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2.悪役令嬢、悪事の証拠を突き付けられる
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しかし王子にとってそんなことはどうでもいいのだ。私に興味を持ってないのだから。
彼にとって政略婚相手の私はずっと自分の恋の邪魔をする悪女でしかないのだろう。
だが王子は平民上がりの癖に馴れ馴れしいとサクラも嫌っていた筈だ。
私に彼女を退学するまで追い詰めろと言ったことさえある。録音魔法で保管して置けばよかった。
彼だけでなく生徒の大半からサクラは嫌われ者だった。
好意的なのは彼女の容姿を気に入っているらしい一部の男子生徒ぐらいだった。
これだから平民の女はという陰口も数えきれない程聞いたことがある。
その度に平民女性に対する風評被害だと感じたものだった。
この国には奴隷階級こそいないが厳しい身分制度が存在する。
平民であってもそれを知らない筈が無い。
サクラは平民とか貴族とかそういう括りは関係なく変人なだけだ。
実際会話して知ったが彼女はこの国の常識を驚く程知らなかった。
だが彼女は嘘を吐かなかった。宣言通り聖女になる為の試練をクリアしたのだ。
最上級生となった時点で、この国全体を魔物から護る光の障壁を生み出せるまでにサクラの魔力は成長していた。
彼女は卒業した後、この国の守護聖者という立場になる。それは王家と並ぶ地位だ。
だからこうやって悪しき思惑を持つものに存在を利用されるようになったのか。
私は王子を冷めた目で見つめた。
しかしあの衝撃的な出会いから三年後、再度悪役令嬢と謗(そし)られるとは。
しかも自分の婚約者からである。
呆れを通り越してつい笑ってしまった。
「ふふ。わたくしが悪役……ですか?」
「なっ、何がおかしい!」
「殿下は今わたくしが聖女様の命を狙ったと仰いましたね」
「ああ、お前が得意とする闇魔法で殺害を企てただろう」
「これはおかしなことを……わたくしごときの闇魔法で聖女様を傷つけられるとでも?」
彼女の魔法訓練に何年も付き合っていた私だからわかる。
最初こそ私の闇魔法の方が強かったが、今のサクラの光魔法は今や属性関係なくこの国で一番強力だ。
防御障壁だけでない。彼女は高位の攻撃魔法を魔力消費を大して気にせず、ほぼ無詠唱で連発できるのだ。
私の全魔力を後先考えず攻撃に費やしても正面から戦えば全く太刀打ちが出来ない。だからこそサクラは聖女になれたのだ。
問題は王子の誘いに簡単に引っ掛かって囚われてしまう頭の残念さである。
魔力の百分の一でも知力があればと何度思ったことだろう。聖女として真っ当に働けるか不安でしかない。
だが既に彼女専用の神殿の建設は始まっていると聞く。卒業したらとても遠い存在になるのだ。
急に胸が苦しくなって私は溜息を吐いた。
この気持ちはただ隙だらけな彼女の将来を案じているだけだと自分に言い聞かせる。
「だから卑怯な手を使ったのだろう、俺ともう一人の善良な人物が助けなければ聖女は息絶えていた!大罪だ!」
リアム王子がサクラの肩を更に強く抱き寄せた。一応彼は美形の部類に入る男性だ。
しかし面食いな筈の少女は頬を染めるどころか、不快そうに顔を歪めるだけだった。
彼女の為に激怒し私を裁こうとしている第一王子はけれどそれに気づいていないようだ。
「見ろ、彼女の額にお前が呪った証拠がある!」
そう言って王子は自分が抱き寄せた少女の前髪を強く掴み上げた。
乱暴な行動に事態を見守っていた生徒や教師たちの中から小さく抗議の声が上がる。
傍若無人だったサクラのことを好きな人間はこの場には余りいない。
しかし相手が嫌われ者だからといって何をしても許される訳ではないのだ。
何より今の彼女は聖女の称号を持っている。
彼が第一王子でなければ狼藉を理由に既に兵に取り押さえられていただろう。
「まあ、聖女様になんて乱暴なことを……」
「女性はもっと優しく扱って差し上げるべきでは……」
「うるさい!それよりも額の刻印を見ろ!」
そういって罪人を突き出すように王子は項垂れる少女を見物客たちに見せつけた。
サクラの小さな額には確かに黒く輝く百合の形の紋様が浮かんでいる。
それはノワール公爵家の家紋だった。
私以外にも気づいた生徒たちが次々に声を上げる。
彼にとって政略婚相手の私はずっと自分の恋の邪魔をする悪女でしかないのだろう。
だが王子は平民上がりの癖に馴れ馴れしいとサクラも嫌っていた筈だ。
私に彼女を退学するまで追い詰めろと言ったことさえある。録音魔法で保管して置けばよかった。
彼だけでなく生徒の大半からサクラは嫌われ者だった。
好意的なのは彼女の容姿を気に入っているらしい一部の男子生徒ぐらいだった。
これだから平民の女はという陰口も数えきれない程聞いたことがある。
その度に平民女性に対する風評被害だと感じたものだった。
この国には奴隷階級こそいないが厳しい身分制度が存在する。
平民であってもそれを知らない筈が無い。
サクラは平民とか貴族とかそういう括りは関係なく変人なだけだ。
実際会話して知ったが彼女はこの国の常識を驚く程知らなかった。
だが彼女は嘘を吐かなかった。宣言通り聖女になる為の試練をクリアしたのだ。
最上級生となった時点で、この国全体を魔物から護る光の障壁を生み出せるまでにサクラの魔力は成長していた。
彼女は卒業した後、この国の守護聖者という立場になる。それは王家と並ぶ地位だ。
だからこうやって悪しき思惑を持つものに存在を利用されるようになったのか。
私は王子を冷めた目で見つめた。
しかしあの衝撃的な出会いから三年後、再度悪役令嬢と謗(そし)られるとは。
しかも自分の婚約者からである。
呆れを通り越してつい笑ってしまった。
「ふふ。わたくしが悪役……ですか?」
「なっ、何がおかしい!」
「殿下は今わたくしが聖女様の命を狙ったと仰いましたね」
「ああ、お前が得意とする闇魔法で殺害を企てただろう」
「これはおかしなことを……わたくしごときの闇魔法で聖女様を傷つけられるとでも?」
彼女の魔法訓練に何年も付き合っていた私だからわかる。
最初こそ私の闇魔法の方が強かったが、今のサクラの光魔法は今や属性関係なくこの国で一番強力だ。
防御障壁だけでない。彼女は高位の攻撃魔法を魔力消費を大して気にせず、ほぼ無詠唱で連発できるのだ。
私の全魔力を後先考えず攻撃に費やしても正面から戦えば全く太刀打ちが出来ない。だからこそサクラは聖女になれたのだ。
問題は王子の誘いに簡単に引っ掛かって囚われてしまう頭の残念さである。
魔力の百分の一でも知力があればと何度思ったことだろう。聖女として真っ当に働けるか不安でしかない。
だが既に彼女専用の神殿の建設は始まっていると聞く。卒業したらとても遠い存在になるのだ。
急に胸が苦しくなって私は溜息を吐いた。
この気持ちはただ隙だらけな彼女の将来を案じているだけだと自分に言い聞かせる。
「だから卑怯な手を使ったのだろう、俺ともう一人の善良な人物が助けなければ聖女は息絶えていた!大罪だ!」
リアム王子がサクラの肩を更に強く抱き寄せた。一応彼は美形の部類に入る男性だ。
しかし面食いな筈の少女は頬を染めるどころか、不快そうに顔を歪めるだけだった。
彼女の為に激怒し私を裁こうとしている第一王子はけれどそれに気づいていないようだ。
「見ろ、彼女の額にお前が呪った証拠がある!」
そう言って王子は自分が抱き寄せた少女の前髪を強く掴み上げた。
乱暴な行動に事態を見守っていた生徒や教師たちの中から小さく抗議の声が上がる。
傍若無人だったサクラのことを好きな人間はこの場には余りいない。
しかし相手が嫌われ者だからといって何をしても許される訳ではないのだ。
何より今の彼女は聖女の称号を持っている。
彼が第一王子でなければ狼藉を理由に既に兵に取り押さえられていただろう。
「まあ、聖女様になんて乱暴なことを……」
「女性はもっと優しく扱って差し上げるべきでは……」
「うるさい!それよりも額の刻印を見ろ!」
そういって罪人を突き出すように王子は項垂れる少女を見物客たちに見せつけた。
サクラの小さな額には確かに黒く輝く百合の形の紋様が浮かんでいる。
それはノワール公爵家の家紋だった。
私以外にも気づいた生徒たちが次々に声を上げる。
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