勇者の帰りを待つだけだった私は居ても居なくても同じですか? ~負けヒロインの筈なのに歪んだ執着をされています~

砂礫レキ

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第一章

二十一話※エミリア視点

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「アタシは魔樹将軍が宿す種の一つ。双子草」

「双子草?」


 ライルを弾劾したかと思えばリンナは唐突に自己紹介を始めた。

 随分と中途半端なタイミングで名乗るものだと思いながらエミリアは聞く姿勢に入る。

 敵の情報は多いに越したことはない。



「人間の胎に植えて暫く待てば、やがて仮宿主の外見を写した状態でアタシは生まれてくる。大部分が人間の肉体でね」


 だから双子草なのだとリンナは得意げに自らの特性を語る。

 なるほど。道理で彼女が魔物だと気づくことができなかったわけだ。


「仮宿の人間の記憶や考えもある程度写すから命令の妨げにならないなら叶えてあげたりもするの。親切でしょ」

「それで今回はライルを籠絡しようとしたのですか」

「そうだけれど、なんか違ったみたい」


 違ったとはどういうことか。

 エミリアが尋ねると魔物は案外素直に答えた。


「うーん、リンナはぁ、ライル君の事が好きだとアタシは思ったのね。だからアデリーンから奪いたいんだって。ならアデリーンから寝取ったりアデリーンを殺せばいいって思ったの」


 なんという最悪な企みだ。エミリアは眉をひそめた。


「でもそうじゃなくてぇ、アデリーンが大切にしているものだから欲しかったみたいでぇ……でもライル君のことなんてアデリーンはどうでもいいみたいなんだよねえ」

「は?」


今上がった声はエミリアのものではない。


「だってアデリーンに聞いたら、居ても居なくてもおんなじだって」


 じゃあライル君に価値なんてないじゃん。

 リンナの言葉は魔物らしく残酷ゆえに無邪気なものだった。


 



 
 


 
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