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第一章
二十三話※エミリア視点
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『死ニタク、ナカッタ』
『ドウシテ、勇者ナノニ、タスケテクレナカッタノ……?』
『勇者ガイタセイデ、村ガオソワレタンダ』
『『『ライル、オマエノセイデ』』』
墓場の土から現れた死人達が呪いの言葉を次々と吐き出す。
人間と認識できるのは数体だけで後は腕だけが地面から生えているような状態だ。
しかし、その掌には人間の口のようなものがついていてライルへの恨み言を吐き出し続けるのだった。
「や、やめろ、俺のせいじゃない……俺のせいじゃ、ないよ」
死者からの憎しみの言葉が一斉に向けられたことで、ライルのメンタルは再び傷つく。
よくもここまで悪意に満ちた企てが出来るとエミリアはリンナを睨み付けた。
「うんうん、やっぱり本当の家族から呪われるのが一番のダメージみたいだね!」
苦労した甲斐があった、そうしみじみと頷く女の顔をエミリアは全力で殴った。
父親の胴体らしきものは人質としての価値を失ったらしく少し前にリンナによって雑に放り捨てられている。
だから遠慮なく攻撃に転じたのだが、やはり傷つけたという手応えがない。
相手の命を削り取った感覚が一向にしないのだ。
リンナが植物タイプの魔物だから、恐らくはそれだけが理由ではない。
死者の呪詛に満ちた墓地でエミリアは考える。そして一つの答えを出した。
「……貴女、本体はリンナではありませんわね?」
リンナはにんまりと笑うだけで即答を避けた。
だから確信する。魔物としての肉体は恐らく土の下だ。ロングスカートで繋がりを隠しているのだ。
それならば眠っていた死者が一斉に地上へわき出たのも納得できる。
植物の魔物の中には死体を操るタイプもいると以前ミランダに聞いたことが有る。
アンデッドの類かと思えば聖魔法が効かず、実際は体内に寄生していた魔植物が遺体を動かしていたという場合があったと。
リンナが自ら語っていた『双子草』の肉体を奪うという特徴を考えれば、そのようなことができても不思議ではない。
「私の本体?本体ねえ……見たいなら見せてあげる」
その言葉と同時に土中から朽ちた腕が飛び出してくる。
エミリアが反射的に叩き落とすとジタバタと地面で暴れてから再び土に潜り込んでいった。
「今のが私の核でーす」
「はあ?!」
「元気いっぱいに土の下を動き回っているから、頑張って掘り当ててみなよ」
早くしないと墓場から逃げ出しちゃうよ。そう煽られてエミリアに再び焦りが浮かぶ。
広範囲攻撃に長けたミランダの到着が心底待ち遠しい。
ライルも強力な雷撃魔法が使える為地中の敵への攻撃が出来る筈だが死者の声に惑わされすっかり戦意を失っている。
リンナではなくライルの方を張り倒し喝を入れるべきだったかもしれない。困り果て動かした視線の先で、エミリアは苦し気に呻く男性を捕らえた。
『ドウシテ、勇者ナノニ、タスケテクレナカッタノ……?』
『勇者ガイタセイデ、村ガオソワレタンダ』
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墓場の土から現れた死人達が呪いの言葉を次々と吐き出す。
人間と認識できるのは数体だけで後は腕だけが地面から生えているような状態だ。
しかし、その掌には人間の口のようなものがついていてライルへの恨み言を吐き出し続けるのだった。
「や、やめろ、俺のせいじゃない……俺のせいじゃ、ないよ」
死者からの憎しみの言葉が一斉に向けられたことで、ライルのメンタルは再び傷つく。
よくもここまで悪意に満ちた企てが出来るとエミリアはリンナを睨み付けた。
「うんうん、やっぱり本当の家族から呪われるのが一番のダメージみたいだね!」
苦労した甲斐があった、そうしみじみと頷く女の顔をエミリアは全力で殴った。
父親の胴体らしきものは人質としての価値を失ったらしく少し前にリンナによって雑に放り捨てられている。
だから遠慮なく攻撃に転じたのだが、やはり傷つけたという手応えがない。
相手の命を削り取った感覚が一向にしないのだ。
リンナが植物タイプの魔物だから、恐らくはそれだけが理由ではない。
死者の呪詛に満ちた墓地でエミリアは考える。そして一つの答えを出した。
「……貴女、本体はリンナではありませんわね?」
リンナはにんまりと笑うだけで即答を避けた。
だから確信する。魔物としての肉体は恐らく土の下だ。ロングスカートで繋がりを隠しているのだ。
それならば眠っていた死者が一斉に地上へわき出たのも納得できる。
植物の魔物の中には死体を操るタイプもいると以前ミランダに聞いたことが有る。
アンデッドの類かと思えば聖魔法が効かず、実際は体内に寄生していた魔植物が遺体を動かしていたという場合があったと。
リンナが自ら語っていた『双子草』の肉体を奪うという特徴を考えれば、そのようなことができても不思議ではない。
「私の本体?本体ねえ……見たいなら見せてあげる」
その言葉と同時に土中から朽ちた腕が飛び出してくる。
エミリアが反射的に叩き落とすとジタバタと地面で暴れてから再び土に潜り込んでいった。
「今のが私の核でーす」
「はあ?!」
「元気いっぱいに土の下を動き回っているから、頑張って掘り当ててみなよ」
早くしないと墓場から逃げ出しちゃうよ。そう煽られてエミリアに再び焦りが浮かぶ。
広範囲攻撃に長けたミランダの到着が心底待ち遠しい。
ライルも強力な雷撃魔法が使える為地中の敵への攻撃が出来る筈だが死者の声に惑わされすっかり戦意を失っている。
リンナではなくライルの方を張り倒し喝を入れるべきだったかもしれない。困り果て動かした視線の先で、エミリアは苦し気に呻く男性を捕らえた。
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