37 / 66
第一章
三十六話
しおりを挟む
村人(なかま)の悪口を言うのは良くないことだ。
でも負の感情を抱くのは止められない。
私は今回の件が起こるよりずっと前からリンナを心の奥底で『盗人』だと見下していたのだ。
彼女がレン兄さんやライルの近くにいるのを見るだけで嫌な気持ちになっていたのだ。
奪わないで欲しいと。奪わせはなしいと。
二人とも、私のものではないのに。
口の中の丸薬を噛む。苦くて辛い。その刺激が泥に沈みそうな思考を引き上げてくれる。
多分、私と同じように、いやそれ以上にライルも亡霊綿毛の影響を受けているだろう。
墓場での怯えた子供のような表情を思い出す。
ただ、彼がおかしくなったのは毒草の影響だけではない。きっと。
そのことにもっと早く気づけたなら何かが変わっていたのだろうか。
先程から後悔ばかりしている。それは取り返しがつかないことを知っているからだ。
私の心はもうライルから離れている。情は残っているかもしれない。けれど恋しく思うことはない。
勿体ないような清々したような悔しいような、すっきりしたような不思議な気分だ。
この事件が終わった後、私はもうライルにしがみつくことはない。
面倒を見て尽くしている振りをして愛して欲しいと縋り付くようなことはしないだろう。
亡霊綿毛により互いが変わってしまったことに私もライルも気づかなかった。そのまま関係を悪化させていった。
ほぼ毎日一緒に暮らしていたのに。それが答えなのだ。
私たちは二人きりでいるときっと二人で堕ちていってしまう。
だから、この嫌な事件をきっかけにしてでも、距離を取って変わらなければいけない。
ミランダさんが私を呼ぶ声が聞こえた。
でも負の感情を抱くのは止められない。
私は今回の件が起こるよりずっと前からリンナを心の奥底で『盗人』だと見下していたのだ。
彼女がレン兄さんやライルの近くにいるのを見るだけで嫌な気持ちになっていたのだ。
奪わないで欲しいと。奪わせはなしいと。
二人とも、私のものではないのに。
口の中の丸薬を噛む。苦くて辛い。その刺激が泥に沈みそうな思考を引き上げてくれる。
多分、私と同じように、いやそれ以上にライルも亡霊綿毛の影響を受けているだろう。
墓場での怯えた子供のような表情を思い出す。
ただ、彼がおかしくなったのは毒草の影響だけではない。きっと。
そのことにもっと早く気づけたなら何かが変わっていたのだろうか。
先程から後悔ばかりしている。それは取り返しがつかないことを知っているからだ。
私の心はもうライルから離れている。情は残っているかもしれない。けれど恋しく思うことはない。
勿体ないような清々したような悔しいような、すっきりしたような不思議な気分だ。
この事件が終わった後、私はもうライルにしがみつくことはない。
面倒を見て尽くしている振りをして愛して欲しいと縋り付くようなことはしないだろう。
亡霊綿毛により互いが変わってしまったことに私もライルも気づかなかった。そのまま関係を悪化させていった。
ほぼ毎日一緒に暮らしていたのに。それが答えなのだ。
私たちは二人きりでいるときっと二人で堕ちていってしまう。
だから、この嫌な事件をきっかけにしてでも、距離を取って変わらなければいけない。
ミランダさんが私を呼ぶ声が聞こえた。
11
お気に入りに追加
6,090
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
姉妹差別の末路
京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します!
妹嫌悪。ゆるゆる設定
※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
落ちこぼれ公爵令息の真実
三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。
設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。
投稿している他の作品との関連はありません。
カクヨムにも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
勇者の幼馴染は、いつも選ばれない。
柑橘 橙
恋愛
「家族を迎えに行ってくる」
そういって、連れていかれた母と弟を追いかけた父。
「魔王を倒してくる」
そういって、魔王の一人を倒しに旅立った幼馴染。
――え?私は?
※思い付いて、頭から離れなかったストーリーです。
※※他サイトにも掲載しています。
※※※お読みくださってありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる