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HIBIKIを追いかけて
HIBIKIを追いかけて
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いつもより少し早く目が覚めてしまった朝。昨日までよりもちょっぴり大人になったような、そうでもないような。
HIBIKIのタケルくんたちとの冒険は終わっちゃったんだなって思った。
もちろんタケルくんのことを追いかけるためにアイドルにはなるつもりだけど……肝心のお父さんの攻略方法は思い浮かばないままだ。
ぼんやりとしたまま朝の支度をして、すこしだけ早く学校へと向かう。
「あれ? 今日は元気がないんですね?」
と通学路で話しかけてきたのは友達のみうちゃんだった。
「アイドルになるって決めたけどさ、わたしの家族は、わたしがアイドルになること反対してるんだよね。どうしたらいいんだろう」
「とりあえず、YouTuberをやってみたらどうですか? 一般人みたいなものですし」
「そうだね。芸能事務所のオーディションとかは絶対に受けさせてくれそうにないし、それしかないか。マイコちゃんのご利益もあるし、こっちの世界でも大成功できるかもしれないからね」
「はい! あたし、顔を隠して歌ってみた動画でアニメソングとか歌っているんですけど……初めて1万再生行きました! バズる気配がしていますっ!」
「すごいじゃん! よーし、落ち込んでなんかいられない、わたしにもやり方教えてよ!」
「あ、いいですよ! 今は個人情報ってすごく大事ですからね、自分がどこに住んでいるかとか、顔出しとか、しない方がいいんです。匿名で、歌を歌ったりするのがいいかなぁ。でも、それだとひみこさんの美しさが隠れちゃうからなぁ」
「やだなぁ、美しさなんて大袈裟だよ」
「ひみこさん、自覚がないんですか!?」
「へっ? なにが?」
「ううっ、もったいない! ひみこさんはアイドルになるために生まれてきたような美しさですよ! 男子から告白とかされないんですか?」
「ああ、ラブレターとかもらったことがあるけど……恥ずかしいから行ったことないんだ、クラスメイトがからかって書いたかもしれないし。でも、おかげで運命のタケルくんに出会えたし! 結果としてはOK! って、もう学校に着いちゃった。やっぱり友達と話してると楽しいね!」
わたしが友達のことを話すと、みうちゃんの表情が暗くなった。
「あ、あたし。昨日はずっと眠れなくて。学校に来るのが怖くて。みんなに無視されたり、いじめられたらどうしようって。あたしだけならいいんです。ひみこさんまでいじめられたら、あたし、絶対に許せませんっ!」
そういえば、そんなことあったなぁ。
「大丈夫だよ。カムイで人気者になったらこっちの世界でも人気者なんだから!」
励ますように、軽くみうちゃんの背中を叩いた。
「おはよー! みんな!」
下駄箱でわたしがみんなに挨拶をすると、男子も女子もおっす、とか、おはよーって返事をしてくれた。
「な、なんだか不思議な感じですね……」
「そう? いつもこんな感じだけど」
みうちゃんは拍子抜けした感じだった。
その時だ、バスケ部の朝練を終えたキャプテンの先輩がみうちゃんにラブレターを持って現れた。
「あのさ、良かったらこれ読んでよ」
「あ、あたしがですか!?」
「すごいイケメンの先輩じゃん」
「……ご、ごめんなさい、そういうのわからなくて。ごめんなさいっ!」
「あらら、みうちゃんも人のこと言えないじゃん。ふふふっ」
みうちゃんは教室に駆け込んだ。1階が1年生の教室になっていて、2階が2年生の、3階が3年生の教室になっている。だから、先輩とは顔を合わせることは滅多にない。
「ヤマタノオロチを退治したから、人気者になっているんだよ」
教室で机に倒れ込んでいるみうちゃんの肩を叩いて言った。
「そうかもしれませんが、慣れませんね。でも、これならYouTubeで人気者になることができるかもしれません! 一緒にYouTube事務所のオーディション受けませんか? HIBIKIのメンバーも所属している大きなオーディションです。普通はこういうところに所属するにはチャンネル登録者数がすごく多いとか、元芸能人だとかでないと入れないんですけれど、これなら合格できる気がしてきました!」
「凄くいいよ! 受けよう! わたしたちもHIBIKIみたいなアイドルになろうね!」
第一部おわり
HIBIKIのタケルくんたちとの冒険は終わっちゃったんだなって思った。
もちろんタケルくんのことを追いかけるためにアイドルにはなるつもりだけど……肝心のお父さんの攻略方法は思い浮かばないままだ。
ぼんやりとしたまま朝の支度をして、すこしだけ早く学校へと向かう。
「あれ? 今日は元気がないんですね?」
と通学路で話しかけてきたのは友達のみうちゃんだった。
「アイドルになるって決めたけどさ、わたしの家族は、わたしがアイドルになること反対してるんだよね。どうしたらいいんだろう」
「とりあえず、YouTuberをやってみたらどうですか? 一般人みたいなものですし」
「そうだね。芸能事務所のオーディションとかは絶対に受けさせてくれそうにないし、それしかないか。マイコちゃんのご利益もあるし、こっちの世界でも大成功できるかもしれないからね」
「はい! あたし、顔を隠して歌ってみた動画でアニメソングとか歌っているんですけど……初めて1万再生行きました! バズる気配がしていますっ!」
「すごいじゃん! よーし、落ち込んでなんかいられない、わたしにもやり方教えてよ!」
「あ、いいですよ! 今は個人情報ってすごく大事ですからね、自分がどこに住んでいるかとか、顔出しとか、しない方がいいんです。匿名で、歌を歌ったりするのがいいかなぁ。でも、それだとひみこさんの美しさが隠れちゃうからなぁ」
「やだなぁ、美しさなんて大袈裟だよ」
「ひみこさん、自覚がないんですか!?」
「へっ? なにが?」
「ううっ、もったいない! ひみこさんはアイドルになるために生まれてきたような美しさですよ! 男子から告白とかされないんですか?」
「ああ、ラブレターとかもらったことがあるけど……恥ずかしいから行ったことないんだ、クラスメイトがからかって書いたかもしれないし。でも、おかげで運命のタケルくんに出会えたし! 結果としてはOK! って、もう学校に着いちゃった。やっぱり友達と話してると楽しいね!」
わたしが友達のことを話すと、みうちゃんの表情が暗くなった。
「あ、あたし。昨日はずっと眠れなくて。学校に来るのが怖くて。みんなに無視されたり、いじめられたらどうしようって。あたしだけならいいんです。ひみこさんまでいじめられたら、あたし、絶対に許せませんっ!」
そういえば、そんなことあったなぁ。
「大丈夫だよ。カムイで人気者になったらこっちの世界でも人気者なんだから!」
励ますように、軽くみうちゃんの背中を叩いた。
「おはよー! みんな!」
下駄箱でわたしがみんなに挨拶をすると、男子も女子もおっす、とか、おはよーって返事をしてくれた。
「な、なんだか不思議な感じですね……」
「そう? いつもこんな感じだけど」
みうちゃんは拍子抜けした感じだった。
その時だ、バスケ部の朝練を終えたキャプテンの先輩がみうちゃんにラブレターを持って現れた。
「あのさ、良かったらこれ読んでよ」
「あ、あたしがですか!?」
「すごいイケメンの先輩じゃん」
「……ご、ごめんなさい、そういうのわからなくて。ごめんなさいっ!」
「あらら、みうちゃんも人のこと言えないじゃん。ふふふっ」
みうちゃんは教室に駆け込んだ。1階が1年生の教室になっていて、2階が2年生の、3階が3年生の教室になっている。だから、先輩とは顔を合わせることは滅多にない。
「ヤマタノオロチを退治したから、人気者になっているんだよ」
教室で机に倒れ込んでいるみうちゃんの肩を叩いて言った。
「そうかもしれませんが、慣れませんね。でも、これならYouTubeで人気者になることができるかもしれません! 一緒にYouTube事務所のオーディション受けませんか? HIBIKIのメンバーも所属している大きなオーディションです。普通はこういうところに所属するにはチャンネル登録者数がすごく多いとか、元芸能人だとかでないと入れないんですけれど、これなら合格できる気がしてきました!」
「凄くいいよ! 受けよう! わたしたちもHIBIKIみたいなアイドルになろうね!」
第一部おわり
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------
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あらすじ
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