11 / 13
物怪の恐怖
もう1匹のオロチ
しおりを挟む
神話のヤマタノオロチとは違う。偽物だ。なら、わたしたちにも勝てるかもしれない。
「やろう! みうちゃん!」
「こ、怖いです。あ、足が震えて動けません……」
わたしたちを冷たい爬虫類の視線で睨みつけると、ヤマタノオロチはみうちゃんに向かって突進していった。それも大きな口を開けて。
「まだ、ぼくとミコトがいるぞ!」
ミコトさんの刀がヘビみたいにぐにゃりと曲がったように見えた。実際は、そう見えるだけだろう。ともだちが鉛筆の端っこをもって上下に揺らすと、鉛筆が曲がって見えるようなやつだ。
タケルくんが剣で巨体を受け止めるも、押しのけられるし、ミコトくんの刀はヤマタノオロチに当たらない。
「みうちゃん、大丈夫?」
「ダメです。に、逃げ出したいです……」
みうちゃんは泣き出してしまった。中学生にもなって泣くなんてとはとても言えない。人を一口で飲み込めるような巨大なヘビなんかに睨まれたら、ビビらないほうがおかしいわよね。
「わかった。とりあえず、わたしが出来るところまでやってみる!」
「がんばるどすえ! みんなが応援してはる!」
応援が力になって、自分の中に流れ込むのがわかる。背中がむずむずするような恥ずかしさと、応援されている嬉しさで胸がいっぱいになる。
「くらえっ!」
わたしの剣のほうがずっと遅いのに、ヤマタノオロチは見切れないのか、一刀両断された。でも、あと7つも首がある。やっかいだ。慣れられる前に仕留められたらいいけど。
「みうちゃん、みんなが戦っているのが見えるかい?」
「は、はい。タケルさん……」
「楽しそうだろ?」
「全然楽しそうじゃないですよ! 命懸けじゃないですか!」
「仕事とはそういうものなんだよ。特にアイドルの仕事はね。一回の仕事で大きなチャンスをつかむかもしれないし、全てを失うかもしれない。ものすごいプレッシャーがこれからも君を襲うだろう。みうちゃんは歌手になりたいんだよね」
「はい……」
「この中で歌えるようになったら、きっとどんな舞台も怖くないよ」
わたしとミコトくんで攻撃をして、タケルくんがみんなの守備に入った。着実にヤマタノオロチを追い詰めていく。
「後一本の首なのに、当たらないっ!」
後少しというところでトドメが刺せない。
「攻撃を見切ったのか?」
「今だ! みうちゃん、トドメを刺すんだ!」
タケルくんの声が響いた。
「だけど……」
やっぱり動けないみうちゃん。
「頼む! このオロチを倒せば俺の母さんの病気が治るかもしれないんだ! 俺の家族を助けてくれ……」
ミコトくんの言葉に、勇気を出して、一歩踏み出したみうちゃん。
「たあああっっっ!!」
真っ白に光り輝くレイピアでヤマタノオロチの最後の首を刺すと煙となって消えていった。みうちゃんはまるで、天使みたいだった。
「やろう! みうちゃん!」
「こ、怖いです。あ、足が震えて動けません……」
わたしたちを冷たい爬虫類の視線で睨みつけると、ヤマタノオロチはみうちゃんに向かって突進していった。それも大きな口を開けて。
「まだ、ぼくとミコトがいるぞ!」
ミコトさんの刀がヘビみたいにぐにゃりと曲がったように見えた。実際は、そう見えるだけだろう。ともだちが鉛筆の端っこをもって上下に揺らすと、鉛筆が曲がって見えるようなやつだ。
タケルくんが剣で巨体を受け止めるも、押しのけられるし、ミコトくんの刀はヤマタノオロチに当たらない。
「みうちゃん、大丈夫?」
「ダメです。に、逃げ出したいです……」
みうちゃんは泣き出してしまった。中学生にもなって泣くなんてとはとても言えない。人を一口で飲み込めるような巨大なヘビなんかに睨まれたら、ビビらないほうがおかしいわよね。
「わかった。とりあえず、わたしが出来るところまでやってみる!」
「がんばるどすえ! みんなが応援してはる!」
応援が力になって、自分の中に流れ込むのがわかる。背中がむずむずするような恥ずかしさと、応援されている嬉しさで胸がいっぱいになる。
「くらえっ!」
わたしの剣のほうがずっと遅いのに、ヤマタノオロチは見切れないのか、一刀両断された。でも、あと7つも首がある。やっかいだ。慣れられる前に仕留められたらいいけど。
「みうちゃん、みんなが戦っているのが見えるかい?」
「は、はい。タケルさん……」
「楽しそうだろ?」
「全然楽しそうじゃないですよ! 命懸けじゃないですか!」
「仕事とはそういうものなんだよ。特にアイドルの仕事はね。一回の仕事で大きなチャンスをつかむかもしれないし、全てを失うかもしれない。ものすごいプレッシャーがこれからも君を襲うだろう。みうちゃんは歌手になりたいんだよね」
「はい……」
「この中で歌えるようになったら、きっとどんな舞台も怖くないよ」
わたしとミコトくんで攻撃をして、タケルくんがみんなの守備に入った。着実にヤマタノオロチを追い詰めていく。
「後一本の首なのに、当たらないっ!」
後少しというところでトドメが刺せない。
「攻撃を見切ったのか?」
「今だ! みうちゃん、トドメを刺すんだ!」
タケルくんの声が響いた。
「だけど……」
やっぱり動けないみうちゃん。
「頼む! このオロチを倒せば俺の母さんの病気が治るかもしれないんだ! 俺の家族を助けてくれ……」
ミコトくんの言葉に、勇気を出して、一歩踏み出したみうちゃん。
「たあああっっっ!!」
真っ白に光り輝くレイピアでヤマタノオロチの最後の首を刺すと煙となって消えていった。みうちゃんはまるで、天使みたいだった。
1
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

こちら御神楽学園心霊部!
緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。
灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。
それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。
。
部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。
前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。
通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。
どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。
封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。
決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。
事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。
ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。
都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。
延々と名前を問う不気味な声【名前】。
10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。
スコウキャッタ・ターミナル
nono
児童書・童話
「みんなと違う」妹がチームの優勝杯に吐いた日、ついにそのテディベアをエレンは捨てる。すると妹は猫に変身し、謎の二人組に追われることにーー 空飛ぶトラムで不思議な世界にやってきたエレンは、弱虫王子とワガママ王女を仲間に加え、妹を人間に戻そうとするが・・・
飛べ、ミラクル!
矢野 零時
児童書・童話
おもちゃのロボット、ミラクルは、本当のロボットになることを夢みていたのです。お兄ちゃんはそんなことを知らずに、他のロボットに目をうつし、ないがしろにし始めていました。そんなミラクルをカナは助け出そうとしましたが、遠足につれていき、山の中に落としてしまいました。それでも、ミラクルは……。
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
鎌倉西小学校ミステリー倶楽部
澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】
https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230
【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】
市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。
学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。
案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。
……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。
※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。
※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)
宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~
橘花やよい
児童書・童話
宝石店の娘・ルリは、赤い瞳の少年が持っていた赤い宝石を、間違えてお客様に売ってしまった。
しかも、その少年は吸血鬼。石がないと人を襲う「吸血衝動」を抑えられないらしく、「石を返せ」と迫られる。お仕事史上、最大の大ピンチ!
だけどレオは、なにかを隠しているようで……?
そのうえ、宝石が盗まれたり、襲われたりと、騒動に巻き込まれていく。
魔法ファンタジー×ときめき×お仕事小説!
「第1回きずな児童書大賞」特別賞をいただきました。
放課後モンスタークラブ
まめつぶいちご
児童書・童話
タイトル変更しました!20230704
------
カクヨムの児童向け異世界転移ファンタジー応募企画用に書いた話です。
・12000文字以内
・長編に出来そうな種を持った短編
・わくわくする展開
というコンセプトでした。
こちらにも置いておきます。
評判が良ければ長編として続き書きたいです。
長編時のプロットはカクヨムのあらすじに書いてあります
---------
あらすじ
---------
「えええ?! 私! 兎の獣人になってるぅー!?」
ある日、柚乃は旧図書室へ消えていく先生の後を追って……気が付いたら異世界へ転移していた。
見たこともない光景に圧倒される柚乃。
しかし、よく見ると自分が兎の獣人になっていることに気付く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる