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大宣言!!
アイドル=戦士!?
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視界がくらくらする。ゆっくりと起き上がると、わたしは林の中にいた。あれ、神社のどこかかしら? あのタケルくんのそっくりさんは!?
そんなことを考えていると林の中から黄色と黒の縞模様をしたトラみたいな生き物が現れた。顔は猿みたいで、図鑑などで見たトラとはずいぶんと姿が違っている。
「ばかやろう! こんなところでぼーっとしてんじゃねぇ! お前もアイドルなんだろ?」
紫色に髪を染め、目鼻立ちの整った少年が片手に剣を持って化け物に向かっていく。その周りをふわふわと飛んでいる羽の生えたクマみたいな生き物がスマホで様子を撮影していた。
「今、人気沸騰中の話題のアイドル! ヒカルくんが少女を守っているわらよー! さぁ、みんなで応援してわら! みんなの応援がヒカルくんの力になるわらよ!」
クマがそんなことをしゃべるとヒカルという少年の剣が輝き出した。一体どういうこと? なんなの? この世界は。知っているようで、なにかズレている。アイドルが化け物と戦ったりするのはテレビの中だけだし、こんなに喋るクマもみたことがない。ロボット……でもなさそうだ。ぬいぐるみみたいな不思議な生き物。
「ぬおぉぉぉっ! くらえっ! 剣技、睦月」
ヒカルという少年が剣を振り下ろすと、化け物は真っ二つになった。わたしはぽかんと口を開けている。恐怖とか驚きとかいろんな感情がごちゃまぜで、自分でもよくわかっていない。魚を包丁で料理したことはあるけれど、こんなに大きな動物を真っ二つにするというのは、思っているよりもずっと怖いものだった。それが化け物だとしても。せめてもの救いは化け物がドライアイスみたいに煙になって消えてしまったことだろうか。
「うううっ、気分が悪いぃぃっ」
「何言ってんだ。やらなきゃ殺されるのはこっちだぞ。おまえ、ガキみたいなやつだな」
「なによっ! わたしはあんな化け物が現れるところも戦うところも初めて見たんだから! それにね、命って大切なんだよ!」
「あのなー芸能人なら子どもでも女の子でも戦ってるやつはいっぱいいるぞ? なんせ、この世界は化け物だらけだからな。それにあいつらは生き物じゃない、悪夢みたいなもんって言ったらいいのかな」
「むーっ!」
化け物だらけってどういうこと? わたしが新聞とかニュースを見ないから知らないだけで日本って化け物だらけだったのかな?
「そんなこと言うなよ、彼女は巻き込まれただけなんだから」
赤い剣を持った少年が林の中から現れた。知っている顔だ!
「タケルくん? HIBIKIのタケルくんなの? なんで人気アイドルがこんなところで剣を持ってうろうろしているの?」
「あのなー、俺もHIBIKIのメンバーなんだけど……」
そんなことを呟く紫色の髪の少年はわたしの瞳には映らない。わたしの初恋で憧れの人はタケルくんなのだから。HIBIKIのメンバーは推しのタケルくん以外興味がなかった。
「タケルくん怖かったよーっ!」
抱きつこうとするわたしを止めに入った邪魔者も紫頭。こいつはわたしになにか恨みでもあるのだろうか?
「バカ! 撮影してんだぞ! 超人気アイドルに抱きついたらふたりとも大炎上するだろうが!? 何考えてんだこの女は!」
「え? どういうこと? ねぇ、タケルくん、わたしにもわかるように説明してよ」
「わかったよ。あのね、この世界は地球とそっくりだけど少し違う世界なんだ。どちらが本当の世界なのかは僕にもわからない。化け物のいない地球と化け物のいる地球、二つの世界がある。そして、物怪と呼ばれる化け物のいる世界を僕らはカムイと読んでいる」
もうひとつの世界、カムイ?
「僕たちアイドルは精霊を通じてみんなから力を分けてもらって、通常の何倍もの力を発揮することができるんだ」
「精霊って、このクマみたいなやつのこと?」
「そうだわらよ」
クマがにっこりと笑う。こういうところはメルヘンで、少女漫画みたいな世界だ。
「物怪と呼ばれる悪夢を倒すことで、こちらでのアイドル活動はもう一つの地球でも影響がある。カムイで人気アイドルになると地球でも人気アイドルになれる……みたいな感じかな」
なんだか難しくてよくわからなかったけれど、つまり、この世界でばっさばっさと悪夢を倒せば、地球のわたしは人気アイドルになれるってわけね!
「じゃあ、わたし、アイドルになる! 化け物なんかに負けない! 大和ひみこ! アイドルになります!」
わたしはクマの妖精が持ったカメラに向かって宣言をした!
そんなことを考えていると林の中から黄色と黒の縞模様をしたトラみたいな生き物が現れた。顔は猿みたいで、図鑑などで見たトラとはずいぶんと姿が違っている。
「ばかやろう! こんなところでぼーっとしてんじゃねぇ! お前もアイドルなんだろ?」
紫色に髪を染め、目鼻立ちの整った少年が片手に剣を持って化け物に向かっていく。その周りをふわふわと飛んでいる羽の生えたクマみたいな生き物がスマホで様子を撮影していた。
「今、人気沸騰中の話題のアイドル! ヒカルくんが少女を守っているわらよー! さぁ、みんなで応援してわら! みんなの応援がヒカルくんの力になるわらよ!」
クマがそんなことをしゃべるとヒカルという少年の剣が輝き出した。一体どういうこと? なんなの? この世界は。知っているようで、なにかズレている。アイドルが化け物と戦ったりするのはテレビの中だけだし、こんなに喋るクマもみたことがない。ロボット……でもなさそうだ。ぬいぐるみみたいな不思議な生き物。
「ぬおぉぉぉっ! くらえっ! 剣技、睦月」
ヒカルという少年が剣を振り下ろすと、化け物は真っ二つになった。わたしはぽかんと口を開けている。恐怖とか驚きとかいろんな感情がごちゃまぜで、自分でもよくわかっていない。魚を包丁で料理したことはあるけれど、こんなに大きな動物を真っ二つにするというのは、思っているよりもずっと怖いものだった。それが化け物だとしても。せめてもの救いは化け物がドライアイスみたいに煙になって消えてしまったことだろうか。
「うううっ、気分が悪いぃぃっ」
「何言ってんだ。やらなきゃ殺されるのはこっちだぞ。おまえ、ガキみたいなやつだな」
「なによっ! わたしはあんな化け物が現れるところも戦うところも初めて見たんだから! それにね、命って大切なんだよ!」
「あのなー芸能人なら子どもでも女の子でも戦ってるやつはいっぱいいるぞ? なんせ、この世界は化け物だらけだからな。それにあいつらは生き物じゃない、悪夢みたいなもんって言ったらいいのかな」
「むーっ!」
化け物だらけってどういうこと? わたしが新聞とかニュースを見ないから知らないだけで日本って化け物だらけだったのかな?
「そんなこと言うなよ、彼女は巻き込まれただけなんだから」
赤い剣を持った少年が林の中から現れた。知っている顔だ!
「タケルくん? HIBIKIのタケルくんなの? なんで人気アイドルがこんなところで剣を持ってうろうろしているの?」
「あのなー、俺もHIBIKIのメンバーなんだけど……」
そんなことを呟く紫色の髪の少年はわたしの瞳には映らない。わたしの初恋で憧れの人はタケルくんなのだから。HIBIKIのメンバーは推しのタケルくん以外興味がなかった。
「タケルくん怖かったよーっ!」
抱きつこうとするわたしを止めに入った邪魔者も紫頭。こいつはわたしになにか恨みでもあるのだろうか?
「バカ! 撮影してんだぞ! 超人気アイドルに抱きついたらふたりとも大炎上するだろうが!? 何考えてんだこの女は!」
「え? どういうこと? ねぇ、タケルくん、わたしにもわかるように説明してよ」
「わかったよ。あのね、この世界は地球とそっくりだけど少し違う世界なんだ。どちらが本当の世界なのかは僕にもわからない。化け物のいない地球と化け物のいる地球、二つの世界がある。そして、物怪と呼ばれる化け物のいる世界を僕らはカムイと読んでいる」
もうひとつの世界、カムイ?
「僕たちアイドルは精霊を通じてみんなから力を分けてもらって、通常の何倍もの力を発揮することができるんだ」
「精霊って、このクマみたいなやつのこと?」
「そうだわらよ」
クマがにっこりと笑う。こういうところはメルヘンで、少女漫画みたいな世界だ。
「物怪と呼ばれる悪夢を倒すことで、こちらでのアイドル活動はもう一つの地球でも影響がある。カムイで人気アイドルになると地球でも人気アイドルになれる……みたいな感じかな」
なんだか難しくてよくわからなかったけれど、つまり、この世界でばっさばっさと悪夢を倒せば、地球のわたしは人気アイドルになれるってわけね!
「じゃあ、わたし、アイドルになる! 化け物なんかに負けない! 大和ひみこ! アイドルになります!」
わたしはクマの妖精が持ったカメラに向かって宣言をした!
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