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第一章
四十九話
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ミランダさんがこちらを見たのが分かった。
リンナは元より私を凝視していた。
まるで舞台に立った主演女優のように彼女は観客である私に高々と犯行を歌い上げる。
ライルの精神を徐々に弱らせていったこと。
その間に支配下に置いた双子草を使って歩行可能な自分の分身を何体か作成していたこと。
細い根で地中の自分と繋いでおくことで分身たちを自分のように操ることが可能だということ。
その実験に捕らえていた自らの父親を利用したことを得意げに語った。
「分身たちの体は軽イから、家の壁を這い上がることは容易かったわ」
窓、開けっぱなしは不用心よ。そう笑われて自分の部屋に侵入されていたことに気付く。
不快だが強い驚きはない。まるで巨大な害虫のようだと私はリンナを眺めた。
「アンタの部屋にも精神がおかしくなる花粉を撒いたりした。後は色々物色したり、ね」
でもライル君が部屋に入って来た時は焦った。
リンナの盗癖を聞き流していた私の耳に新たな情報が入る。
「彼がアンタの部屋に何をしにきたか知りたいみたいね?アタシは知っているけど……」
勇者様の名誉の為に黙っておくわね。
ニヤニヤと笑うリンナには教えるつもりはないようだった。
「部屋で鉢合ったライル君にアタシはアディーに貸した物を取りに来た説明したわ。アタシとアンタは友達なんだって」
嘘を吐くにも程がある。いや、リンナに盗癖がなければ有り得たことかもしれない。私とリンナの姉は友人なのだから。
だからライルも信じたのか。
彼は長い旅に出ていたから表立って語られないことは知らない可能性があった。
「逆にアタシは彼に聞いた。アディーの部屋に勝手に入っていいのッて。物凄く気まずそうな顔をしていたわね」
盗みがばれた時の自分よりも余程。
リンナは盗むという事に何の罪悪感も抱いていないのはわかり切っている。比較にならないと私は思った。
「可哀想だからアディーには秘密にしてあげると言ッた。代わりにアタシがこの部屋にいたことも内緒にして欲しいと持ち掛けたわ」
「ライル……」
「そうしたら彼はどうしてだと聞いてきた。そちらは友人同士なのだから部屋に入っても問題ないだろって」
だから答えた。リンナは笑う。
アディーはこの部屋に男を連れ込んでいるから、掃除前に他人に入られるのを嫌がるのよ。
ライル君が村の外に出た時に逢引しているみたいね。きっとあなたに気を遣っているのね。
そう言ったら彼、真っ青な顔をして蹲っていたわ。
リンナは愉快そうに言ったが何が楽しいのか私には一切理解できなかった。
リンナは元より私を凝視していた。
まるで舞台に立った主演女優のように彼女は観客である私に高々と犯行を歌い上げる。
ライルの精神を徐々に弱らせていったこと。
その間に支配下に置いた双子草を使って歩行可能な自分の分身を何体か作成していたこと。
細い根で地中の自分と繋いでおくことで分身たちを自分のように操ることが可能だということ。
その実験に捕らえていた自らの父親を利用したことを得意げに語った。
「分身たちの体は軽イから、家の壁を這い上がることは容易かったわ」
窓、開けっぱなしは不用心よ。そう笑われて自分の部屋に侵入されていたことに気付く。
不快だが強い驚きはない。まるで巨大な害虫のようだと私はリンナを眺めた。
「アンタの部屋にも精神がおかしくなる花粉を撒いたりした。後は色々物色したり、ね」
でもライル君が部屋に入って来た時は焦った。
リンナの盗癖を聞き流していた私の耳に新たな情報が入る。
「彼がアンタの部屋に何をしにきたか知りたいみたいね?アタシは知っているけど……」
勇者様の名誉の為に黙っておくわね。
ニヤニヤと笑うリンナには教えるつもりはないようだった。
「部屋で鉢合ったライル君にアタシはアディーに貸した物を取りに来た説明したわ。アタシとアンタは友達なんだって」
嘘を吐くにも程がある。いや、リンナに盗癖がなければ有り得たことかもしれない。私とリンナの姉は友人なのだから。
だからライルも信じたのか。
彼は長い旅に出ていたから表立って語られないことは知らない可能性があった。
「逆にアタシは彼に聞いた。アディーの部屋に勝手に入っていいのッて。物凄く気まずそうな顔をしていたわね」
盗みがばれた時の自分よりも余程。
リンナは盗むという事に何の罪悪感も抱いていないのはわかり切っている。比較にならないと私は思った。
「可哀想だからアディーには秘密にしてあげると言ッた。代わりにアタシがこの部屋にいたことも内緒にして欲しいと持ち掛けたわ」
「ライル……」
「そうしたら彼はどうしてだと聞いてきた。そちらは友人同士なのだから部屋に入っても問題ないだろって」
だから答えた。リンナは笑う。
アディーはこの部屋に男を連れ込んでいるから、掃除前に他人に入られるのを嫌がるのよ。
ライル君が村の外に出た時に逢引しているみたいね。きっとあなたに気を遣っているのね。
そう言ったら彼、真っ青な顔をして蹲っていたわ。
リンナは愉快そうに言ったが何が楽しいのか私には一切理解できなかった。
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