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いま必要なもの
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朝に目が覚めたら昊はいなかった。
夢だったかな。
すごい現実っぽい昊が一緒に眠る夢。
質問したりなくて夢に出てきたんだと思う。
藍は顔を洗ってから昊に電話してみた。
部屋の中から音がしたので、つまみ上げる。
電池が切れそう。
充電してあげた。
異変に気づいたのは昊の部屋のベルを鳴らした時だった。
出てこない。
眠っている?
昊は曲がりなりにも野生動物だ。
そこまで警戒心を捨て去るとは思えない。
おでかけ中なのだ。
どこへ。
まさか。
あの姿で行ったんじゃないだろうな。
不安でいっぱいになった。
慌てて部屋に戻るとカーテンを開ける。
窓の鍵が開いている。
空に未確認生物がいないことを確認してひとまずほっとした。
草地を這う巨大な蛇がいないことも確認した。
人間らしく朝ごはんか?
そう思っていたら、窓の外を歩く大きなヤモリと目が合った。
お互いに卒倒しそうになってる。
昊は雷のように地面に着地すると人の姿になって館内へ入った。
程なく部屋のベルが鳴る。
藍は素早く開けて昊を中に入れた。
「何してたの」
「散歩」
「どこを」
「木……、の間」
うそだ。
木の上だろう。散歩していたのは。
「正直に」
怖い顔をして確かめると、昊は「ごめんなさい」と言った。
藍には言っておいたはずだけれど。
怖いからそんなこと言えない。
「飛んできた」
でも、と付け加える。
「暗いうちに出た。
ライブカメラの時間も確かめた。
朝9時からだったから、俺は映ってない」
時間はおよそ7時だった。
意外な知能犯。
「壁を歩いてたのはなぜ」
「鍵を持っていないからだ。
窓から入ろうと思って」
「……」
できるって言ってたじゃないか。
「いつ? いつキーとじこみ発生した」
藍の目が据わっている。
「昨夜、アイスを食べた時には持ってなかった」
その時に言ってくれ。
「夜は外に行こうと思ってたから、気にしてなかった」
ここであまり考えてはいけない。
藍はその場にステイを命じるとフロントに連絡する。
すぐに人が来てくれて開けてくれた。
現代の暮らしは初めての生き物だ。
あまり怖い態度をとってはいけない。
藍は精一杯大人ぶって昊のそばに戻った。
「昊の部屋のカードだよ。
絶対持ち歩くんだよ。いいね?」
「はい」
藍の気迫が怖い。
しゅんとして昊は頷く。
その顔があまりに幼かった。
藍は自分の心の方が狭いんじゃないかと思ってしまう。
そこまでのことじゃない気がしてきた。
「キー忘れはよくあることだよ。
そんな顔しなくていいよ」
藍の言葉に昊がぱっと明るい顔を見せる。
「龍の姿で堂々と散歩したのは別ー」
火でも吹きそうな形相に昊は再びべそをかいた。
「人の気配はしなかったんだからー……」
素直な顔をされて、なんだか結局可哀想な気がしてくる。
藍は昊の手をとった。
「わかったよ。
じゃあ、朝ごはん食べに行こうか」
「うん」
昊がまたぱっと笑う。
忙しい生き物を連れて、藍はエレベーターを待った。
紅葉を見に一日出かけた。
大半は、道路から山の中へ飛び出した龍を待っていた。
散策路は一緒に歩いた。
藍はこまめにライブカメラの位置を確認する。
逃亡者みたいだ。
「龍は自然から良い気をもらって蓄える。
だから山の中に行きたい」
龍の姿で。
「昨夜はどこまで飛んだの」
展望台で言い合う。
「すぐ力が出なくなるから、そんなに遠くじゃない。
だがけっこう飛べた。
ひと息で小さな山くらいなら飛んで渡れる」
手を広げて説明してくれた。
その「ひと息」が腕の最大レンジ。
「あんた奥羽山脈の端から端に行くつもり?」
「行けたらいいな」
「いいのか」
昊は建物の陰に走っていった。
そこから人の視線を避けて龍の姿に変じる。
木の枝を掴んで飛んでいるようだ。
水面を跳ねる魚のように大きな蛇が森の海から出たり入ったり。
「見えてるな。思いっきり」
藍はさっと青くなって辺りを窺う。
平日、日暮れどきの山に人気はない。
いたとしても帰るために車を目指している人だ。
昊の行った方を見やる。
山は昊の
「ドッグラン」
そうだ。
そう考えたらおおらかでいられる気がした。
あんなに体力のある生き物である。
思い切り飛び回れる日があったっていい。
ややあって、杉の葉っぱをたくさんつけた昊が戻ってきた。
人間の姿に戻ってみると、すっきりしたような顔をしている。
戻る道すがら、出会った動物のことを教えてくれた。
鹿や山鳥をみたそうだ。
熊が多いな、と話す。
熊の近くにおばあさんがいた。
多分迷子だ。
危ないので鉢合わせしないようにした。
杉の木に龍の爪痕を残した。
熊はきっと近づかない。
おばあさんには姿を見られた。
なぜか「龍神」と言われた。
だからきっと大丈夫。
「……」
最後のが気にかかるが?
「蛟龍だってバレなかった」
それが、大丈夫の理由。
カードキーをマスターした昊は、無事にひとり部屋を楽しんだ。
朝、あと1日いたいと言った。
週末になるときっと人間が増えるので断念してもらう。
またどっか行こう、と言ったら納得してくれた。
朝早くに山を下る。
「昊が行きたいって言った山、お昼前に着きそうだよ」
ナビを見ながら藍が言った。
北上高地の海側にある山を目指している。
宮城県との県境に近かった。
昊は周りを見ながら黙っている。
山の入り口に休憩スペースがあった。
自販機がいくつも並べられている。
いったん車を停めた。
藍が飲み物を買っている間、昊はふらっと山道へ走っていく。
誰かを見つけたみたいだった。
名前のようなものを呼んでいたが、外国人のような名前。
「昊?」
藍が山を見上げた時にはもう姿がない。
ちょっと登ってみた。
舗装されていない細い道がある。
草が倒れていた。
今しがた人が通ったばかりのように。
「昊! どこ?」
藍はそちらに歩いていきながら呼びかける。
小道に入った途端、なんとも言えない違和感があった。
道の先に人がいる気配がする。
平屋の家が見えた。
古い瓦の家。
木の門構えがしっかりしている。
戸は開いていた。
昊が人の家に勝手に入って行ったんだと思った。
すみません、と声をかけて門をくぐる。
「連れの子がお邪魔しちゃってませんか?」
家の中に声をかける。
小さな足音がした。
夢だったかな。
すごい現実っぽい昊が一緒に眠る夢。
質問したりなくて夢に出てきたんだと思う。
藍は顔を洗ってから昊に電話してみた。
部屋の中から音がしたので、つまみ上げる。
電池が切れそう。
充電してあげた。
異変に気づいたのは昊の部屋のベルを鳴らした時だった。
出てこない。
眠っている?
昊は曲がりなりにも野生動物だ。
そこまで警戒心を捨て去るとは思えない。
おでかけ中なのだ。
どこへ。
まさか。
あの姿で行ったんじゃないだろうな。
不安でいっぱいになった。
慌てて部屋に戻るとカーテンを開ける。
窓の鍵が開いている。
空に未確認生物がいないことを確認してひとまずほっとした。
草地を這う巨大な蛇がいないことも確認した。
人間らしく朝ごはんか?
そう思っていたら、窓の外を歩く大きなヤモリと目が合った。
お互いに卒倒しそうになってる。
昊は雷のように地面に着地すると人の姿になって館内へ入った。
程なく部屋のベルが鳴る。
藍は素早く開けて昊を中に入れた。
「何してたの」
「散歩」
「どこを」
「木……、の間」
うそだ。
木の上だろう。散歩していたのは。
「正直に」
怖い顔をして確かめると、昊は「ごめんなさい」と言った。
藍には言っておいたはずだけれど。
怖いからそんなこと言えない。
「飛んできた」
でも、と付け加える。
「暗いうちに出た。
ライブカメラの時間も確かめた。
朝9時からだったから、俺は映ってない」
時間はおよそ7時だった。
意外な知能犯。
「壁を歩いてたのはなぜ」
「鍵を持っていないからだ。
窓から入ろうと思って」
「……」
できるって言ってたじゃないか。
「いつ? いつキーとじこみ発生した」
藍の目が据わっている。
「昨夜、アイスを食べた時には持ってなかった」
その時に言ってくれ。
「夜は外に行こうと思ってたから、気にしてなかった」
ここであまり考えてはいけない。
藍はその場にステイを命じるとフロントに連絡する。
すぐに人が来てくれて開けてくれた。
現代の暮らしは初めての生き物だ。
あまり怖い態度をとってはいけない。
藍は精一杯大人ぶって昊のそばに戻った。
「昊の部屋のカードだよ。
絶対持ち歩くんだよ。いいね?」
「はい」
藍の気迫が怖い。
しゅんとして昊は頷く。
その顔があまりに幼かった。
藍は自分の心の方が狭いんじゃないかと思ってしまう。
そこまでのことじゃない気がしてきた。
「キー忘れはよくあることだよ。
そんな顔しなくていいよ」
藍の言葉に昊がぱっと明るい顔を見せる。
「龍の姿で堂々と散歩したのは別ー」
火でも吹きそうな形相に昊は再びべそをかいた。
「人の気配はしなかったんだからー……」
素直な顔をされて、なんだか結局可哀想な気がしてくる。
藍は昊の手をとった。
「わかったよ。
じゃあ、朝ごはん食べに行こうか」
「うん」
昊がまたぱっと笑う。
忙しい生き物を連れて、藍はエレベーターを待った。
紅葉を見に一日出かけた。
大半は、道路から山の中へ飛び出した龍を待っていた。
散策路は一緒に歩いた。
藍はこまめにライブカメラの位置を確認する。
逃亡者みたいだ。
「龍は自然から良い気をもらって蓄える。
だから山の中に行きたい」
龍の姿で。
「昨夜はどこまで飛んだの」
展望台で言い合う。
「すぐ力が出なくなるから、そんなに遠くじゃない。
だがけっこう飛べた。
ひと息で小さな山くらいなら飛んで渡れる」
手を広げて説明してくれた。
その「ひと息」が腕の最大レンジ。
「あんた奥羽山脈の端から端に行くつもり?」
「行けたらいいな」
「いいのか」
昊は建物の陰に走っていった。
そこから人の視線を避けて龍の姿に変じる。
木の枝を掴んで飛んでいるようだ。
水面を跳ねる魚のように大きな蛇が森の海から出たり入ったり。
「見えてるな。思いっきり」
藍はさっと青くなって辺りを窺う。
平日、日暮れどきの山に人気はない。
いたとしても帰るために車を目指している人だ。
昊の行った方を見やる。
山は昊の
「ドッグラン」
そうだ。
そう考えたらおおらかでいられる気がした。
あんなに体力のある生き物である。
思い切り飛び回れる日があったっていい。
ややあって、杉の葉っぱをたくさんつけた昊が戻ってきた。
人間の姿に戻ってみると、すっきりしたような顔をしている。
戻る道すがら、出会った動物のことを教えてくれた。
鹿や山鳥をみたそうだ。
熊が多いな、と話す。
熊の近くにおばあさんがいた。
多分迷子だ。
危ないので鉢合わせしないようにした。
杉の木に龍の爪痕を残した。
熊はきっと近づかない。
おばあさんには姿を見られた。
なぜか「龍神」と言われた。
だからきっと大丈夫。
「……」
最後のが気にかかるが?
「蛟龍だってバレなかった」
それが、大丈夫の理由。
カードキーをマスターした昊は、無事にひとり部屋を楽しんだ。
朝、あと1日いたいと言った。
週末になるときっと人間が増えるので断念してもらう。
またどっか行こう、と言ったら納得してくれた。
朝早くに山を下る。
「昊が行きたいって言った山、お昼前に着きそうだよ」
ナビを見ながら藍が言った。
北上高地の海側にある山を目指している。
宮城県との県境に近かった。
昊は周りを見ながら黙っている。
山の入り口に休憩スペースがあった。
自販機がいくつも並べられている。
いったん車を停めた。
藍が飲み物を買っている間、昊はふらっと山道へ走っていく。
誰かを見つけたみたいだった。
名前のようなものを呼んでいたが、外国人のような名前。
「昊?」
藍が山を見上げた時にはもう姿がない。
ちょっと登ってみた。
舗装されていない細い道がある。
草が倒れていた。
今しがた人が通ったばかりのように。
「昊! どこ?」
藍はそちらに歩いていきながら呼びかける。
小道に入った途端、なんとも言えない違和感があった。
道の先に人がいる気配がする。
平屋の家が見えた。
古い瓦の家。
木の門構えがしっかりしている。
戸は開いていた。
昊が人の家に勝手に入って行ったんだと思った。
すみません、と声をかけて門をくぐる。
「連れの子がお邪魔しちゃってませんか?」
家の中に声をかける。
小さな足音がした。
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