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21.逃亡と罰
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魔力を解放するのはとても気持ちが良かった。
そして周囲の魔力を吸収することも。
窒息寸前に呼吸を許されたような解放感が私を満たしていた。
同時に飢えた喉に栄養に溢れた果汁が流れ込んでくるような満足感、
皆魔法を使う度にこのような快楽を味わっているのだろうか。
先程まで私を拘束していた貴族の子弟たちは床に転がっていた。
何故か体を丸めて震えている。雪山で凍えている人間のように。
「寒い、寒い、寒い……」
「力が、魔力が、抜けてくっ、どうしてだよ……」
私の魔法の影響だろう。
魔力を吸われるとここまで不調になってしまうのか。
でも彼らが身動きできなくなったことで逆に私は自由になった。
ふらつきながら扉を目指す。近くでナビーナが倒れていることに気付いた。
泡を吹きながら俯せに倒れている。
特にナビーナを狙って魔法を発動させて訳じゃないが彼女が一番ダメージを受けたようだ。
そのままの姿勢で長くいると窒息してしまうかもしれない。
少し考えて私はナビーナを仰向けにする。
すると急に彼女の目がカッと見開かれた。
そして私の手を掴む。気を失っていたとは思えない強さだった。
「ロゼリア、あんた……!!」
「ナ、ナビーナ……!」
「……ちがう? ロゼリアじゃな……」
私が無意識に吸魔の魔法を発動してしまったのかナビーナは再び気絶した。
命に別状はないと良いけれど。そう思いながらも彼女に二度と触れることはせず扉を開ける。
使用人に不審がられて連れ戻されないように、何でもないふりをして廊下を歩いた。
幸か不幸か誰とも擦れ違わなかった。
ナビーナが私を事故に見せかけて殺す為、事前に人払いをしていたのかもしれない。
このまま誰にも気づかれず城から出たい
ディオンとは公爵領と王家領の間の森で落ち合う約束をしていた。
だから公爵家の馬車が待機している場所まで辿り着きたい。
御者にはナビーナはまだ王太子との用があるから残ると言えば信じるだろう。
「うぐ、っ?」
考え事をしていたら唐突に吐き気が込み上げる。
手で口を押えたがその隙間から赤い液体が零れた。
「これ、がっ、封印の……?」
血が濃酸のように喉を焼く。
封印を破って魔法を使えば罰が与えられる。確かにそう言われていた。
しかし時間差で訪れるとは。
私はそれでもよろよろと歩き、なるべく目立たない場所を選んで倒れた。
城の廊下の隅、赤いカーテンの陰に必死に身を隠す。
どうか目が覚めるまで誰にも見つかっていませんように、それだけを願いながら気を失った。
そして周囲の魔力を吸収することも。
窒息寸前に呼吸を許されたような解放感が私を満たしていた。
同時に飢えた喉に栄養に溢れた果汁が流れ込んでくるような満足感、
皆魔法を使う度にこのような快楽を味わっているのだろうか。
先程まで私を拘束していた貴族の子弟たちは床に転がっていた。
何故か体を丸めて震えている。雪山で凍えている人間のように。
「寒い、寒い、寒い……」
「力が、魔力が、抜けてくっ、どうしてだよ……」
私の魔法の影響だろう。
魔力を吸われるとここまで不調になってしまうのか。
でも彼らが身動きできなくなったことで逆に私は自由になった。
ふらつきながら扉を目指す。近くでナビーナが倒れていることに気付いた。
泡を吹きながら俯せに倒れている。
特にナビーナを狙って魔法を発動させて訳じゃないが彼女が一番ダメージを受けたようだ。
そのままの姿勢で長くいると窒息してしまうかもしれない。
少し考えて私はナビーナを仰向けにする。
すると急に彼女の目がカッと見開かれた。
そして私の手を掴む。気を失っていたとは思えない強さだった。
「ロゼリア、あんた……!!」
「ナ、ナビーナ……!」
「……ちがう? ロゼリアじゃな……」
私が無意識に吸魔の魔法を発動してしまったのかナビーナは再び気絶した。
命に別状はないと良いけれど。そう思いながらも彼女に二度と触れることはせず扉を開ける。
使用人に不審がられて連れ戻されないように、何でもないふりをして廊下を歩いた。
幸か不幸か誰とも擦れ違わなかった。
ナビーナが私を事故に見せかけて殺す為、事前に人払いをしていたのかもしれない。
このまま誰にも気づかれず城から出たい
ディオンとは公爵領と王家領の間の森で落ち合う約束をしていた。
だから公爵家の馬車が待機している場所まで辿り着きたい。
御者にはナビーナはまだ王太子との用があるから残ると言えば信じるだろう。
「うぐ、っ?」
考え事をしていたら唐突に吐き気が込み上げる。
手で口を押えたがその隙間から赤い液体が零れた。
「これ、がっ、封印の……?」
血が濃酸のように喉を焼く。
封印を破って魔法を使えば罰が与えられる。確かにそう言われていた。
しかし時間差で訪れるとは。
私はそれでもよろよろと歩き、なるべく目立たない場所を選んで倒れた。
城の廊下の隅、赤いカーテンの陰に必死に身を隠す。
どうか目が覚めるまで誰にも見つかっていませんように、それだけを願いながら気を失った。
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