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第一章
第17話 浴室の女主人
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拠点であるこの家に戻ってから、アルヴァとしての記憶が次々戻ってきている。
クロノとの短い会話の途中から俺はそれを自覚し始めていた。
衣装棚にしまいこんだきりのシャツの柄、街の古着屋の店主の顔。
戦闘中俺たちの後ろで祈るように両手を組むクロノの姿。
それに舌打ちをしつつ敵に攻撃魔法を繰り出すミアンの横顔。
先程俺がクロノを追いやった浴室は、メンバーの一人が絶対に必要だと言い張って設置させたものだ。
それがミアン・クローベル。金の髪をツインテールにした子供みたいな外見の女魔術士。
攻撃魔法の腕はいいが自分が元貴族であることを鼻にかけ、我儘放題のお姫様気取りの女だ。
「……あいつか」
一人になった部屋でそう呟く。
クロノの怪我の理由は慣れない前衛戦闘を担当させられたからだ。
そしてそうするよう命じたのが恐らくミアンなのだ。
男たちは戦闘に関してそんな悪ふざけはしない。
戦い慣れていない人間が戦闘に巻き込まれると混乱が起きやすいのだ。
治癒士のエストの考えは読めないが、彼女もそういうリスクのある遊びはしないタイプだとは思う。
戦えない人間が敵と自分の前をうろちょろしているなんて正直邪魔でしかない。
そしてそんな馬鹿げた状況を作り出そうとするのは感情的で我儘なミアンお嬢様ぐらいしか心当たりがないのだ。
彼女はクロノを嫌っている。仲間だなんて全く思わず奴隷として見下している。
クロノと魔物を纏めて魔法の炎で焼くぐらい何とも思ってなさそうだった
わざわざ俺の部屋でクロノに着替えを命じた件も含めてきな臭い。
俺は今クロノがいるだろう風呂場のことを考える。
浴室はメンバー共同利用だがミアンは自分の浴室だと常々主張している。
他のメンバーには貸してやっているだけだと。実際猫足のバスタブはミアンの私物だ。
そんな彼女がクロノが入浴していることを知ったら激怒して猫のように騒ぎまくるだろう。
最悪クロノを裸のまま外に追い出すかもしれない。
俺は腰かけていたベッドから立ち上がった。
ミアンが風呂に近づく前にこちらで捕まえて置こうと思ったのだ。
そういえば彼女には土産を丸ごと奪わてれている。
流石にあの量を一人で食べきったりしてないよな、そう不安になりながら俺は部屋から出た。
クロノとの短い会話の途中から俺はそれを自覚し始めていた。
衣装棚にしまいこんだきりのシャツの柄、街の古着屋の店主の顔。
戦闘中俺たちの後ろで祈るように両手を組むクロノの姿。
それに舌打ちをしつつ敵に攻撃魔法を繰り出すミアンの横顔。
先程俺がクロノを追いやった浴室は、メンバーの一人が絶対に必要だと言い張って設置させたものだ。
それがミアン・クローベル。金の髪をツインテールにした子供みたいな外見の女魔術士。
攻撃魔法の腕はいいが自分が元貴族であることを鼻にかけ、我儘放題のお姫様気取りの女だ。
「……あいつか」
一人になった部屋でそう呟く。
クロノの怪我の理由は慣れない前衛戦闘を担当させられたからだ。
そしてそうするよう命じたのが恐らくミアンなのだ。
男たちは戦闘に関してそんな悪ふざけはしない。
戦い慣れていない人間が戦闘に巻き込まれると混乱が起きやすいのだ。
治癒士のエストの考えは読めないが、彼女もそういうリスクのある遊びはしないタイプだとは思う。
戦えない人間が敵と自分の前をうろちょろしているなんて正直邪魔でしかない。
そしてそんな馬鹿げた状況を作り出そうとするのは感情的で我儘なミアンお嬢様ぐらいしか心当たりがないのだ。
彼女はクロノを嫌っている。仲間だなんて全く思わず奴隷として見下している。
クロノと魔物を纏めて魔法の炎で焼くぐらい何とも思ってなさそうだった
わざわざ俺の部屋でクロノに着替えを命じた件も含めてきな臭い。
俺は今クロノがいるだろう風呂場のことを考える。
浴室はメンバー共同利用だがミアンは自分の浴室だと常々主張している。
他のメンバーには貸してやっているだけだと。実際猫足のバスタブはミアンの私物だ。
そんな彼女がクロノが入浴していることを知ったら激怒して猫のように騒ぎまくるだろう。
最悪クロノを裸のまま外に追い出すかもしれない。
俺は腰かけていたベッドから立ち上がった。
ミアンが風呂に近づく前にこちらで捕まえて置こうと思ったのだ。
そういえば彼女には土産を丸ごと奪わてれている。
流石にあの量を一人で食べきったりしてないよな、そう不安になりながら俺は部屋から出た。
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