星の輝く異世界アイドル配信記

緑知由

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そして大炎上!?

そして大炎上!?

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 わたしが自信満々にカメラに向かって決めポーズを作っていると、紫頭の男の子がカメラに割って入ってきた。

「おまえなーいい加減にしろよ! 大人気アイドルHIBIKIの配信ライブに映り込んだだけでなくアイドルになるとか発言しやがって! 精霊とも契約してないくせに!」

「えー? 精霊っていうのと契約しないといけないの?」

「当たり前だろ! 生身の体で物怪に勝てるか!? 新人アイドルがまずやることと言ったら精霊と契約することだ! いや、図々しいお前なら勝てるかもしれねーけど」

「ひどいなー精霊と契約するくらい楽勝ですよ! クマちゃん! わたしと契約してよ!」

「ぼくはS級精霊で大人気アイドルHIBIKIの精霊だわらよ。これ以上掛け持ちするつもりはないわら。新人アイドルがまず最初にすることといったら……精霊オーディションだわらね!」

 精霊オーディション? 元の世界で言う、芸能事務所と契約とか、オーディションのことかな? よーし! 絶対にオーディションに合格して可愛い精霊と契約してHIBIKIのタケルくんの彼女になるんだから!

「それだけじゃねー、今の騒動でお前を応援する声もあるけどアンチ、いわゆるお前の敵も増えちまった。元の世界に戻ったらどうなるか……」

「そういえばここの世界での活躍が元の世界でも芸能活動に影響があると言っていたよね。もしかして、元の世界のオーディションで不利になっちゃうってこと!?」

「それもなくはないけどよ、俺が心配しているのは……その……」

「ふふっ、ヒカルが心配しているのはひみこちゃんが学校でいじめられないか心配しているんだよ。この世界、カムイでの出来事が地球の人たちの心に影響しているってことは、ひみこちゃんのことを生意気とか、ムカつくって気持ちが、ひみこちゃんに意地悪したくなるってことだからね」

 ああ、そういうことか。

「大丈夫だよ! こう見えてわたしはクラスの人気者なんだから!」

「お前、ぜってーカムイの影響の恐ろしさをわかってねーだろ。そして、アイドルや配信者が命懸けで化け物と戦う理由もな」

「とりあえず、今日のところは元の世界に帰ろう。ひみこちゃんの家族が心配しているかもしれないし」

 なんだ、良かった。異世界転移ものの小説やアニメを見たことがあるけれど、元の世界に帰って来られなくなるものも少なくなかったからね。

 祠はそのままこちらの世界にもあって、タケルくんが何か手の指で不思議な形を作ると、黒い穴が現れた。子どもの頃、宇宙の図鑑で見たブラックホールとか言うのに似ている。

「ほら、帰るぞ」

 ぶっきらぼうだったヒカルくんがわたしの手を引いて穴の中へ一緒に飛び込んだ。一度通ったとはいえ、やっぱりちょっぴり怖くてどきどきする。

「もうカメラは切ってあるから安心しろ」

「うん! ありがとう! えーっと、ヒカルくんだっけ」

「そうだ」

 元の世界に帰ってきたら、まだ夕方だった。向こうの世界とは時間の流れ方が違うのかもしれない。

「今日はHIBIKIのメンバーに会えて、とっても幸せでした! わたしも必ずアイドルになりますからね!」

「なら、明日の夕方にまたこの祠の前で待ち合わせだ」

 ヒカルくんがツンツンとしながら答える。

「そうだね、ひみこちゃんのことが心配だし、なるべく早く精霊と契約してみんなからの好感度をあげた方がいい。ぼくたちも手伝うから、きっと精霊と契約できるよ」

 うわータケルくん、イケメンなだけじゃなくて超やさしい。こんな普通の女の子一人にもすごく親切にしてくれるなんて。
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