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第四章

103話 必要なのは熱と覚醒

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「つまり今現在、私たちの体は洞窟内の湖に沈められているってわけね」

 淡々とした彼女の言葉に幾つも驚きの声が上がる。

「捕まる前に洞窟の最深部から感じた魔力、いえ……どちらかといえば聖なる力はこの湖が発していたのかしら」
「そうだ」

 彼女は神竜エレトクラの力を感じ取っていたのか。
 流石賢者だと感心しながら俺は肯定する。

「その力で俺たちは水に沈められているのに生きている。ただ水温は凍り付くほどの冷たさだ」
「そのまま目覚めても身動きできず凍死か溺死の二択ってことね」
「死にはしないが、殆ど死んでいるようなものだな」
「だから温度を上げる必要があると……理解したわ。なら私にも役目があるわね」

 彼女は嫣然と微笑むと胸の前で印のようなものを組み始めた。
 すると両の指先の中心に木の杖が現れる。

「成程、大切なのは具体的なイメージとここに存在すると思い込むことなのね」

 仕組みはわかったわ。そう青年姿のクロノを見つめながら女賢者は呟いた。

「つまりその子が理想の自分としてクリエイトした貴男は、この世界でもっとも強い男ということかしら?」
「いいえ二番目ですね、一番はアルヴァさんです」
「あら、虐められていると噂だったけれど随分と懐いているのね」

 エウレアは少女の方のクロノに視線を移し悪戯っぽく微笑む。
 今までどこか話についていけないような顔をしていた彼女は、だが力一杯それを肯定した。

「はい、アルヴァさんはとっても強くて、そしてボクを強くしてくれる人です!」
「成程、彼のきつい態度はスパルタだったってこと……」
「はい!」

 エウレアは勝手に納得したようだった。
 それは誤解だが虐められていた側のクロノがこの調子だから仕方がないのかもしれない。

「エウレア、このクロノは強力な魔力封印が使える」
「えっ、この子が?」

 俺がそう説明すると彼女は流石に驚いたようだった。

「そうよ、酷い目に遭ったわ」
「ミアンレベルの魔術師の魔力を封じることが出来るの?怖いわね」

 そう冷静な表情に戻りながら女賢者は言う。

「つまりこの子が、魔族の魔力を封じてくれるってことかしら」
「頑張ります!!」

 そう力一杯返事をする少女にエウレアは頼もしいことと答えた。
 お世辞なのか本気なのかはわからない。

「クロノには夢と現実両方で魔力封印をして貰う」
「二つの世界で?」
「大人の方のクロノの話によると、俺たちが魔族に使われた薬自体は魔力の浸透率と体内への保持期間を著しく上げる為のものらしい」
「つまり魔族の術にかかりやすくなった上効果が持続し続けるってこと、悪質ね」

 道理でこの私があっさりと悪夢に引き込まれた訳だわ。
 女賢者は初めて悔し気な表情をした。
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