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不登校の兄

不登校の兄(4)

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「わ、わたしをどうしようっていうの? わたしはごく普通の女の子だよ!?」
「いや、君からは負の妖気を感じる。妖怪は人間の妖気をエネルギーに変えて力を増すんだ。良かったら力を貸してくれないか?」
 負の妖気って、わたしがいじめられているからでていたのかな? よくわからないけれど、妖怪と関わると良くないことが起きる気がする。
「あちきは人間の正の妖気を食べるでありんす」
「正の妖気? それってなに? 元気とかそういうの?」
「いえ、脂肪でありんす。あちきがそばにいれば、女の子はダイエットしなくて良いんでありんす」
 すごい! 雪姫ちゃんとは友達になりたいかも。好きなだけ好物のポテトチップスやドーナッツが食べられる。
「剣士くんはともかく、雪姫ちゃんとなら友達になっても良いよ」
「ひどいな、僕の方が雪姫よりだいぶ優しいつもりなんだけれど。まあ、よかった。仲間になってくれるのは嬉しいよ。ところで、君の名前は?」
「ああ、そうか。転校してきたばかりだから知らないよね。わたしの名前は羽瀬川いおり」
「いおりはん、ではお家におじゃましてもいいでありんすか?」
「な、まさかわたしの家をお城にするつもり?」
「ははは、負の妖気に満ちていたらそれもいいかもね」
 うう、案内したくない。でも、案内しないとここから返してもらえないかもしれない。
「わかった、少しだけだからね。江戸城みたいに立派じゃないけれど来ていいよ」
 剣士くんが再び指を鳴らすと体育館の扉が開いた。がいこつたちはいつの間にかどこかに消えていて、体育館にはわたしと剣士くんと雪姫ちゃんだけが残っていた。
「ようやく開いた! おまえら、この中で何をしていたんだよ!」
 男子がさわいでいる。どうやら中での話は聞こえなかったようだ。
「剣士くん、いいこと教えてあげようか。それはね、5年1組のルール。一番可愛いわたしがルールをつくるものだということ。最悪の学生生活を送りたくなかったら、わたしの仲間になりなさい」
 神城さんがふんと鼻を鳴らして、わたしたちを見下すように言い放った。
「あちきはこの手の女の扱いには慣れていやんす」
 何かを言いたそうにしている剣士くんの前に雪姫ちゃんが出た。
「誰よあんた? あんたも転校生?」
「こぶとりじいさんの話をしっているでありんすか?」
 こぶとりじいさんとは良いおじさんはこぶをとってもらえて、わるいおじさんはこぶをさらにくっつけられてしまう昔話だ。
「はぁ? そんなの知らないんだけど。あんた陰キャ? 変な話し方」
 すっと、雪姫ちゃんが神城さんに手をかざすと、わたしの体がみるみるやせていって、一方神城さんの体は風船みたいに膨らんでいった。
 脂肪だ。相手に分け与えることもできるのか。雪姫ちゃんは怒らせたら一番怖いかも。
「きゃ! な、なにこれ!?」
「お、おい、神城さんがめちゃくちゃデブになってるぞ!?」
 混乱するクラスメイトを横目に、雪姫ちゃんは冷静なものだ。
「さ、いおりちゃん、行きしんしょう」
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