勇者の帰りを待つだけだった私は居ても居なくても同じですか? ~負けヒロインの筈なのに歪んだ執着をされています~

砂礫レキ

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第一章

四話

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 レン兄さんは村長夫婦の長男だ。今年三十歳になる。

 私とは親戚ということもあって小さい頃から実の妹のように面倒を見てくれていた。

 その繋がりでライルのことも可愛がってくれていた。

 寧ろ子供時代は、私よりもレン兄さんの方にライルはよく懐いていたと思う。

 ある事件が起きるまでは。 

 レン兄さんは昔から責任感があって優しい人だった。

 将来は国を守る騎士になりたいと言っていて、村の皆は誰もが彼ならなれるだろうと思っていた。

 そして彼が士官学校に入学する数か月前、村が魔物たちに襲われた。

 ライルの両親も含め沢山の人が死んだ。

 大人たちに混じって魔物と戦っていたレン兄さんは、その時に利き腕を無くしたのだ。

 親の死体に縋り離れようとしないライルを魔物から庇った結果の悲劇だった。

 あれ以降、ライルはレン兄さんを避けるようになった。

 そして孤児となった彼の衣食の面倒を隣家の私達家族が見ることになった。

 もし、利き腕を無くしていなければレン兄さんは今頃立派な騎士になっていただろう。

 けれどそれと引き換えにこの世界は勇者を失っていたのだ。

 命の恩人である彼の前でなら、ライルもちゃんと私の話を聞いてくれるだろうか。

 私は雑貨屋のドアを叩いた。

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