が思っているよりも遙かに高いだろう。
彼女に負担をかけたくはないが、ここはひとつ頑張ってもらいたい。
「よし。チャーハンだね」
「……難易度高いぞ? 」
「任せてよ! 」
自信満々に愛莉は言う。
それを笑顔で返すと彼女が近づいてきた。
手を伸ばされて首を傾げる。
愛莉が「そろそろ帰ろうかと思うからね」と言う。
それを聞き「見送らないと」と思い、彼女の手を取り立ち上がろうとした。
だが——。
「わっ! 」
力が強すぎたのか彼女が俺に覆いかぶさった。
衝撃が俺の体に響き渡る。
愛莉の小さく可愛い顔がすぐ前にある。
布一枚。
心臓の鼓動が早くなる。
ドキドキしながら目をぱちくりすると黒い瞳と見つめ合う。
愛莉のふわりとしたいい香りがマスクをすり抜け漂ってくる。
愛莉の荒い息遣いが聞こえ、彼女の肩に手をやって距離を開けた。
「だ、大丈夫か」
「う、うん」
愛莉も状況がわかったのか顔が真っ赤になっている。
彼女は立ち、服を正す。
だけど慌てる様子もなく、赤い顔のまま俺の方を向いた。
「そろそろ帰るね」
「お、おう」
冷静な彼女に戸惑いながらも腰を上げる。
玄関まで彼女を送って聞く。
「家まで送ろうか? 」
「大丈夫だよ。それよりもレンは早く風邪を完全にやっつけないと」
「俺の風邪よりも愛莉の身の危険の方が心配なのだが」
「大丈夫だって。じゃ、ちゃんと休んでね」
愛莉は靴をトントンと整えて笑顔で気遣う。
「あ、一応言っておくけど明日体調が悪かったら無理して学校に来なくても良いんだからね? 」
「流石に二日連続で休むわけには……」
「もし休んだら……、また看病にきちゃうからね」
音符がつきそうな軽い口調で言い、愛莉は扉の向こうに消えた。
俺は初めて学校ずる休みを考えた。
思い返せば「どんな流れだ! 」とツッコみたくなる。
だが俺が知らないだけでもしかすると一般女子高校生は男友達に手料理を振る舞うことが流行っているのかもしれない。
「もしかしたら愛莉は俺に気があるのでは? 」と勘違いしそうになるが、よく考えると話すようになって数日。
そんなことあるはずがないと自分を言い聞かせてソファーに戻った愛莉の方を向く。
「そう言えば時間は大丈夫? 」
彼女の奥に見える時計をみつつ彼女に聞いた。
「大丈夫だよ。家、すぐ前だし。それに友達の所に看病に行くから少し遅くなるって言ってる」
「周到なことで」
遅くなること前提で来た愛莉に呆れ溜息をつく。
女の子にしては少し用心が足りないんじゃないか?
まぁそれを口にして警戒されるのも嫌だから言わないが。
「そういえば」
「ん? 」
「レンって何が好きなの? 」
そう聞かれて首を傾げる。
「料理を作るって言ったからね。食べる人が決まっているのならその好みに合わせたいじゃん? 」
「……そういうのは自分が好きなものを練習するものじゃないのか? 」
「もちろん自分の好きな料理の練習はするよ? だけどそれはそれ。これはこれ。目指すは一番! レンに「今まで食べた中で一番美味い! 」と言わせてみせる! 」
立ち上がり拳を握り天を突いた。
「そ、そんなに張り切らなくても」と思いながらもそこまでして練習してくれることに感謝しかない。
だが愛莉よ。そんな言い方をされると本当に勘違いしそうになるのだが。
「あ、因みにカップ麵とかいうオチは無しで」
「わかってるって」
「ならよし! 」
愛莉が急に冷静になり見下ろしながら俺に言う。
それを苦笑いで返しながら少し目線を逸らし考える。
「……チャーハン? 」
「何故疑問形」
「いや基本的に好き嫌いが無いんだ。ラーメンのような麺類は好きだけど多分欲しい答えと違うだろ? 」
「むむむ……。頑張って麺から作るのもありだけど」
「職人でも目指してるのかよ……」
「そう言う訳じゃないけど、さ。もしラーメンを作るのなら麺からこだわりたい! 」
「愛莉の師匠が困るからやめて上げて」
師匠 (恐らく母親)泣かせな事をいう愛莉を止める。
「ラーメンも好きだが、中華系料理は好きだ」
「チャンポンは? 」
「それって日本産じゃなかったっけ? 」
具体的に言うならばラーメンも中華の分類から外れるが、指摘はしない。
彼女がツッコまないということは愛莉の中ではラーメンも中華に分類されていることがわかる。
「なら小籠包とかもだね」
「だから師匠を困らせないで上げてっ! 」
恐ろしい……。少なくとも料理初心者が作ろうと思うものじゃないぞ。
確かに好きだが普通の家庭は作らないと思う。
愛莉はツッコむ俺に「えええ~」という表情をする。
俺の為に料理の練習をしてくれるのは一人の男としてとて涙ものなのだが、超難易度のものを作ろうとして挫折して欲しくない。
チャーハンの難易度は彼女が上げたものよりか優しい。
だがたかがチャーハンと侮ることなかれ。
その美味しさは個人による。
ラーメン店だとチャーハン一つで人気が変わるほどだ。
たかがチャーハン、されどチャーハン。
愛莉が「今まで食べたチャーハンの中で一番美味しい」と言わせることが目標なら、その目標は彼女が思っているよりも遙かに高いだろう。
彼女に負担をかけたくはないが、ここはひとつ頑張ってもらいたい。
「よし。チャーハンだね」
「……難易度高いぞ? 」
「任せてよ! 」
自信満々に愛莉は言う。
それを笑顔で返すと彼女が近づいてきた。
手を伸ばされて首を傾げる。
愛莉が「そろそろ帰ろうかと思うからね」と言う。
それを聞き「見送らないと」と思い、彼女の手を取り立ち上がろうとした。
だが——。
「わっ! 」
力が強すぎたのか彼女が俺に覆いかぶさった。
衝撃が俺の体に響き渡る。
愛莉の小さく可愛い顔がすぐ前にある。
布一枚。
心臓の鼓動が早くなる。
ドキドキしながら目をぱちくりすると黒い瞳と見つめ合う。
愛莉のふわりとしたいい香りがマスクをすり抜け漂ってくる。
愛莉の荒い息遣いが聞こえ、彼女の肩に手をやって距離を開けた。
「だ、大丈夫か」
「う、うん」
愛莉も状況がわかったのか顔が真っ赤になっている。
彼女は立ち、服を正す。
だけど慌てる様子もなく、赤い顔のまま俺の方を向いた。
「そろそろ帰るね」
「お、おう」
冷静な彼女に戸惑いながらも腰を上げる。
玄関まで彼女を送って聞く。
「家まで送ろうか? 」
「大丈夫だよ。それよりもレンは早く風邪を完全にやっつけないと」
「俺の風邪よりも愛莉の身の危険の方が心配なのだが」
「大丈夫だって。じゃ、ちゃんと休んでね」
愛莉は靴をトントンと整えて笑顔で気遣う。
「あ、一応言っておくけど明日体調が悪かったら無理して学校に来なくても良いんだからね? 」
「流石に二日連続で休むわけには……」
「もし休んだら……、また看病にきちゃうからね」
音符がつきそうな軽い口調で言い、愛莉は扉の向こうに消えた。
俺は初めて学校ずる休みを考えた。
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