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第一章
二十話※エミリア視点
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「目的ぃ?目的というか私が受けた命令はね……勇者の故郷を滅ぼすこと、かな」
意外な程淡泊な表情でリンナは問いかけに答える。
やはり復讐が目的かと納得しつつも、エミリアにはどこか納得できないことがあった。
ならばなぜリンナは、二人きりになった時にアデリーンを殺さなかったのだろう。
リンナの父親やレンという青年のように拘束して人質に利用すらしていない。
「村の壊滅など、ライルや私たちがいる時点で出来るわけないでしょう!」
エミリアの反論にリンナは今度はあからさまに馬鹿にするような笑みを浮かべる。
時間稼ぎの会話に乗ってくれたはいいがやはりこの女とのやり取りは楽しいものではない。
「えー?アンタはともかく肝心の勇者様は幼馴染の年上女におんぶに抱っこ。平和ボケして甘ったれ放題じゃない」
幾らでもチャンスはあった、そう嘲るように言われる。
「ならば何故、命令を実行しなかったのですか」
当然、実行して欲しかったという意味ではない。
ただリンナの行動は不可解過ぎる。
質問に対し女の魔物は考える様に自らの唇に軽く触れた。
その仕草が困惑をあらわしているようでエミリアは内心首を傾げた。
「うーん、わからなかったから……?」
リンナの答えはエミリアが予想した範疇にないものだった。
「勇者の村を滅ぼせ。そして勇者の大切な存在を無惨な死体に変えろ。
それがアタシの主である魔族の命令だった。だからアタシはアデリーンを殺そうと思った」
だけど、やっぱりわからない。
魔物はどこか途方にくれた声を出した。
「でもライル君とアデリーンは別に家族でも恋人でもないよねぇ?
なのにライル君はアデリーンにべったりで何から何までお世話させてるし意味がわからなくて
勇者が全然大事にしていないモノを大切枠で殺していいか迷っちゃって、
だってライル君のアデリーンに対する接し方って家族とか恋人って言うより……奴隷じゃない?」
愛しく大切な存在に対する扱いではない。
村を滅ぼそうとしている魔物からまさかの正論を吐かれエミリアは呆れた目で勇者を睨んだ。
意外な程淡泊な表情でリンナは問いかけに答える。
やはり復讐が目的かと納得しつつも、エミリアにはどこか納得できないことがあった。
ならばなぜリンナは、二人きりになった時にアデリーンを殺さなかったのだろう。
リンナの父親やレンという青年のように拘束して人質に利用すらしていない。
「村の壊滅など、ライルや私たちがいる時点で出来るわけないでしょう!」
エミリアの反論にリンナは今度はあからさまに馬鹿にするような笑みを浮かべる。
時間稼ぎの会話に乗ってくれたはいいがやはりこの女とのやり取りは楽しいものではない。
「えー?アンタはともかく肝心の勇者様は幼馴染の年上女におんぶに抱っこ。平和ボケして甘ったれ放題じゃない」
幾らでもチャンスはあった、そう嘲るように言われる。
「ならば何故、命令を実行しなかったのですか」
当然、実行して欲しかったという意味ではない。
ただリンナの行動は不可解過ぎる。
質問に対し女の魔物は考える様に自らの唇に軽く触れた。
その仕草が困惑をあらわしているようでエミリアは内心首を傾げた。
「うーん、わからなかったから……?」
リンナの答えはエミリアが予想した範疇にないものだった。
「勇者の村を滅ぼせ。そして勇者の大切な存在を無惨な死体に変えろ。
それがアタシの主である魔族の命令だった。だからアタシはアデリーンを殺そうと思った」
だけど、やっぱりわからない。
魔物はどこか途方にくれた声を出した。
「でもライル君とアデリーンは別に家族でも恋人でもないよねぇ?
なのにライル君はアデリーンにべったりで何から何までお世話させてるし意味がわからなくて
勇者が全然大事にしていないモノを大切枠で殺していいか迷っちゃって、
だってライル君のアデリーンに対する接し方って家族とか恋人って言うより……奴隷じゃない?」
愛しく大切な存在に対する扱いではない。
村を滅ぼそうとしている魔物からまさかの正論を吐かれエミリアは呆れた目で勇者を睨んだ。
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