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第二章

第46話 縁と剣

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「ノアさんとも酒場で知り合ったんです、ボク最初あの人の性別がわからなくて……」

 つい不躾に見ていたら声をかけられたんです。
 そうクロノは若干恥じらうようにして話した。
 成程、男装の麗人のような外見のノアに自身の性別に悩むクロノが興味を抱いたのが切っ掛けか。
 しかし本当にノアの性別はどちらなのだろう。
 クロノに訊いてみたいが話が横道にそれそうなので今回は止めておいた。

「剣士になりたくて冒険者見習いをしているって話したら色々親身になってくれて、時々森での狩りとかに連れて行ってくれました」
「そうなのか」
「ノアさんはアルヴァさんと同じぐらい強くて、それと獲りたての獣肉を魔術で焼いてくれて……美味しかったです!」
「……涎、出てるぞ」

 俺とあの英雄(バケモノ)を同列にしないで欲しい。
 だがこれで彼女が助けを呼びに行った相手がノアだということに合点がいく。
 元の小説と違いクロノは万能の英雄と早々に知り合っていた。
 そして剣士になりたいが才能が無くて悩んでいる彼女にノアは優しくしてやった。
 クロノの才能を見抜いていたのもあるかもしれない。
 ノアは飄々としているが面倒見のいい性格なのだろう。
 作品内では師弟関係だったクロノに特別な縁を感じて尚更親身になった可能性も考えられる。
 そして色々連れまわしていく中でノアの能力や強さをクロノは知ったという訳か。

「つまり、ノアならあの巨大スライムとの戦いで役に立つだろうと思って」
「はい、でもなかなかノアさんが見つからなくて……」

 その間にアルヴァさんはあんなことに。そう沈痛な表情でクロノが悔やむ。
  
「トマスさんだけでも先に戻って貰うようお願いするべきでした、ボクいつも判断が遅くて……ごめんなさい!」


 確かにトマスがあの場にいたなら自警団の連中はもっと御しやすかっただろう。
 だが所詮結果論である。スライムとの戦いはもう終わったし、子供も俺も何とか生き残ることは出来た。

「でもクロノがノアを連れて来てくれたおかげで俺は回復して貰えたんだろう?」
「それは、そうですが……」
「なら今回は結果オーライだ。……トマスと自警団の連中には山程言いたいことがあるけどな」

 というか自警団の質が低すぎる。それは副団長であるトマスが見下されているのが原因に思えた。
 実力的には圧倒的に彼らよりトマスの方が上だ。
 それを寝取られ男と影で馬鹿にして笑っている連中はその内痛い目を見たらいいと思った。
 何より子供の前で父親を嘲笑うような奴らは嫌いだ。
 スライムに囚われていた少年が生を諦めかける原因になった軽口を俺は苦々しく思い出していた。
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