24 / 28
レノアの章
信仰対象と報復対象
しおりを挟む
初めてアイリスフィア様にお会いした時、私たちは互いに幼い少女だった。
けれど私はその時、彼女の中に女神を見た。
その時に初めてなにかを心から崇めることをしった。
聖女として仕える相手は女神アイテルだが、私個人として祈りを捧げ続けたのはアイリスフィア様にだ。
決して誰にも伝える気はないけれど。
けれど私はアイリ様に女神になって欲しいわけではなかった。
ただ美しい姿と心のまま人間としてお幸せになっていただきたかったのだ。
けれど婚約者に飲まされた毒薬にその清らかな心と体は蝕まれた。
私の肩を強く掴み憎しみに燃えた瞳で呪詛を吐くその姿など誰が想像したただろうか。
あの玲瓏で清廉な公爵令嬢がそのような有様になるなど。私は彼女がそのような状態になったらなるべく人目に付かない場所に連れて行った。
ジルク王子と距離を取れば取るほど彼女の状態は落ち着く。なのでジルク王子は国外追放しようと思った。
恐らく彼に薬を渡したのは海国出身の彼の母サンドラだろう。彼女もその罪を責められることになるだろう。
王家の人間には今回の件の情報は殆ど知らせなかった。教会の大人たちにもだ。
今回の計画は私の独断と暴走でしかない。なぜなら大人たちが関わったら中途半端にされると思ったからだ。
反省も謝罪も責任も望まない。私はジルク王子にこの国にいて欲しくない。アイリ様の婚約者でいて欲しくない。
だから騒ぎを起こすことを嫌がる王や教会が、息子を甘やかす王妃が、弟に押し切られる兄がジルクを王子を庇えない規模の事件を起こす。
そして王子という立場を奪われ、国を追われた人間になった彼からは。
「ふふ」
思わず口から笑みがこぼれる。女神の式典用の白い衣装に身を包んだ自分はいつもより清楚に見えた。
けれどその中身は復讐と策謀でどろどろに煮え滾っている。遠くでジルク王子が無邪気に手を振っているのを無視した。
けれど私はその時、彼女の中に女神を見た。
その時に初めてなにかを心から崇めることをしった。
聖女として仕える相手は女神アイテルだが、私個人として祈りを捧げ続けたのはアイリスフィア様にだ。
決して誰にも伝える気はないけれど。
けれど私はアイリ様に女神になって欲しいわけではなかった。
ただ美しい姿と心のまま人間としてお幸せになっていただきたかったのだ。
けれど婚約者に飲まされた毒薬にその清らかな心と体は蝕まれた。
私の肩を強く掴み憎しみに燃えた瞳で呪詛を吐くその姿など誰が想像したただろうか。
あの玲瓏で清廉な公爵令嬢がそのような有様になるなど。私は彼女がそのような状態になったらなるべく人目に付かない場所に連れて行った。
ジルク王子と距離を取れば取るほど彼女の状態は落ち着く。なのでジルク王子は国外追放しようと思った。
恐らく彼に薬を渡したのは海国出身の彼の母サンドラだろう。彼女もその罪を責められることになるだろう。
王家の人間には今回の件の情報は殆ど知らせなかった。教会の大人たちにもだ。
今回の計画は私の独断と暴走でしかない。なぜなら大人たちが関わったら中途半端にされると思ったからだ。
反省も謝罪も責任も望まない。私はジルク王子にこの国にいて欲しくない。アイリ様の婚約者でいて欲しくない。
だから騒ぎを起こすことを嫌がる王や教会が、息子を甘やかす王妃が、弟に押し切られる兄がジルクを王子を庇えない規模の事件を起こす。
そして王子という立場を奪われ、国を追われた人間になった彼からは。
「ふふ」
思わず口から笑みがこぼれる。女神の式典用の白い衣装に身を包んだ自分はいつもより清楚に見えた。
けれどその中身は復讐と策謀でどろどろに煮え滾っている。遠くでジルク王子が無邪気に手を振っているのを無視した。
24
お気に入りに追加
3,026
あなたにおすすめの小説

帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動
しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。
国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。
「あなた、婚約者がいたの?」
「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」
「最っ低!」
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか
あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。
「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」
突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。
すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。
オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……?
最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意!
「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」
さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は?
◆小説家になろう様でも掲載中◆
→短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

【R15】婚約破棄イベントを無事終えたのに「婚約破棄はなかったことにしてくれ」と言われました
あんころもちです
恋愛
やり直しした人生で無事破滅フラグを回避し婚約破棄を終えた元悪役令嬢
しかし婚約破棄後、元婚約者が部屋を尋ねに来た。

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。


その婚約破棄喜んで
空月 若葉
恋愛
婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。
そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。
注意…主人公がちょっと怖いかも(笑)
4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。
完結後、番外編を付け足しました。
カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる