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第三章
69話 組織による買い占め
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「ああそれ買い取ったの私。毛皮とか内蔵とか色々使えるからね~」
自警団の寮で食事を御馳走になった翌日、火猪の買い主はあっさり判明した。灯台下暗しのノアである。
彼はクロノが目覚めたこと喜び、そして「今日は持久力の訓練だよ~」と言いながらアキツ村までお使いを命じていた。
馬車で四時間かかる場所へ徒歩、いや走って行って帰ってこいというのである。
考えるだけでドッと疲れるそれをクロノは爽やかな笑顔で快諾した。
「走ることは好きですから!」
見えない尻尾をぶんぶん振り回しながらはりきるクロノを俺たちはアジトから送り出した。
そして今はノアにレックスから聞いた話を打ち明けているところだ。
彼が火猪を気にしていたようだから一番最初にそ話題を選んで、結果ノアが買い手だと判明したのだ。
「あれ、言ってなかったっけ。肉屋の主人に話聞くついでに引き取ったって~」
「聞いてない」
「そうだっけ、ごめんね最近忘れやすくて。年なのかな~あはは」
下手に突っ込みたくない類の冗談を口にしてノアは笑った。本気なのか誤魔化しなのかはわからない。
「まあ商売やってる人に色々話して貰うには商品を買うのが一番楽だからさ~」
「それはそうかもしれないが」
「うん、それにあの店主火猪丸ごと埋めようとしてたからさ、勿体ないよね~」
「勿体ない?」
毒に汚染された魔物の死体に価値があるのだろうか。俺はノアに尋ねた。
「そうだね~肉は当然食べられないけど毒餌とかに使えると思うよ」
「……毒餌、そういう使い方か」
「私なら切り分けた後凍らせて保存出来るしね~低級魔物の巣とかで使うと便利だよ」
置いて数日放置すれば結構な数が勝手に死ぬし。あっさりと残酷なことを言いながらノアは革袋から赤黒い塊を幾つか取り出した。黒い手袋をしている。
「君たちにもあげようか?」
「今は凍っていても時間が経てば溶けるんだろう?保管が難しいから気持ちだけで良い」
「じゃあこの袋ごとあげるよ、内側に氷トカゲの胃袋を使っているから中に入れると勝手に凍るよ~」
「えっ、それは凄い……便利なものじゃないか?」
「そうかもしれないけど、私は自分で凍らせることが出来るからそこまで活用できてないんだよね~基本一人旅だし」
倒した魔物を加工して作ったが、常々誰かに譲ろうと思っていた。そう重ねてノアに言われ俺は有難くその特殊な革袋を頂戴した。
中に氷トカゲという魔物の皮を使ってるらしいが外側は少し冷たいぐらいだ。
「飲み水とか食べ物とか入れたい時はよく洗ってからにしてね~」
「わかった、それと少ないかもしれないが……」
「あ、お金はいらな~い。不用品押し付けただけだし」
俺は自分の財布から金貨を数枚取り出しノアに渡そうとしたが断られた。
しかし彼は不用品というが便利な道具であることは間違いない。
要らなければ売ればいいのにと思ったが、実際そうされたら困るので黙っておいた。
「それに火猪の毛皮と内臓手に入れたし~私としてはこっちの方が色々使えるんだよね」
「使える?」
「うん、この魔物の毛皮は燃えやすくて燃えないからね。魔力の火種が少しでもあれば焚火代わりに使えるんだ」
内臓は干して粉にしてから特殊な水で固めると火の魔石もどきになる。そう楽しそうに説明される。
「魔石?」
「そうだよ~。魔石があれば魔力がない人間でも一時的にその属性の魔術めいたものが使える。今回作るのはあくまでもどきだけどね」
「……魔石って簡単に手に入るのか?」
だったら俺も幾つか入手したい。そう思いノアに尋ねてみる。
冒険者なのにそんなことも知らないのかと呆れられるかもしれない。口にしてから気づいたがノアの回答は予想とは違っていた。
「う~ん、少し前なら庶民でも小さい物なら普段使い出来ていた筈だけど、最近は高級品だと思う」
「どうしてだ?」
「魔石の発掘量が大幅に減ったのが原因だと表向きには言われてるね~」
万能の剣士の言葉に俺は引っ掛かりを覚える。
「……表向き?」
「そう。実際は誰か……いや規模を考えれば組織かな。何者かが大量に買い漁ってるみたいだね~」
「組織が、買い漁る……」
「あくまで噂に過ぎないけどね~しかし本当だったら嫌な予感しかしないよね」
金で大量の魔力を集めているようなものなんだから。ノアは薄笑いで言う。
確かに嫌な感じだ。
「その組織の名前とかノアは知っているのか?」
「そうだね、でも君は知らないほうが良い」
知れば縁ができるからね。彼が笑みを消して言う。嫌な予感どころか悪寒がした。
ノアがここまで言う程だ。ろくでもない団体組織なのは間違いなさそうだ。
しかし巨大な悪の組織が存在するというのなら、どの道関わりあうことにはなるかもしれない。
未来の英雄であり本来の主人公であるクロノが俺のパーティーに居るのだから。
正義の主人公には倒す為の巨悪が存在するのが決まりごとなのだ。
ただ、この世界の創造神とやらはその巨悪にアルヴァを配役した上で勇者クロノを凌辱させるつもりのようだったが。
もしかして、いやいやまさか。しかし一度浮かんだ考えは消えない。俺は否定を求めて万能の英雄に質問をした。
「……その組織って、ろくでもない神とか崇めてたりするか?」
「……は?」
ノアがぽかんと口を開ける。こんな無防備な彼の表情は初めて見た。
そして秘密多き英雄が素直に驚いたということは俺の最悪な予感は当たっているのだろう。
人の不幸は蜜の味な神が狂信者たちの背後で笑っているのだ。
自警団の寮で食事を御馳走になった翌日、火猪の買い主はあっさり判明した。灯台下暗しのノアである。
彼はクロノが目覚めたこと喜び、そして「今日は持久力の訓練だよ~」と言いながらアキツ村までお使いを命じていた。
馬車で四時間かかる場所へ徒歩、いや走って行って帰ってこいというのである。
考えるだけでドッと疲れるそれをクロノは爽やかな笑顔で快諾した。
「走ることは好きですから!」
見えない尻尾をぶんぶん振り回しながらはりきるクロノを俺たちはアジトから送り出した。
そして今はノアにレックスから聞いた話を打ち明けているところだ。
彼が火猪を気にしていたようだから一番最初にそ話題を選んで、結果ノアが買い手だと判明したのだ。
「あれ、言ってなかったっけ。肉屋の主人に話聞くついでに引き取ったって~」
「聞いてない」
「そうだっけ、ごめんね最近忘れやすくて。年なのかな~あはは」
下手に突っ込みたくない類の冗談を口にしてノアは笑った。本気なのか誤魔化しなのかはわからない。
「まあ商売やってる人に色々話して貰うには商品を買うのが一番楽だからさ~」
「それはそうかもしれないが」
「うん、それにあの店主火猪丸ごと埋めようとしてたからさ、勿体ないよね~」
「勿体ない?」
毒に汚染された魔物の死体に価値があるのだろうか。俺はノアに尋ねた。
「そうだね~肉は当然食べられないけど毒餌とかに使えると思うよ」
「……毒餌、そういう使い方か」
「私なら切り分けた後凍らせて保存出来るしね~低級魔物の巣とかで使うと便利だよ」
置いて数日放置すれば結構な数が勝手に死ぬし。あっさりと残酷なことを言いながらノアは革袋から赤黒い塊を幾つか取り出した。黒い手袋をしている。
「君たちにもあげようか?」
「今は凍っていても時間が経てば溶けるんだろう?保管が難しいから気持ちだけで良い」
「じゃあこの袋ごとあげるよ、内側に氷トカゲの胃袋を使っているから中に入れると勝手に凍るよ~」
「えっ、それは凄い……便利なものじゃないか?」
「そうかもしれないけど、私は自分で凍らせることが出来るからそこまで活用できてないんだよね~基本一人旅だし」
倒した魔物を加工して作ったが、常々誰かに譲ろうと思っていた。そう重ねてノアに言われ俺は有難くその特殊な革袋を頂戴した。
中に氷トカゲという魔物の皮を使ってるらしいが外側は少し冷たいぐらいだ。
「飲み水とか食べ物とか入れたい時はよく洗ってからにしてね~」
「わかった、それと少ないかもしれないが……」
「あ、お金はいらな~い。不用品押し付けただけだし」
俺は自分の財布から金貨を数枚取り出しノアに渡そうとしたが断られた。
しかし彼は不用品というが便利な道具であることは間違いない。
要らなければ売ればいいのにと思ったが、実際そうされたら困るので黙っておいた。
「それに火猪の毛皮と内臓手に入れたし~私としてはこっちの方が色々使えるんだよね」
「使える?」
「うん、この魔物の毛皮は燃えやすくて燃えないからね。魔力の火種が少しでもあれば焚火代わりに使えるんだ」
内臓は干して粉にしてから特殊な水で固めると火の魔石もどきになる。そう楽しそうに説明される。
「魔石?」
「そうだよ~。魔石があれば魔力がない人間でも一時的にその属性の魔術めいたものが使える。今回作るのはあくまでもどきだけどね」
「……魔石って簡単に手に入るのか?」
だったら俺も幾つか入手したい。そう思いノアに尋ねてみる。
冒険者なのにそんなことも知らないのかと呆れられるかもしれない。口にしてから気づいたがノアの回答は予想とは違っていた。
「う~ん、少し前なら庶民でも小さい物なら普段使い出来ていた筈だけど、最近は高級品だと思う」
「どうしてだ?」
「魔石の発掘量が大幅に減ったのが原因だと表向きには言われてるね~」
万能の剣士の言葉に俺は引っ掛かりを覚える。
「……表向き?」
「そう。実際は誰か……いや規模を考えれば組織かな。何者かが大量に買い漁ってるみたいだね~」
「組織が、買い漁る……」
「あくまで噂に過ぎないけどね~しかし本当だったら嫌な予感しかしないよね」
金で大量の魔力を集めているようなものなんだから。ノアは薄笑いで言う。
確かに嫌な感じだ。
「その組織の名前とかノアは知っているのか?」
「そうだね、でも君は知らないほうが良い」
知れば縁ができるからね。彼が笑みを消して言う。嫌な予感どころか悪寒がした。
ノアがここまで言う程だ。ろくでもない団体組織なのは間違いなさそうだ。
しかし巨大な悪の組織が存在するというのなら、どの道関わりあうことにはなるかもしれない。
未来の英雄であり本来の主人公であるクロノが俺のパーティーに居るのだから。
正義の主人公には倒す為の巨悪が存在するのが決まりごとなのだ。
ただ、この世界の創造神とやらはその巨悪にアルヴァを配役した上で勇者クロノを凌辱させるつもりのようだったが。
もしかして、いやいやまさか。しかし一度浮かんだ考えは消えない。俺は否定を求めて万能の英雄に質問をした。
「……その組織って、ろくでもない神とか崇めてたりするか?」
「……は?」
ノアがぽかんと口を開ける。こんな無防備な彼の表情は初めて見た。
そして秘密多き英雄が素直に驚いたということは俺の最悪な予感は当たっているのだろう。
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