26 / 28
レノアの章
王の器
しおりを挟む
私の奇異な外見が一部の人間にはやたら神聖に見えるらしい。
信徒や司祭の内何人かは既に教会ではなく私に忠誠を誓っていた。
セイレーンの涙の調査をしてくれたのもその者たちだ。
そしてグラン王子に情報を伝えてくれたのも。
ある意味それは賭けだった。彼がその情報を王妃に伝える可能性もあったのだから。
けれどそうはならなかった。
セイレーンの涙の被害者がアイリスフィア様だったから。
婚約者を弟に奪われた嘆きと絶望は過去の懺悔で捨てられても、愛した人を弄ばれた怒りは消せなかったらしい。
正直それさえも受け入れてしまうような男性なら私はジルク第二王子だけでなく現王家ごと見限っていただろう。
けれどグラン王子は奮起し、寧ろ十二分に働いてくれた。
セイレーンの涙の大瓶が王妃の部屋に隠されていることを探り当てたのだ。
これは彼にも忠実で有能な部下がいるということである。
セイレーンの涙を使われた人間は対象者の命令に思考を縛られ逆らえなくなる。
けれど対象者が傍にいない場合、いても命令をしていない場合は薬の効果からある程度逃れられるのだ。
つまり今回の計画で重要なのは王妃サンドラが国王に命令する隙を与えないことだった。
だから既に薬を使われている可能性が高い国王に事情を伝える訳にはいかなかったのだ。
寝室で妻に一日の報告を義務付けられている可能性だってあるのだから。
式典当日まで城内で暮らしていたグラン王子の心的負担はかなり大きかっただろう。
王妃に企みを気付かれれば最悪処刑される可能性さえあったのだから。
だが彼も私も大きな賭けに勝った。
王家とアイリ様を蝕んだジルク王子とその母親であるサンドラ王妃は罪人として捕らえられ国外追放された。
その時にセイレーンの涙の解毒薬の材料もちゃんと入手できた。
国王陛下も完全に正気を取り戻すだろう。今度こそグラン王子を王太子として擁立し役目を譲る日まで誇り高く生きてほしい。
そして今回のグラン王子の働きに心から感謝し評価すべきだと思う。
彼が居なければこの国の王家は浅ましい毒に蝕まれ続けたままだったのだろうから。
信徒や司祭の内何人かは既に教会ではなく私に忠誠を誓っていた。
セイレーンの涙の調査をしてくれたのもその者たちだ。
そしてグラン王子に情報を伝えてくれたのも。
ある意味それは賭けだった。彼がその情報を王妃に伝える可能性もあったのだから。
けれどそうはならなかった。
セイレーンの涙の被害者がアイリスフィア様だったから。
婚約者を弟に奪われた嘆きと絶望は過去の懺悔で捨てられても、愛した人を弄ばれた怒りは消せなかったらしい。
正直それさえも受け入れてしまうような男性なら私はジルク第二王子だけでなく現王家ごと見限っていただろう。
けれどグラン王子は奮起し、寧ろ十二分に働いてくれた。
セイレーンの涙の大瓶が王妃の部屋に隠されていることを探り当てたのだ。
これは彼にも忠実で有能な部下がいるということである。
セイレーンの涙を使われた人間は対象者の命令に思考を縛られ逆らえなくなる。
けれど対象者が傍にいない場合、いても命令をしていない場合は薬の効果からある程度逃れられるのだ。
つまり今回の計画で重要なのは王妃サンドラが国王に命令する隙を与えないことだった。
だから既に薬を使われている可能性が高い国王に事情を伝える訳にはいかなかったのだ。
寝室で妻に一日の報告を義務付けられている可能性だってあるのだから。
式典当日まで城内で暮らしていたグラン王子の心的負担はかなり大きかっただろう。
王妃に企みを気付かれれば最悪処刑される可能性さえあったのだから。
だが彼も私も大きな賭けに勝った。
王家とアイリ様を蝕んだジルク王子とその母親であるサンドラ王妃は罪人として捕らえられ国外追放された。
その時にセイレーンの涙の解毒薬の材料もちゃんと入手できた。
国王陛下も完全に正気を取り戻すだろう。今度こそグラン王子を王太子として擁立し役目を譲る日まで誇り高く生きてほしい。
そして今回のグラン王子の働きに心から感謝し評価すべきだと思う。
彼が居なければこの国の王家は浅ましい毒に蝕まれ続けたままだったのだろうから。
25
お気に入りに追加
3,026
あなたにおすすめの小説

帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動
しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。
国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。
「あなた、婚約者がいたの?」
「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」
「最っ低!」
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

【R15】婚約破棄イベントを無事終えたのに「婚約破棄はなかったことにしてくれ」と言われました
あんころもちです
恋愛
やり直しした人生で無事破滅フラグを回避し婚約破棄を終えた元悪役令嬢
しかし婚約破棄後、元婚約者が部屋を尋ねに来た。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか
あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。
「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」
突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。
すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。
オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……?
最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意!
「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」
さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は?
◆小説家になろう様でも掲載中◆
→短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます


その婚約破棄喜んで
空月 若葉
恋愛
婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。
そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。
注意…主人公がちょっと怖いかも(笑)
4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。
完結後、番外編を付け足しました。
カクヨムにも掲載しています。

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる