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第一章
四十八話
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やはり、ライルの家の庭に亡霊綿毛を植えたのはリンナだった。
根を使い地下からの盗聴が可能になった彼女は私とライルを監視していたのだ。
そしてライルが庭掃除をしないこと、それに呆れた私も彼の家の草むしりをしなくなったことを知った。
これは植物を操る魔物にとって絶好の好機だったのだろう。
リンナはまずライルの精神を弱らせようとした。その為に亡霊綿毛を植えたのだ。
植えたのはそれだけではないと嫌らしく笑う彼女の性質の悪さに辟易した。
自宅の庭が毒草まみれになっていること、その毒に弱らされていることを無意識に察したのかライルが私の家に居つくようになった。
そのことでリンナは私とライルが特別な関係だと確信した。そしてその関係を壊してやろうと思ったのだと言う。
不在がちなライルの家の留守を狙って精神に作用する花粉を気づかれない程度にばらまくことを繰り返した。
その家の主人であるライルも、たまに掃除に来る私もまんまとその花粉を吸いこんだ。
ライルは魔王討伐後王都から帰還して以来身も心も弱っていた。
リンナの罠はそんな状態のライルを更に不安定にした。
そしてライルと幼馴染であり彼の身の回りの世話をしていた私も巻き込まれた。
いや、リンナはそうなることを理解していて罠を張ったのだ。
ライルとの距離が近づけば近づく程私の心は不満と不安に満ちていった。彼女はそれを狙っていたのだ。
私とライルは近過ぎた。恋人でも夫婦でも、本当は家族でもないのに。そうなる前に距離を詰め過ぎたのだ。
愛の告白を互いにしないまま、ライルは討伐の依頼がない限り私の家でほぼ一日を過ごすようになった。
そのもどかしい時間がとても便利だったとリンナは笑った。
その間にリンナの植物の部分は成長し、魔物としての力が増したと言った。
彼女が仕掛けた亡霊綿毛や他の毒草も着実に私とライルを蝕んでいった。
「そして、じっくりと育てた果実を摘み取ル時がきた」
リンナが舌なめずりをしながら言う。
「アディー、アンタの部屋にいたのは確かにアタシとライル君よ」
それは亡霊綿毛が見せた幻覚ではない。
心臓を汚い手で不躾に握りしめられたような衝撃があった。
根を使い地下からの盗聴が可能になった彼女は私とライルを監視していたのだ。
そしてライルが庭掃除をしないこと、それに呆れた私も彼の家の草むしりをしなくなったことを知った。
これは植物を操る魔物にとって絶好の好機だったのだろう。
リンナはまずライルの精神を弱らせようとした。その為に亡霊綿毛を植えたのだ。
植えたのはそれだけではないと嫌らしく笑う彼女の性質の悪さに辟易した。
自宅の庭が毒草まみれになっていること、その毒に弱らされていることを無意識に察したのかライルが私の家に居つくようになった。
そのことでリンナは私とライルが特別な関係だと確信した。そしてその関係を壊してやろうと思ったのだと言う。
不在がちなライルの家の留守を狙って精神に作用する花粉を気づかれない程度にばらまくことを繰り返した。
その家の主人であるライルも、たまに掃除に来る私もまんまとその花粉を吸いこんだ。
ライルは魔王討伐後王都から帰還して以来身も心も弱っていた。
リンナの罠はそんな状態のライルを更に不安定にした。
そしてライルと幼馴染であり彼の身の回りの世話をしていた私も巻き込まれた。
いや、リンナはそうなることを理解していて罠を張ったのだ。
ライルとの距離が近づけば近づく程私の心は不満と不安に満ちていった。彼女はそれを狙っていたのだ。
私とライルは近過ぎた。恋人でも夫婦でも、本当は家族でもないのに。そうなる前に距離を詰め過ぎたのだ。
愛の告白を互いにしないまま、ライルは討伐の依頼がない限り私の家でほぼ一日を過ごすようになった。
そのもどかしい時間がとても便利だったとリンナは笑った。
その間にリンナの植物の部分は成長し、魔物としての力が増したと言った。
彼女が仕掛けた亡霊綿毛や他の毒草も着実に私とライルを蝕んでいった。
「そして、じっくりと育てた果実を摘み取ル時がきた」
リンナが舌なめずりをしながら言う。
「アディー、アンタの部屋にいたのは確かにアタシとライル君よ」
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心臓を汚い手で不躾に握りしめられたような衝撃があった。
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