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後編
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「レティシア、アルノー元男爵が又来たようだよ」
「まあ……懲りない人ね」
「守衛が警察に突き出したから安心していい。今度こそ遠くへ療養に出される筈だ」
向こうの親戚とそういう約束をしたからね。
私を慰めるように言うのは夫のセドリック。私より二歳年上の伯爵だ。
アルノーと離婚してから一年後私は彼と再婚した。
夫の事を忘れたくて社交界に頻繁に顔を出すようにした結果彼と知り合った。
一部では男漁りと笑われていたようだが、実際セドリックという素晴らしい人と結婚出来たので気にならない。
夫は病弱だった奥様を亡くされてから十年独り身を貫いていた。
両者の年齢を考え、二年後に養子を貰うこと前提での結婚だったが私は間もなく妊娠した。
健康な男の子で私もセドリックも溺愛している。
一方元夫のアルノーの実子は出来ないままだった。
彼が新しい妻にしたシェリルは自分にもアルノーにも似てない髪と目の色の子供を産み落とした。
実は私は離婚を切り出された時点でシェリルの托卵には気づいていた。
まさかアルノーと全く違う特徴の相手の子供を偽るとまでは予想していなかったが。
彼女は子爵令嬢と名乗っていたが、実際は子爵がメイドに手を付けて生ませた子供だったらしい。
当然アルノーには離婚されたが、彼も十歳以上若い娘に騙された愚か者と社交界で笑いものになった。
三十超えた男に十代の娘が打算無しで嫁ぐ筈なんて無いと知らないのはアルノーだけだった。
更に私の不妊を理由に離婚したのに、再婚した私が間もなく妊娠したから嘘つき男扱いされている。
実際は彼こそが子供をつくれない体だったのに。
結婚当初子供は絶対欲しくないと願った夫の為、私は避妊に気を使った。
その為妊娠しやすい体質や妊娠についてのタイムリミットについて調べていて、結果夫が子を作りにくい体質だと知ったのだ。
私はそれを誰にも言わなかった。
両親に厳しく監視されていたアルノーが決して責められないようにと。
その結果がこれなのだから皮肉だ。
私もアルノーの両親から不妊に関してずっと責められ続けたこと、夫は一切庇わなかったことを広めておいた。
これが目的で社交に精を出した部分もある。
彼に嫁ぎたがる女性なんてまともな判断力を持っていたら居ないだろう。
実際私が彼と離婚して五年経つが再々婚したという話は聞かない。
私へのしつこい付き纏い行為を伯爵である夫に抗議された結果、男爵の座から降ろされたから益々縁遠くなるだろう。
「だからといって私と再婚したがるなんて全く理解できないけれど……」
「いや私は理解できるよ、君はとても素晴らしい女性だからね」
そうセドリックが私の肩を抱いて微笑む。
彼はとても優しい。でも結婚したのはそれだけが理由ではない。
「ねえ、貴男は私が子供を産んでも産まなくてもどちらでもいいと言ってくれたわね」
「ああ、私は君が好きだから結婚したんだ」
「私もそんな貴男だから結婚したのよ」
そう言って彼の頬に接吻ける。
もう少ししたら私たちの可愛い子供が昼寝から起きてくるだろう。
それまでに元夫のことなんて忘れるに違いない。
私はセドリックに愛していると囁いた。
「まあ……懲りない人ね」
「守衛が警察に突き出したから安心していい。今度こそ遠くへ療養に出される筈だ」
向こうの親戚とそういう約束をしたからね。
私を慰めるように言うのは夫のセドリック。私より二歳年上の伯爵だ。
アルノーと離婚してから一年後私は彼と再婚した。
夫の事を忘れたくて社交界に頻繁に顔を出すようにした結果彼と知り合った。
一部では男漁りと笑われていたようだが、実際セドリックという素晴らしい人と結婚出来たので気にならない。
夫は病弱だった奥様を亡くされてから十年独り身を貫いていた。
両者の年齢を考え、二年後に養子を貰うこと前提での結婚だったが私は間もなく妊娠した。
健康な男の子で私もセドリックも溺愛している。
一方元夫のアルノーの実子は出来ないままだった。
彼が新しい妻にしたシェリルは自分にもアルノーにも似てない髪と目の色の子供を産み落とした。
実は私は離婚を切り出された時点でシェリルの托卵には気づいていた。
まさかアルノーと全く違う特徴の相手の子供を偽るとまでは予想していなかったが。
彼女は子爵令嬢と名乗っていたが、実際は子爵がメイドに手を付けて生ませた子供だったらしい。
当然アルノーには離婚されたが、彼も十歳以上若い娘に騙された愚か者と社交界で笑いものになった。
三十超えた男に十代の娘が打算無しで嫁ぐ筈なんて無いと知らないのはアルノーだけだった。
更に私の不妊を理由に離婚したのに、再婚した私が間もなく妊娠したから嘘つき男扱いされている。
実際は彼こそが子供をつくれない体だったのに。
結婚当初子供は絶対欲しくないと願った夫の為、私は避妊に気を使った。
その為妊娠しやすい体質や妊娠についてのタイムリミットについて調べていて、結果夫が子を作りにくい体質だと知ったのだ。
私はそれを誰にも言わなかった。
両親に厳しく監視されていたアルノーが決して責められないようにと。
その結果がこれなのだから皮肉だ。
私もアルノーの両親から不妊に関してずっと責められ続けたこと、夫は一切庇わなかったことを広めておいた。
これが目的で社交に精を出した部分もある。
彼に嫁ぎたがる女性なんてまともな判断力を持っていたら居ないだろう。
実際私が彼と離婚して五年経つが再々婚したという話は聞かない。
私へのしつこい付き纏い行為を伯爵である夫に抗議された結果、男爵の座から降ろされたから益々縁遠くなるだろう。
「だからといって私と再婚したがるなんて全く理解できないけれど……」
「いや私は理解できるよ、君はとても素晴らしい女性だからね」
そうセドリックが私の肩を抱いて微笑む。
彼はとても優しい。でも結婚したのはそれだけが理由ではない。
「ねえ、貴男は私が子供を産んでも産まなくてもどちらでもいいと言ってくれたわね」
「ああ、私は君が好きだから結婚したんだ」
「私もそんな貴男だから結婚したのよ」
そう言って彼の頬に接吻ける。
もう少ししたら私たちの可愛い子供が昼寝から起きてくるだろう。
それまでに元夫のことなんて忘れるに違いない。
私はセドリックに愛していると囁いた。
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