21 / 53
龍の相方
1
しおりを挟む
昊は気楽に遊びに行ってしまったのだが。
こちらは深刻そうな鬼の兄さんがいらっしゃっている。
2週間前に無事、娘が産まれた阿呂だ。
藍はその困った顔を見つめる。
惜しいタイミングですれ違った。
彼は早く家に帰ってあげたいのでそわそわしている。
人間の姿で女の子が生まれた。
昊からはそう聞いている。
「角、生えてなかったんですね」
のっけにそんな感想を述べる。
阿呂のスマホにはつるつる頭の赤ちゃんが写っていた。
「最近まではおとなしかったんですよ。
よく眠るし、何にも動じないで静かにしてたのに」
鬼パパさんは嘆息する。
「名前が決まったとたん、目覚めたように主張するようになりまして」
明日見ちゃんって言うらしい。
「2~3日で妻が明らかに弱ってます。
明日見が泣くとどうも瘴気が出るようなんです」
つまり、阿呂の用事は緊急でうちの龍を貸して欲しい。
昊のそばでは瘴気は跳ね返る。
家の玄関に昊を配置しておけば妻に影響はない。
「それって昊が張り付くしかないんですか?
奥さん、嫌だと思いますけど」
なんでよく知らない男の子が家の中にいるのか。
きっとストレスになる。
力になりたいのはやまやまなのだが。
雷が落ちてきたような音がした。
ぶつかる前に消えた感じで、昊が戻ったと分かる。
藍は阿呂を待たせて玄関を開けた。
「昊、おかえり」
阿呂のことを話そうとする。
しかし、玄関先に立つ男の子を見て口を閉じた。
なぜ龍がタヌキを持ってる?
2種類の生き物を交互に見る。
「返してきなさい」
「むりー」
お母さんと子どものような会話を交わした。
「飲食店は動物ダメなんだよ」
「ウソだ。俺はどうなる」
「あんたは動物カテゴリに入ってない」
「最初蛇だって思ってたろ」
「だからその日は店閉めた」
「遊んでたら俺に懐いちゃったんだ。
追い返したらかわいそうだ 」
「タヌキでしょ、それ。
害獣だよ。勝手に飼っちゃいけないの」
「違う。これは雷獣だ。
飼っちゃいけないものの中にあるか?」
「雷獣……?」
タヌキだ。
でなければタヌキ顔のポメラニアン。
「店長」
阿呂が待っていられなくて声をかけてきた。
「その獣ごとお借りしていいですか」
考えるの面倒くさい。
「どうぞ」
藍が許可を出した。
阿呂が昊を引っ張って去っていく。
「雷獣」
藍は唸りながら2階へ上がった。
こちらは深刻そうな鬼の兄さんがいらっしゃっている。
2週間前に無事、娘が産まれた阿呂だ。
藍はその困った顔を見つめる。
惜しいタイミングですれ違った。
彼は早く家に帰ってあげたいのでそわそわしている。
人間の姿で女の子が生まれた。
昊からはそう聞いている。
「角、生えてなかったんですね」
のっけにそんな感想を述べる。
阿呂のスマホにはつるつる頭の赤ちゃんが写っていた。
「最近まではおとなしかったんですよ。
よく眠るし、何にも動じないで静かにしてたのに」
鬼パパさんは嘆息する。
「名前が決まったとたん、目覚めたように主張するようになりまして」
明日見ちゃんって言うらしい。
「2~3日で妻が明らかに弱ってます。
明日見が泣くとどうも瘴気が出るようなんです」
つまり、阿呂の用事は緊急でうちの龍を貸して欲しい。
昊のそばでは瘴気は跳ね返る。
家の玄関に昊を配置しておけば妻に影響はない。
「それって昊が張り付くしかないんですか?
奥さん、嫌だと思いますけど」
なんでよく知らない男の子が家の中にいるのか。
きっとストレスになる。
力になりたいのはやまやまなのだが。
雷が落ちてきたような音がした。
ぶつかる前に消えた感じで、昊が戻ったと分かる。
藍は阿呂を待たせて玄関を開けた。
「昊、おかえり」
阿呂のことを話そうとする。
しかし、玄関先に立つ男の子を見て口を閉じた。
なぜ龍がタヌキを持ってる?
2種類の生き物を交互に見る。
「返してきなさい」
「むりー」
お母さんと子どものような会話を交わした。
「飲食店は動物ダメなんだよ」
「ウソだ。俺はどうなる」
「あんたは動物カテゴリに入ってない」
「最初蛇だって思ってたろ」
「だからその日は店閉めた」
「遊んでたら俺に懐いちゃったんだ。
追い返したらかわいそうだ 」
「タヌキでしょ、それ。
害獣だよ。勝手に飼っちゃいけないの」
「違う。これは雷獣だ。
飼っちゃいけないものの中にあるか?」
「雷獣……?」
タヌキだ。
でなければタヌキ顔のポメラニアン。
「店長」
阿呂が待っていられなくて声をかけてきた。
「その獣ごとお借りしていいですか」
考えるの面倒くさい。
「どうぞ」
藍が許可を出した。
阿呂が昊を引っ張って去っていく。
「雷獣」
藍は唸りながら2階へ上がった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる