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26.王子と令嬢の交換条件
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「罠?」
「グレンダがあっさり王太子の命令と話したことに違和感があるのです」
イザークの言葉にオスカーは考え込み、そして続けろと促した。
「王太子命令ならそもそもメイドでは無くアンドリュース公爵家の人間、たとえば私に命令すればいい」
「……確かにそうだな」
「そもそもサディアス王太子はグレンダとどうやって接触したのかしら?」
ディシアの疑問にイザークは今はわからないと答えた。
「彼はアンドリュース公爵家を邪魔だと認識しています。機会があれば取り潰したいとさえ思っているでしょう」
「何故そこまで恨まれているんだ?」
「わたくしのせいです」
オスカーの言葉に回答をしたのはアラベラだった。
「わたくしがサディアス殿下を拒み、そして家族がそんなわたくしを守ってくれたからだと思います」
「アラベラのせいではないが、恐らくそうだろう。サディアス殿下は自分に逆らう者を許さない」
「成程、ただの逆恨みというわけか」
銀髪の青年の呆れたような声に、自国の王太子を庇う者は居ない。
「ですのでグレンダが言っていたという理由だけでサディアス殿下に嫌疑をかけるわけにはいかないのです」
「冤罪を仕掛けたと逆に不敬罪で処される可能性があるからか?」
「そうです」
「なら俺から奴に問い質してやろうか」
「……は?」
オスカーからの提案にイザークが一瞬目を丸くする。
彼が返答する前に口を開いたのはアラベラだった。
「お気持ちだけ感謝いたします。オスカー殿下」
「何故だ」
自身の案を即座に断られオスカーはアラベラに問いかける。
「それは……問い詰められることに慣れていないサディアス殿下が逆上する可能性があるからです」
「やれやれ、まるで癇癪持ちの子供だな。だが掠り傷程度なら俺は平気だぞ」
寧ろそれを理由に奴を王太子の座から飛ばすことも出来そうだ。笑み交じりのオスカーの言葉にアラベラは首を振る。
「彼が万が一貴男を傷つけた場合、口封じの為命まで奪いそして罪を別の人物に押し付けると思います」
子供の頃、王が気に入っていた小鳥を遊び半分で殺めた時もその様にしたと話していました。
その光景を思い出したのかアラベラの緑色の瞳が悲し気に曇った。
「本当に、ろくでもないな。現王の一人しかいない子供とはいえ王にして良いとはとても思えん」
「それはアンドリュース公爵家も同じ気持ちです」
イザークの言葉にオスカーは真紅の瞳を煌めかせる。
「……ほう?」
「ですが今はアラベラの解毒と治癒を最優先したいと思っております」
「それが簡単に出来そうな有能な医師に心当たりはあるのか?」
「それは……せめてどんな毒かわかれば良いのですが」
「ふむ……ならば解毒できる人物が現れて、高価な報酬を求められたらどうする?」
オスカーの突然の問いかけにイザークは内心驚きながら答えた。
「私が支払えるものなら、幾らでも支払います。ただ限度はありますが……」
「金ではなく、アラベラ嬢を妻にしたいと望まれたなら?」
「条件次第ですが、わたくしは受け入れたいと思います。優秀な医師ならアンドリュース公爵家の益にもなるでしょう」
アラベラの答えにオスカーはニヤリと笑う。
「なら決まりだ。アラベラ・アンドリュース公爵令嬢。俺は貴女に協力しよう」
これで暫くこの国に居座る理由が出来た。
そう楽しそうに告げるオスカーの前でイザークはディシアに肩を揺すられるまで口をポカンと開け続けていた。
「グレンダがあっさり王太子の命令と話したことに違和感があるのです」
イザークの言葉にオスカーは考え込み、そして続けろと促した。
「王太子命令ならそもそもメイドでは無くアンドリュース公爵家の人間、たとえば私に命令すればいい」
「……確かにそうだな」
「そもそもサディアス王太子はグレンダとどうやって接触したのかしら?」
ディシアの疑問にイザークは今はわからないと答えた。
「彼はアンドリュース公爵家を邪魔だと認識しています。機会があれば取り潰したいとさえ思っているでしょう」
「何故そこまで恨まれているんだ?」
「わたくしのせいです」
オスカーの言葉に回答をしたのはアラベラだった。
「わたくしがサディアス殿下を拒み、そして家族がそんなわたくしを守ってくれたからだと思います」
「アラベラのせいではないが、恐らくそうだろう。サディアス殿下は自分に逆らう者を許さない」
「成程、ただの逆恨みというわけか」
銀髪の青年の呆れたような声に、自国の王太子を庇う者は居ない。
「ですのでグレンダが言っていたという理由だけでサディアス殿下に嫌疑をかけるわけにはいかないのです」
「冤罪を仕掛けたと逆に不敬罪で処される可能性があるからか?」
「そうです」
「なら俺から奴に問い質してやろうか」
「……は?」
オスカーからの提案にイザークが一瞬目を丸くする。
彼が返答する前に口を開いたのはアラベラだった。
「お気持ちだけ感謝いたします。オスカー殿下」
「何故だ」
自身の案を即座に断られオスカーはアラベラに問いかける。
「それは……問い詰められることに慣れていないサディアス殿下が逆上する可能性があるからです」
「やれやれ、まるで癇癪持ちの子供だな。だが掠り傷程度なら俺は平気だぞ」
寧ろそれを理由に奴を王太子の座から飛ばすことも出来そうだ。笑み交じりのオスカーの言葉にアラベラは首を振る。
「彼が万が一貴男を傷つけた場合、口封じの為命まで奪いそして罪を別の人物に押し付けると思います」
子供の頃、王が気に入っていた小鳥を遊び半分で殺めた時もその様にしたと話していました。
その光景を思い出したのかアラベラの緑色の瞳が悲し気に曇った。
「本当に、ろくでもないな。現王の一人しかいない子供とはいえ王にして良いとはとても思えん」
「それはアンドリュース公爵家も同じ気持ちです」
イザークの言葉にオスカーは真紅の瞳を煌めかせる。
「……ほう?」
「ですが今はアラベラの解毒と治癒を最優先したいと思っております」
「それが簡単に出来そうな有能な医師に心当たりはあるのか?」
「それは……せめてどんな毒かわかれば良いのですが」
「ふむ……ならば解毒できる人物が現れて、高価な報酬を求められたらどうする?」
オスカーの突然の問いかけにイザークは内心驚きながら答えた。
「私が支払えるものなら、幾らでも支払います。ただ限度はありますが……」
「金ではなく、アラベラ嬢を妻にしたいと望まれたなら?」
「条件次第ですが、わたくしは受け入れたいと思います。優秀な医師ならアンドリュース公爵家の益にもなるでしょう」
アラベラの答えにオスカーはニヤリと笑う。
「なら決まりだ。アラベラ・アンドリュース公爵令嬢。俺は貴女に協力しよう」
これで暫くこの国に居座る理由が出来た。
そう楽しそうに告げるオスカーの前でイザークはディシアに肩を揺すられるまで口をポカンと開け続けていた。
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