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第5話 再会は突然に
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昨日刺激的なことがあったとはいえ何かが変わるということはない。
重原さんも俺も、そしてクラスメイトも普通に授業を受けて、そして普通に昼食になった。
「レン君。重原さんと何かあった? 」
トモの言葉に「ゴホゴホ」とむせた。
食堂でご飯を食べているといきなりトモが変なことを言う。
「そのようすだと何かあったんだね」
「そんなことはない」
口にしているものを良く噛みゴクリと飲み込みトモに言い返す。
だがトモは疑わしそうな顔をしながらラーメンをすすった。
俺は何も言っていない。
それは重原さんが昨日の事を思い出したくないかもしれないからだ。
俺は彼女に何があったのか知らない。
加えていくら我が親友トモとはいえ、不確定なことを彼に告げるべきではないと判断したのもある。
噂というものには尾ひれがつくものだ。
トモが話さなくても俺達の会話を聞いていた第三者が噂をして、伝言ゲーム式に事実が捻じ曲げられる可能性がある。
重原さん自身が友達にいうのならばいいだろう。
それに関して俺がどうこう言うべきではない。
しかし俺達があらぬ噂の原因になるのは避けるべき。
口を閉じる。
それに尽きる。
「レン君は優しいね」
「……どうやったらそんな話に飛躍する」
「いいや、別に」
「なにそんなににやけているんだ」
「とも君が宇治原さんにそうやって甘い顔をするからあらぬ噂が流れるのですよ」
聞きなれた声に会話を止める。
声する方を見ると女性としては背の高い、色素の薄いグレーに近い黒く長い髪をした女性がいた。
「冴香ちゃん」
トモが手を振り盆を運ぶ彼女を呼ぶ。
そして俺はその隣にいる人物に目を見開いた。
――重原さん。
元気そうだがどこか顔が赤く、調子が悪いのではないかと少し心配になってしまう。
顔が赤いのは昨日の事が影響しているのかもしれない。
そう思っていると俺とトモが空けた席に二人が座る。
盆を机に置いて、遠藤さんは俺の方を見た。
「私の彼氏に彼氏がいるという不誠実な噂が流れているのですが? 」
「誓って俺達はそんな仲じゃない」
「僕の事は遊びだったの?! 」
「実際遊ぶ仲ではあるが、頼むから誤解を招くような言葉を使わないでくれ! 」
大袈裟に泣き崩れるような仕草をするトモに呆れながら、トモの彼女『遠藤冴香』の方を見た。
すると少し恨めしいような表情を向けられたが一瞬で、遠藤さんはすぐに表情を戻した。
恨めしそうな顔をされても困る。
苦情は大袈裟にはしゃぐ君の彼氏に言ってほしい。
「……はぁ。仲が良いのは良い事ですが、貴方も少しは周りの目線を考えてください」
「善処するよ」
「縛っているわけでは無いので、確約して欲しい所なのですが」
「僕は「絶対」というものを信じないからね」
そう言いながらトモは再度ラーメンをすすり始めた。遠藤さんはトモの様子をみて少し溜息をつき、そして頬を緩ませている。
なんだかんだで仲の良い二人に和まさられながらも重原さんを見た。
「……こんにちは」
「こ、こんにちは」
俺の挨拶に少し「はわわわ」となる重原さん。
いや、こんにちはってなんだよ。こんにちはって。
もっとかける言葉があったんじゃないか?!
昨日の事に触れなくても、普通のクラスメイトとして。
「あ、あの……」
「ん? 」
「昨日はごめんね」
その言葉に表情が固まる。
この二人の前で話しても良いのだろうか? という疑問が浮かび上がり、チラリと二人をみたら案の定こちらを見ていた。
そして重原さんに目線を戻すと少し俯き、俺の瞳を覗いてくる。
「感じ悪かったかなって」
それを聞き「あぁ~」と声が漏れ出た。
俺は特に気にしていなかったが、どうやら彼女からすれば彼女の昨日の態度は納得のいくものではなかったようで。
確かに人によれば気を悪くするかもしれない。
「やっぱり重原さんとなにかあった」
トモはそう言い、またずるずるっとラーメンをすすり始める。
トモは俺と重原さんに気を止めることなく食事を続ける。
遠藤さんも何か感じたのか食事に集中。
その様子に安堵しつつ、俺も食事を再開した。
「……何も聞かないの? 」
「言いたくなさそうだし」
「聞いて何かできるのならば聞きますが、そのような様子ではないようですし」
「まぁレン君に春が来たと思っておくよ」
「万年冬だと思っていたのですが、友人として嬉しく思います」
「まて。お前達が思っていることは、的外れだぞ?! 重原さんも何か反論してくれ」
「そうです。レンに失礼です! 」
重原さん。君が言っている事も結構的外れだ。
だがいつの間に呼び捨てになったんだ?
いや一気に距離を詰める。これが陽キャ力というやつかっ!
それからも二人の誤解を解くために話し込んだ。
放課後の授業が始まるまでに何とか誤解を解いたが、茶化される以上に追及されることはなかった。
全く気遣いの上手い親友だよ。
重原さんも俺も、そしてクラスメイトも普通に授業を受けて、そして普通に昼食になった。
「レン君。重原さんと何かあった? 」
トモの言葉に「ゴホゴホ」とむせた。
食堂でご飯を食べているといきなりトモが変なことを言う。
「そのようすだと何かあったんだね」
「そんなことはない」
口にしているものを良く噛みゴクリと飲み込みトモに言い返す。
だがトモは疑わしそうな顔をしながらラーメンをすすった。
俺は何も言っていない。
それは重原さんが昨日の事を思い出したくないかもしれないからだ。
俺は彼女に何があったのか知らない。
加えていくら我が親友トモとはいえ、不確定なことを彼に告げるべきではないと判断したのもある。
噂というものには尾ひれがつくものだ。
トモが話さなくても俺達の会話を聞いていた第三者が噂をして、伝言ゲーム式に事実が捻じ曲げられる可能性がある。
重原さん自身が友達にいうのならばいいだろう。
それに関して俺がどうこう言うべきではない。
しかし俺達があらぬ噂の原因になるのは避けるべき。
口を閉じる。
それに尽きる。
「レン君は優しいね」
「……どうやったらそんな話に飛躍する」
「いいや、別に」
「なにそんなににやけているんだ」
「とも君が宇治原さんにそうやって甘い顔をするからあらぬ噂が流れるのですよ」
聞きなれた声に会話を止める。
声する方を見ると女性としては背の高い、色素の薄いグレーに近い黒く長い髪をした女性がいた。
「冴香ちゃん」
トモが手を振り盆を運ぶ彼女を呼ぶ。
そして俺はその隣にいる人物に目を見開いた。
――重原さん。
元気そうだがどこか顔が赤く、調子が悪いのではないかと少し心配になってしまう。
顔が赤いのは昨日の事が影響しているのかもしれない。
そう思っていると俺とトモが空けた席に二人が座る。
盆を机に置いて、遠藤さんは俺の方を見た。
「私の彼氏に彼氏がいるという不誠実な噂が流れているのですが? 」
「誓って俺達はそんな仲じゃない」
「僕の事は遊びだったの?! 」
「実際遊ぶ仲ではあるが、頼むから誤解を招くような言葉を使わないでくれ! 」
大袈裟に泣き崩れるような仕草をするトモに呆れながら、トモの彼女『遠藤冴香』の方を見た。
すると少し恨めしいような表情を向けられたが一瞬で、遠藤さんはすぐに表情を戻した。
恨めしそうな顔をされても困る。
苦情は大袈裟にはしゃぐ君の彼氏に言ってほしい。
「……はぁ。仲が良いのは良い事ですが、貴方も少しは周りの目線を考えてください」
「善処するよ」
「縛っているわけでは無いので、確約して欲しい所なのですが」
「僕は「絶対」というものを信じないからね」
そう言いながらトモは再度ラーメンをすすり始めた。遠藤さんはトモの様子をみて少し溜息をつき、そして頬を緩ませている。
なんだかんだで仲の良い二人に和まさられながらも重原さんを見た。
「……こんにちは」
「こ、こんにちは」
俺の挨拶に少し「はわわわ」となる重原さん。
いや、こんにちはってなんだよ。こんにちはって。
もっとかける言葉があったんじゃないか?!
昨日の事に触れなくても、普通のクラスメイトとして。
「あ、あの……」
「ん? 」
「昨日はごめんね」
その言葉に表情が固まる。
この二人の前で話しても良いのだろうか? という疑問が浮かび上がり、チラリと二人をみたら案の定こちらを見ていた。
そして重原さんに目線を戻すと少し俯き、俺の瞳を覗いてくる。
「感じ悪かったかなって」
それを聞き「あぁ~」と声が漏れ出た。
俺は特に気にしていなかったが、どうやら彼女からすれば彼女の昨日の態度は納得のいくものではなかったようで。
確かに人によれば気を悪くするかもしれない。
「やっぱり重原さんとなにかあった」
トモはそう言い、またずるずるっとラーメンをすすり始める。
トモは俺と重原さんに気を止めることなく食事を続ける。
遠藤さんも何か感じたのか食事に集中。
その様子に安堵しつつ、俺も食事を再開した。
「……何も聞かないの? 」
「言いたくなさそうだし」
「聞いて何かできるのならば聞きますが、そのような様子ではないようですし」
「まぁレン君に春が来たと思っておくよ」
「万年冬だと思っていたのですが、友人として嬉しく思います」
「まて。お前達が思っていることは、的外れだぞ?! 重原さんも何か反論してくれ」
「そうです。レンに失礼です! 」
重原さん。君が言っている事も結構的外れだ。
だがいつの間に呼び捨てになったんだ?
いや一気に距離を詰める。これが陽キャ力というやつかっ!
それからも二人の誤解を解くために話し込んだ。
放課後の授業が始まるまでに何とか誤解を解いたが、茶化される以上に追及されることはなかった。
全く気遣いの上手い親友だよ。
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