109 / 131
第四章
103話 必要なのは熱と覚醒
しおりを挟む
「つまり今現在、私たちの体は洞窟内の湖に沈められているってわけね」
淡々とした彼女の言葉に幾つも驚きの声が上がる。
「捕まる前に洞窟の最深部から感じた魔力、いえ……どちらかといえば聖なる力はこの湖が発していたのかしら」
「そうだ」
彼女は神竜エレトクラの力を感じ取っていたのか。
流石賢者だと感心しながら俺は肯定する。
「その力で俺たちは水に沈められているのに生きている。ただ水温は凍り付くほどの冷たさだ」
「そのまま目覚めても身動きできず凍死か溺死の二択ってことね」
「死にはしないが、殆ど死んでいるようなものだな」
「だから温度を上げる必要があると……理解したわ。なら私にも役目があるわね」
彼女は嫣然と微笑むと胸の前で印のようなものを組み始めた。
すると両の指先の中心に木の杖が現れる。
「成程、大切なのは具体的なイメージとここに存在すると思い込むことなのね」
仕組みはわかったわ。そう青年姿のクロノを見つめながら女賢者は呟いた。
「つまりその子が理想の自分としてクリエイトした貴男は、この世界でもっとも強い男ということかしら?」
「いいえ二番目ですね、一番はアルヴァさんです」
「あら、虐められていると噂だったけれど随分と懐いているのね」
エウレアは少女の方のクロノに視線を移し悪戯っぽく微笑む。
今までどこか話についていけないような顔をしていた彼女は、だが力一杯それを肯定した。
「はい、アルヴァさんはとっても強くて、そしてボクを強くしてくれる人です!」
「成程、彼のきつい態度はスパルタだったってこと……」
「はい!」
エウレアは勝手に納得したようだった。
それは誤解だが虐められていた側のクロノがこの調子だから仕方がないのかもしれない。
「エウレア、このクロノは強力な魔力封印が使える」
「えっ、この子が?」
俺がそう説明すると彼女は流石に驚いたようだった。
「そうよ、酷い目に遭ったわ」
「ミアンレベルの魔術師の魔力を封じることが出来るの?怖いわね」
そう冷静な表情に戻りながら女賢者は言う。
「つまりこの子が、魔族の魔力を封じてくれるってことかしら」
「頑張ります!!」
そう力一杯返事をする少女にエウレアは頼もしいことと答えた。
お世辞なのか本気なのかはわからない。
「クロノには夢と現実両方で魔力封印をして貰う」
「二つの世界で?」
「大人の方のクロノの話によると、俺たちが魔族に使われた薬自体は魔力の浸透率と体内への保持期間を著しく上げる為のものらしい」
「つまり魔族の術にかかりやすくなった上効果が持続し続けるってこと、悪質ね」
道理でこの私があっさりと悪夢に引き込まれた訳だわ。
女賢者は初めて悔し気な表情をした。
淡々とした彼女の言葉に幾つも驚きの声が上がる。
「捕まる前に洞窟の最深部から感じた魔力、いえ……どちらかといえば聖なる力はこの湖が発していたのかしら」
「そうだ」
彼女は神竜エレトクラの力を感じ取っていたのか。
流石賢者だと感心しながら俺は肯定する。
「その力で俺たちは水に沈められているのに生きている。ただ水温は凍り付くほどの冷たさだ」
「そのまま目覚めても身動きできず凍死か溺死の二択ってことね」
「死にはしないが、殆ど死んでいるようなものだな」
「だから温度を上げる必要があると……理解したわ。なら私にも役目があるわね」
彼女は嫣然と微笑むと胸の前で印のようなものを組み始めた。
すると両の指先の中心に木の杖が現れる。
「成程、大切なのは具体的なイメージとここに存在すると思い込むことなのね」
仕組みはわかったわ。そう青年姿のクロノを見つめながら女賢者は呟いた。
「つまりその子が理想の自分としてクリエイトした貴男は、この世界でもっとも強い男ということかしら?」
「いいえ二番目ですね、一番はアルヴァさんです」
「あら、虐められていると噂だったけれど随分と懐いているのね」
エウレアは少女の方のクロノに視線を移し悪戯っぽく微笑む。
今までどこか話についていけないような顔をしていた彼女は、だが力一杯それを肯定した。
「はい、アルヴァさんはとっても強くて、そしてボクを強くしてくれる人です!」
「成程、彼のきつい態度はスパルタだったってこと……」
「はい!」
エウレアは勝手に納得したようだった。
それは誤解だが虐められていた側のクロノがこの調子だから仕方がないのかもしれない。
「エウレア、このクロノは強力な魔力封印が使える」
「えっ、この子が?」
俺がそう説明すると彼女は流石に驚いたようだった。
「そうよ、酷い目に遭ったわ」
「ミアンレベルの魔術師の魔力を封じることが出来るの?怖いわね」
そう冷静な表情に戻りながら女賢者は言う。
「つまりこの子が、魔族の魔力を封じてくれるってことかしら」
「頑張ります!!」
そう力一杯返事をする少女にエウレアは頼もしいことと答えた。
お世辞なのか本気なのかはわからない。
「クロノには夢と現実両方で魔力封印をして貰う」
「二つの世界で?」
「大人の方のクロノの話によると、俺たちが魔族に使われた薬自体は魔力の浸透率と体内への保持期間を著しく上げる為のものらしい」
「つまり魔族の術にかかりやすくなった上効果が持続し続けるってこと、悪質ね」
道理でこの私があっさりと悪夢に引き込まれた訳だわ。
女賢者は初めて悔し気な表情をした。
10
お気に入りに追加
1,367
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる