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第二章
第41話 嫉妬する位なら強くなれ
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「な、なんで俺まで……?」
「なんでって、君あんな戦い方してたら普通に死んじゃうよ~」
強敵に立ち向かう度胸は評価するけど命って一つしかないんだよ?
そう言いながらノアは俺にデコピンしてきた。
「いてっ」
額に軽く衝撃を受けるまで、俺は彼の指先が自分に接近していることに気づかなかった。
恐らく魔術の類は使っていない。この英雄は身体能力も人外レベルなのだ。
「ちなみにクロノちゃんはこれぐらいの速度なら普通に反応するよ~」
ノアにそう告げられ予想以上に衝撃を受ける。
まだ修行を始めていない段階なのに既に反射神経は俺を超えているのか。
いや主人公だからそれぐらいは出来ていても当たり前なのか。
そんなことを俺がもだもだと考えていると子供にするように頭をポンポンと叩かれた。
「悔しがらなくても君だって鍛えれば反応できるようになるよ~」
「別に、悔しくは……」
「でも悔しいから、彼女に戦い方も教えないまま飼い殺しにしていたんでしょ?」
穏やかな口調はそのままでノアの鋭い台詞がナイフのように俺の胸を抉ってきた。
クロノはちゃんと鍛えればリーダーの自分よりずっと強くなる。
そのことを知っていてわざと荷物持ちだけさせ続けた。
何故なら自分よりずっと年下でまともに剣術を学んだこともない子供の踏み台になりたくないから。
己のつまらないプライドを守る為才能の塊のような子供を無能呼ばわりし力の開花を封じ続けた。
それがお前、アルヴァ・グレイブラッドのやってきたことだ。そう万能の英雄は俺に容赦なく告げてくる。
「大体彼女を本当に無能で足手纏いだと考えていたなら戦闘の場に連れて行ったりなんかしないさ~」
一人がしくじれば全員巻き添えだからね。そう淡々と告げられ返す言葉もない。
クロノが戦闘時で恐怖にパニックを起こしたり、敵の攻撃を避けられない程鈍重だったことなんて一度もない。
大量の荷物を抱えながら戦闘の邪魔を決してしないよう素早く立ち回っていたのだ。
それだけで剣を持って戦う姿を見なくても、十分クロノが普通の子供でないぐらいわかる。
「まあ、以前の君の記憶や考えを今の君がどれぐらい理解しているからわからないけどね~」
今は前世の人格とやらが優勢なんでしょ?そう確かめるように訊かれ俺は頷いた。
「正直、何故前の自分がクロノを殊更冷遇するのか不思議だった。心の底から無能だと思っているならすぐ追い出すだろうし……」
「まあ、それはそうだね。噂の中のアルヴァ・グレイブラッドはお世辞にも慈悲深かかったり後進育成を頑張る人格者ではなかったし」
「でもクロノの価値を薄々わかっていて、その才能に嫉妬しながら手放したくなかったというなら理解できる」
「荷物持ちさせておくだけでもかなり便利だものね。その上家事も全部任せていたんでしょ~?」
ある意味修行はさせていたって感じだね。花嫁修業って奴だけど。
そう冷めた眼差しで言われ、俺は返答に困った。
「もしかしたら前のアルヴァにはそういう意図があったのかもしれないけど~」
自分の子供にクロノの才能を受け継がせたいとか?ノアの憶測に流石にそれはないと首を振る。
アルヴァ・グレイブラッドはそんな先の事を考えながら生きている男ではない筈だ。
だからこそ感情に任せて実際は十分役に立っていたクロノを役立たずだとパーティーから追放したのだから。
俺がそう説明するのノアはわざとらしく下卑た笑みを浮かべた。品の良い顔立ちだから似合っていない事この上ない。
「いや、でもクロノちゃんは後数年もすればかなりの美人になるよ~今でも十分可愛いけどね~」
「それは、そうだろうけど……十以上も年下の子供にそんな気になったらやばいでしょ」
俺は以前のアルヴァと違ってそこまで女好きじゃないし。ノアのからかいを否定する。
「ふ~ん、その台詞。数年後の君からもう一度聞いてみたいね」
お互いそれまで生きていられたらの話だけど。
万能の英雄はそう言うと俺から離れる。
「その為には君の修行の件、ちゃんと考えてね。私は村外れの安宿に泊まっているから」
クロノちゃんと話し合って数日中に返事を聞かせて。
ノアの言葉に俺はわかったと答えた。
「なんでって、君あんな戦い方してたら普通に死んじゃうよ~」
強敵に立ち向かう度胸は評価するけど命って一つしかないんだよ?
そう言いながらノアは俺にデコピンしてきた。
「いてっ」
額に軽く衝撃を受けるまで、俺は彼の指先が自分に接近していることに気づかなかった。
恐らく魔術の類は使っていない。この英雄は身体能力も人外レベルなのだ。
「ちなみにクロノちゃんはこれぐらいの速度なら普通に反応するよ~」
ノアにそう告げられ予想以上に衝撃を受ける。
まだ修行を始めていない段階なのに既に反射神経は俺を超えているのか。
いや主人公だからそれぐらいは出来ていても当たり前なのか。
そんなことを俺がもだもだと考えていると子供にするように頭をポンポンと叩かれた。
「悔しがらなくても君だって鍛えれば反応できるようになるよ~」
「別に、悔しくは……」
「でも悔しいから、彼女に戦い方も教えないまま飼い殺しにしていたんでしょ?」
穏やかな口調はそのままでノアの鋭い台詞がナイフのように俺の胸を抉ってきた。
クロノはちゃんと鍛えればリーダーの自分よりずっと強くなる。
そのことを知っていてわざと荷物持ちだけさせ続けた。
何故なら自分よりずっと年下でまともに剣術を学んだこともない子供の踏み台になりたくないから。
己のつまらないプライドを守る為才能の塊のような子供を無能呼ばわりし力の開花を封じ続けた。
それがお前、アルヴァ・グレイブラッドのやってきたことだ。そう万能の英雄は俺に容赦なく告げてくる。
「大体彼女を本当に無能で足手纏いだと考えていたなら戦闘の場に連れて行ったりなんかしないさ~」
一人がしくじれば全員巻き添えだからね。そう淡々と告げられ返す言葉もない。
クロノが戦闘時で恐怖にパニックを起こしたり、敵の攻撃を避けられない程鈍重だったことなんて一度もない。
大量の荷物を抱えながら戦闘の邪魔を決してしないよう素早く立ち回っていたのだ。
それだけで剣を持って戦う姿を見なくても、十分クロノが普通の子供でないぐらいわかる。
「まあ、以前の君の記憶や考えを今の君がどれぐらい理解しているからわからないけどね~」
今は前世の人格とやらが優勢なんでしょ?そう確かめるように訊かれ俺は頷いた。
「正直、何故前の自分がクロノを殊更冷遇するのか不思議だった。心の底から無能だと思っているならすぐ追い出すだろうし……」
「まあ、それはそうだね。噂の中のアルヴァ・グレイブラッドはお世辞にも慈悲深かかったり後進育成を頑張る人格者ではなかったし」
「でもクロノの価値を薄々わかっていて、その才能に嫉妬しながら手放したくなかったというなら理解できる」
「荷物持ちさせておくだけでもかなり便利だものね。その上家事も全部任せていたんでしょ~?」
ある意味修行はさせていたって感じだね。花嫁修業って奴だけど。
そう冷めた眼差しで言われ、俺は返答に困った。
「もしかしたら前のアルヴァにはそういう意図があったのかもしれないけど~」
自分の子供にクロノの才能を受け継がせたいとか?ノアの憶測に流石にそれはないと首を振る。
アルヴァ・グレイブラッドはそんな先の事を考えながら生きている男ではない筈だ。
だからこそ感情に任せて実際は十分役に立っていたクロノを役立たずだとパーティーから追放したのだから。
俺がそう説明するのノアはわざとらしく下卑た笑みを浮かべた。品の良い顔立ちだから似合っていない事この上ない。
「いや、でもクロノちゃんは後数年もすればかなりの美人になるよ~今でも十分可愛いけどね~」
「それは、そうだろうけど……十以上も年下の子供にそんな気になったらやばいでしょ」
俺は以前のアルヴァと違ってそこまで女好きじゃないし。ノアのからかいを否定する。
「ふ~ん、その台詞。数年後の君からもう一度聞いてみたいね」
お互いそれまで生きていられたらの話だけど。
万能の英雄はそう言うと俺から離れる。
「その為には君の修行の件、ちゃんと考えてね。私は村外れの安宿に泊まっているから」
クロノちゃんと話し合って数日中に返事を聞かせて。
ノアの言葉に俺はわかったと答えた。
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