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6.悪役令嬢と聖女の秘密
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私を悪役令嬢だと嫌っていた筈のサクラは捨て犬が飼い主を見つけたように縋り付いてきた。
孤独に押し潰される限界だったのだろう。
そんな彼女に自分も転生者だと告げると鼻水を垂らして泣き喚きながら友達になってくれと言われた。
一人にしないでくれと。
溺れる者は藁にも縋るという言葉を私はその時思い浮かべた。
私はそんな彼女を突き放せなかった。
「リリーナがいなかったら私駄目になってたよ!!」
そう言われる度に何かが胸に満ちていくのを感じた。
その後サクラの前世が事故死した女子中学生だと知り、更に記憶が戻って三か月後に入学式があったことを知った。
悪役令嬢に転生した私の人生よりずっとハードだ。
だが元々楽天的な性格の彼女はヒロインという立場を過信し学校生活も恋も満喫できると思っていたらしい。
しかし現実は甘くなかったのだ。
そんなサクラに私はこの世界で生きていく為の術を教えることにした。
ほぼ前世の記憶と価値観だけで生きていた彼女の現代知識は赤ん坊に等しい。
いや日本で暮らしていた時の記憶を持っていることで逆に受け入れるのが難しいようだった。
なのでこの国の男爵令嬢として振舞えるよう教育するのに本当に苦労した。
登校を二時間早めて作った空き時間と放課後、そして私のスケジュールが空いている休日。
それでも怖いもの知らずな性格と平和な国で暮らしていた為の無防備さは中々治らない。
口調も少しでも気が抜けばたちまち日本の女子中学生に戻ってしまう。
私と二人きりの時は前世持ちであることを隠さなくていいせいか余計にその傾向が強かった。
それでも費やした日々は無駄ではなかったと思う。苦労もあったが楽しくもあった。
校内での空き時間はほぼ全て学習に使わせた為、サクラが男子生徒たちに言い寄る暇は無くなった。
これならば更に嫌われ今より評判を落とすこともない。
そして休み時間も熱心に机に向かい学んでいる姿勢に一部の教師や生徒は彼女への印象を良くしたようだ。
だがサクラの悪評はなかなか消えなかった。入学当初からその後の行動のインパクトが強すぎたのだ。
しかし彼女は挫けず、なんと聖女を目指すと言い始めた。そして魔法について私に特訓して欲しいと。
「私、聖女ぐらいの凄い存在にならないとこの世界でまともに生きていけない気がする」と真剣な顔で言われた。
下から上への無礼が死に直結しやすいなら、自分の立場を上げればいいという考えらしかった。
確かに今のままでは卒業後の彼女が人並みに暮らすビジョンが想像できない。
彼女に唯一残されたヒロイン特権である強い光の魔力を活かすのは良いことに思えた。
だから私は彼女の頼みを聞いた。しかし特訓がスパルタ過ぎたかもしれない。
必要以上に目立たず生きてきた私に新たな悪評が生まれた。
私が権力を傘に元平民のサクラを虐めているという噂が立ち始めたのだ。
私の闇魔法による攻撃を光魔法の障壁で耐えきる特訓を見られたせいかもしれない。
「別に気しなくて良くない? 私とリリーナが仲良しだって知ってるのは私たちだけでいいじゃん」
「それも……そうね」
「えへへ、二人だけのヒミツ」
どうせ本当に事言っても誰も信じないだろうし。彼女の言葉に私は同意してその話は終わった。
リアム王子とその恋人の伯爵令嬢はその噂をきいて、サクラを利用しようとしたのかもしれない。
だからといって彼らに同情する気はない。何から何まで自業自得だった。
そういえばリアム王子はゲーム紹介で「王子の地位さえ捨ててもいいと思える情熱的な恋に憧れている」という設定だった。
結局彼は運命から逃れられなかったのかもしれない。私と違って。
孤独に押し潰される限界だったのだろう。
そんな彼女に自分も転生者だと告げると鼻水を垂らして泣き喚きながら友達になってくれと言われた。
一人にしないでくれと。
溺れる者は藁にも縋るという言葉を私はその時思い浮かべた。
私はそんな彼女を突き放せなかった。
「リリーナがいなかったら私駄目になってたよ!!」
そう言われる度に何かが胸に満ちていくのを感じた。
その後サクラの前世が事故死した女子中学生だと知り、更に記憶が戻って三か月後に入学式があったことを知った。
悪役令嬢に転生した私の人生よりずっとハードだ。
だが元々楽天的な性格の彼女はヒロインという立場を過信し学校生活も恋も満喫できると思っていたらしい。
しかし現実は甘くなかったのだ。
そんなサクラに私はこの世界で生きていく為の術を教えることにした。
ほぼ前世の記憶と価値観だけで生きていた彼女の現代知識は赤ん坊に等しい。
いや日本で暮らしていた時の記憶を持っていることで逆に受け入れるのが難しいようだった。
なのでこの国の男爵令嬢として振舞えるよう教育するのに本当に苦労した。
登校を二時間早めて作った空き時間と放課後、そして私のスケジュールが空いている休日。
それでも怖いもの知らずな性格と平和な国で暮らしていた為の無防備さは中々治らない。
口調も少しでも気が抜けばたちまち日本の女子中学生に戻ってしまう。
私と二人きりの時は前世持ちであることを隠さなくていいせいか余計にその傾向が強かった。
それでも費やした日々は無駄ではなかったと思う。苦労もあったが楽しくもあった。
校内での空き時間はほぼ全て学習に使わせた為、サクラが男子生徒たちに言い寄る暇は無くなった。
これならば更に嫌われ今より評判を落とすこともない。
そして休み時間も熱心に机に向かい学んでいる姿勢に一部の教師や生徒は彼女への印象を良くしたようだ。
だがサクラの悪評はなかなか消えなかった。入学当初からその後の行動のインパクトが強すぎたのだ。
しかし彼女は挫けず、なんと聖女を目指すと言い始めた。そして魔法について私に特訓して欲しいと。
「私、聖女ぐらいの凄い存在にならないとこの世界でまともに生きていけない気がする」と真剣な顔で言われた。
下から上への無礼が死に直結しやすいなら、自分の立場を上げればいいという考えらしかった。
確かに今のままでは卒業後の彼女が人並みに暮らすビジョンが想像できない。
彼女に唯一残されたヒロイン特権である強い光の魔力を活かすのは良いことに思えた。
だから私は彼女の頼みを聞いた。しかし特訓がスパルタ過ぎたかもしれない。
必要以上に目立たず生きてきた私に新たな悪評が生まれた。
私が権力を傘に元平民のサクラを虐めているという噂が立ち始めたのだ。
私の闇魔法による攻撃を光魔法の障壁で耐えきる特訓を見られたせいかもしれない。
「別に気しなくて良くない? 私とリリーナが仲良しだって知ってるのは私たちだけでいいじゃん」
「それも……そうね」
「えへへ、二人だけのヒミツ」
どうせ本当に事言っても誰も信じないだろうし。彼女の言葉に私は同意してその話は終わった。
リアム王子とその恋人の伯爵令嬢はその噂をきいて、サクラを利用しようとしたのかもしれない。
だからといって彼らに同情する気はない。何から何まで自業自得だった。
そういえばリアム王子はゲーム紹介で「王子の地位さえ捨ててもいいと思える情熱的な恋に憧れている」という設定だった。
結局彼は運命から逃れられなかったのかもしれない。私と違って。
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