25 / 40
24.メイド頭の裏切り
しおりを挟む
「アラベラを連れ出したのはグレンダ、十年前からアンドリュース公爵家でメイド頭をやっている人物です」
「グレンダが?!」
アラベラが驚きで大きな声を上げる。
すぐに恥じ入って謝罪する妹にイザークは驚くのも仕方がないことだと溜息を吐いた。
「メイド頭か、アラベラ嬢の反応を見るとかなり信頼されていたのだな」
「そうですね。勤勉実直を絵に描いたような人物で私たちも彼女を信頼していました」
「私だって今でも信じられません。グレンダは堅物で自分にも私たちにも厳しい人で……!」
「でも、わたくしたちの事を可愛がってくれたわ。庭を散歩中に野犬が迷い込んだ時も躊躇わず庇ってくれた……」
ひっそりと語るアラベラを前にイザークとディシアも暗い顔をする。
「グレンダとやらが犯行を行った証拠はあるのか」
「はい……残念ながら」
オスカーの問いかけにイザークは頷く。
「アラベラの部屋には後付けで外から鍵をかけられるようになっていました。その鍵を持ち出すところを他のメイドに目撃されています」
「他には?」
「アラベラを連れて廊下を歩いているところも目撃されていますし、何より御者もグレンダに命じられて二人を城まで連れて行ったと証言しております」
「その御者は詳細も聞かず城まで二人を運んだのか?」
「いえ、王太子の命令だからと凄い剣幕で押し切られたとのことです。執事長も私も運悪くその時は屋敷から離れていて……戻って来た御者に報告を受け卒倒しそうになりました」
青い顔で額を押さえるアンドリュース公爵令息をオスカーは大変だったなと労わる。
そして何か考え込む表情をした。
「十年間メイド頭をやっていた人物なら、連れ出すこと自体は難しいことでは無かっただろうな。使用人たちへの権力も信頼もある」
運悪く屋敷を離れていたと言っていたが、スケジュールを把握して動いたのかもしれない。
オスカーに言われイザークは疲れた顔で同意する。
「でも私は部屋にいたのだから御者は屋敷を出る前に私に確認すれば良かったのに!そうしたら絶対止めましたわ!」
「だがそれだと俺がアラベラ嬢と関わることは出来なかったな。これも運命の導きとやらかもしれん」
熱弁をふるうディシアにオスカーがさらりと答える。
「舞踏会でアラベラ嬢は一人だった。そのメイド頭は一人で馬車に乗って公爵邸まで戻って来たのか?」
「いえ、城でアラベラとグレンダの二人とも降ろしたと御者は言っています」
「なら城内に居るんじゃないか?」
「アラベラを部屋に戻した後、私は再び城に戻りグレンダを探しましたが……」
「居なかったということか」
「確認できる場所は確認し、城内の使用人にも話を聞きました。そうしたら衛兵の一人が城内の物ではないメイド服を着た女性が城を出ていくのを見かけたと……」
「つまり、アラベラを城に置き去りにして自分はさっさと逃げたということか?」
大した忠義者だな。
呆れた顔をしながら皮肉を言うオスカーに、アラベラが口を開いた。
「グレンダが?!」
アラベラが驚きで大きな声を上げる。
すぐに恥じ入って謝罪する妹にイザークは驚くのも仕方がないことだと溜息を吐いた。
「メイド頭か、アラベラ嬢の反応を見るとかなり信頼されていたのだな」
「そうですね。勤勉実直を絵に描いたような人物で私たちも彼女を信頼していました」
「私だって今でも信じられません。グレンダは堅物で自分にも私たちにも厳しい人で……!」
「でも、わたくしたちの事を可愛がってくれたわ。庭を散歩中に野犬が迷い込んだ時も躊躇わず庇ってくれた……」
ひっそりと語るアラベラを前にイザークとディシアも暗い顔をする。
「グレンダとやらが犯行を行った証拠はあるのか」
「はい……残念ながら」
オスカーの問いかけにイザークは頷く。
「アラベラの部屋には後付けで外から鍵をかけられるようになっていました。その鍵を持ち出すところを他のメイドに目撃されています」
「他には?」
「アラベラを連れて廊下を歩いているところも目撃されていますし、何より御者もグレンダに命じられて二人を城まで連れて行ったと証言しております」
「その御者は詳細も聞かず城まで二人を運んだのか?」
「いえ、王太子の命令だからと凄い剣幕で押し切られたとのことです。執事長も私も運悪くその時は屋敷から離れていて……戻って来た御者に報告を受け卒倒しそうになりました」
青い顔で額を押さえるアンドリュース公爵令息をオスカーは大変だったなと労わる。
そして何か考え込む表情をした。
「十年間メイド頭をやっていた人物なら、連れ出すこと自体は難しいことでは無かっただろうな。使用人たちへの権力も信頼もある」
運悪く屋敷を離れていたと言っていたが、スケジュールを把握して動いたのかもしれない。
オスカーに言われイザークは疲れた顔で同意する。
「でも私は部屋にいたのだから御者は屋敷を出る前に私に確認すれば良かったのに!そうしたら絶対止めましたわ!」
「だがそれだと俺がアラベラ嬢と関わることは出来なかったな。これも運命の導きとやらかもしれん」
熱弁をふるうディシアにオスカーがさらりと答える。
「舞踏会でアラベラ嬢は一人だった。そのメイド頭は一人で馬車に乗って公爵邸まで戻って来たのか?」
「いえ、城でアラベラとグレンダの二人とも降ろしたと御者は言っています」
「なら城内に居るんじゃないか?」
「アラベラを部屋に戻した後、私は再び城に戻りグレンダを探しましたが……」
「居なかったということか」
「確認できる場所は確認し、城内の使用人にも話を聞きました。そうしたら衛兵の一人が城内の物ではないメイド服を着た女性が城を出ていくのを見かけたと……」
「つまり、アラベラを城に置き去りにして自分はさっさと逃げたということか?」
大した忠義者だな。
呆れた顔をしながら皮肉を言うオスカーに、アラベラが口を開いた。
28
お気に入りに追加
824
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
王子が元聖女と離縁したら城が傾いた。
七辻ゆゆ
ファンタジー
王子は庶民の聖女と結婚してやったが、関係はいつまで経っても清いまま。何度寝室に入り込もうとしても、強力な結界に阻まれた。
妻の務めを果たさない彼女にもはや我慢も限界。王子は愛する人を妻に差し替えるべく、元聖女の妻に離縁を言い渡した。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
離縁をさせて頂きます、なぜなら私は選ばれたので。
kanon
恋愛
「アリシア、お前はもうこの家に必要ない。ブライト家から追放する」
父からの予想外の言葉に、私は目を瞬かせる。
我が国でも名高いブライト伯爵家のだたっぴろい応接間。
用があると言われて足を踏み入れた途端に、父は私にそう言ったのだ。
困惑する私を楽しむように、姉のモンタナが薄ら笑いを浮かべる。
「あら、聞こえなかったのかしら? お父様は追放と言ったのよ。まさか追放の意味も知らないわけじゃないわよねぇ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる