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学校をやめようかな

学校をやめようかな(1)

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 休み時間が終わる前に教室へと戻ると、神城さんが愛ちゃんや男子からバカにされていた。
「走るのトロいなぁ。ブタは大変だ」
 わたしはなんというか、こんなクラスメイトに腹が立ってきた。妖怪という化け物と比べたら人間の同級生なんて怖くもなんともないじゃないか。せいぜい嫌がらせや無視される程度だ。
「いい加減にしなさいよ! 無視したり暴言を吐いたり! 昨日まで神城さんにペコペコしていたくせに! プライドとか友達を大切に想う気持ちとかないのっ!」
 自分としてはすごく真っ当なことを言っているつもり。たぶん教科書通りの良い子の答えなのかもしれない。わたしは教科書通りの良い子になるつもりはないけれど、弱っている友達をバカにしたりいじめたりするような人間にもなりたくない。
「バカじゃねーの。いまどきおっさんの教師ですらそんなこと考えてねーよ」
「なに、羽瀬川さんキモいんだけど」
「お前みたいなクラスの底辺に言われたくねーよ」
「羽瀬川に守られるなんて神城もここまで落ちたか、かわいそー」
 なんなのよ。わたしが間違っているの? 全然わからないよ。
「こら、君たち、静かにしなさい。これから授業だよ」
 泣いている神城さんを無視して先生は授業を始める。きっとこんな学校が全てではないのだろう。こんな先生が全てではないのだろう。だけれど、わたしがいる世界はそんなに生ぬるいものじゃない。
「先生、この学校にはいじめがあります……」
 わたしが手を上げてそう告げると、先生はため息を吐いた。
「この学校にそんなものはありません。みんな仲良くじゃれあっているだけです。現に暴力事件は起きていないでしょう」
「先生っ! わたし羽瀬川さんから無視されているとか言われたんですけど、これっていじめじゃないですか? かまってあげられるわけないじゃないですか。わたしは私立の中学に行くために習い事で忙しいのに」
「うわ、ひでー羽瀬川いじめんなよ」
「愛ちゃんは偏差値70もあるし、海上中学にいくために毎日忙しいもんねーあんな成績の悪いバカと違って」
「いやいや、そんなことないよ。いそがしくて遊べないのはマジ。でも、そんなに遊んでほしいなら、みんなでこんど遊んであげようか……」
 愛ちゃんは勝ち誇ったかのようにニヤニヤと笑っている。
「素晴らしい、負の妖気に満ちているな」
 ぼそりと剣士くんがつぶやいた。
「ピクシー、やっちゃいなさい」
 わたしが命令をすると、えへへ、と笑いながらピクシーは頷いた。
「この人たちは心の中で思っていることと、口に出していることがまるで違って面白いわね。わたしの力を貸してあげるわ」
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