17 / 66
第一章
十六話
しおりを挟む
リンナの家にあった人面花の鉢植え。そこから伸びている根を私達は辿った。
薄暗い森の中で目を凝らして地面を見続ける。
たまに根が分岐している時は前進するのを止めその先を見に行った。
根に絡めとられてる兎を発見した時は思わず叫び声を上げてしまうところだった。
今更言うべきことではないけれど、この植物は一体何なのだろう。
どこかの森には虫を食べたりする花が存在するらしいが、そんなレベルではない。
幸いにも兎は捕まったばかりらしく、エミリアさんが根を外してやると跳んで逃げていった。
『あの兎……耳が欠けていましたわね』
それが重要なことのように彼女が言うので、私も先程の兎の姿を思い出してみる。
確かに胴体よりも頭側に根は多く絡みついていたようだった。あのまま時間が経っていれば窒息死していたかもしれない。
そういった方法で獲物を殺して栄養にする植物かもしれないと私はエミリアさんに言った。
しかし私の予想はその後裏切られることになる。
森を抜けるまでの間に私たちは幾つかの根の先を見つけた。
しかし、この根を辿って先を確認するという行為はまるで悪趣味なクジのようだ。
木に巻きついて小鳥を捕らえていたり、知らずに踏んだ私の脚に蛇のように巻きつこうとした時には流石に悲鳴を上げた。
エミリアさんが目にも見えない動きで阻止して引きちぎってくれなければ、寧ろ一人の時に捕らえられていたらどうなっていたか。
考えただけでぞっとする。
私が身を震わせていると、エミリアさんは懐から取り出した綺麗な紙を突然ビリビリと破り出した。
不思議なことに千切られた紙は地面に落ちず、逆にひらひらと高く浮き上がり数匹の蝶へと変わった。
『ミランダから渡された魔法道具ですわ。これが彼女に私たちの居場所を知らせてくれるでしょう』
いざとなったら彼女の火炎魔法が必要になるかもしれませんから。
そうエミリアさんに言われて私はよくわからないまま頷いた。
根を回収しながら元の広い道に戻る。
残された根は、太めの物が二本だ。
それは横道にそれずまっすぐに伸びていた。
森を抜けた先には、先程エミリアさんに告げた様に墓地がある。
死因が伝染病などでない限り亡骸はそのまま埋葬される。
鳥や兎、そして人間を捕らえるような植物に絶対近づいては欲しくない場所だ。
けれど私の願いは叶うことはなく根は着実に墓地に近づく。
そしてそれを追った私たちが共同墓地に足を踏み入れた時。
そこには二組の男女がいた。
一方はライルとリンナ。
そしてもう片方はレン兄さんと。
「ルーナ、姉さん……」
私のただ一人の姉が、当時の姿のままレン兄さんに抱き寄せられていた。
奇跡のような、悪い夢だった。
薄暗い森の中で目を凝らして地面を見続ける。
たまに根が分岐している時は前進するのを止めその先を見に行った。
根に絡めとられてる兎を発見した時は思わず叫び声を上げてしまうところだった。
今更言うべきことではないけれど、この植物は一体何なのだろう。
どこかの森には虫を食べたりする花が存在するらしいが、そんなレベルではない。
幸いにも兎は捕まったばかりらしく、エミリアさんが根を外してやると跳んで逃げていった。
『あの兎……耳が欠けていましたわね』
それが重要なことのように彼女が言うので、私も先程の兎の姿を思い出してみる。
確かに胴体よりも頭側に根は多く絡みついていたようだった。あのまま時間が経っていれば窒息死していたかもしれない。
そういった方法で獲物を殺して栄養にする植物かもしれないと私はエミリアさんに言った。
しかし私の予想はその後裏切られることになる。
森を抜けるまでの間に私たちは幾つかの根の先を見つけた。
しかし、この根を辿って先を確認するという行為はまるで悪趣味なクジのようだ。
木に巻きついて小鳥を捕らえていたり、知らずに踏んだ私の脚に蛇のように巻きつこうとした時には流石に悲鳴を上げた。
エミリアさんが目にも見えない動きで阻止して引きちぎってくれなければ、寧ろ一人の時に捕らえられていたらどうなっていたか。
考えただけでぞっとする。
私が身を震わせていると、エミリアさんは懐から取り出した綺麗な紙を突然ビリビリと破り出した。
不思議なことに千切られた紙は地面に落ちず、逆にひらひらと高く浮き上がり数匹の蝶へと変わった。
『ミランダから渡された魔法道具ですわ。これが彼女に私たちの居場所を知らせてくれるでしょう』
いざとなったら彼女の火炎魔法が必要になるかもしれませんから。
そうエミリアさんに言われて私はよくわからないまま頷いた。
根を回収しながら元の広い道に戻る。
残された根は、太めの物が二本だ。
それは横道にそれずまっすぐに伸びていた。
森を抜けた先には、先程エミリアさんに告げた様に墓地がある。
死因が伝染病などでない限り亡骸はそのまま埋葬される。
鳥や兎、そして人間を捕らえるような植物に絶対近づいては欲しくない場所だ。
けれど私の願いは叶うことはなく根は着実に墓地に近づく。
そしてそれを追った私たちが共同墓地に足を踏み入れた時。
そこには二組の男女がいた。
一方はライルとリンナ。
そしてもう片方はレン兄さんと。
「ルーナ、姉さん……」
私のただ一人の姉が、当時の姿のままレン兄さんに抱き寄せられていた。
奇跡のような、悪い夢だった。
22
お気に入りに追加
6,093
あなたにおすすめの小説
『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月
りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。
1話だいたい1500字くらいを想定してます。
1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。
更新は不定期。
完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。
恋愛とファンタジーの中間のような話です。
主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
ヤンデレ悪役令嬢の前世は喪女でした。反省して婚約者へのストーキングを止めたら何故か向こうから近寄ってきます。
砂礫レキ
恋愛
伯爵令嬢リコリスは嫌われていると知りながら婚約者であるルシウスに常日頃からしつこく付き纏っていた。
ある日我慢の限界が来たルシウスに突き飛ばされリコリスは後頭部を強打する。
その結果自分の前世が20代後半喪女の乙女ゲーマーだったことと、
この世界が女性向け恋愛ゲーム『花ざかりスクールライフ』に酷似していることに気づく。
顔がほぼ見えない長い髪、血走った赤い目と青紫の唇で婚約者に執着する黒衣の悪役令嬢。
前世の記憶が戻ったことで自らのストーカー行為を反省した彼女は婚約解消と不気味過ぎる外見のイメージチェンジを決心するが……?
私は逃げます
恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる