【完結】嫉妬深いと婚約破棄されましたが私に惚れ薬を飲ませたのはそもそも王子貴方ですよね?

砂礫レキ

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レノアの章

作戦成功

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 当たり前だがジルク王子にこの身を捧げるつもりは毛頭ない。

 だがあの獣が期待してしまう程度の隙は作る。それはリスクのある行為だとわかっていた。

 万が一私がジルク王子に穢されてしまった場合、罰を受けるのは彼だけではない。

 純潔を守り切れなかった私も罰を受け聖女の座を剥奪されるだろう。だが私は行動を止める気はなかった。

 聖女として向こう見ずで軽率な行動かもしれない、だからこそ逆に聖女らしいのかもしれない。

 しかし教会側が望む賢く御しやすい聖女では決してない。私は笑った。

 きっと今生まれて初めて無茶をしている。

 幼い頃に聖女になると決められて、それからずっと周囲の大人たちが望む聖女になるように生きてきて育てられたのに。

 けれどそんなものは聖女でも何でもない、ただの人形だと今の私は思っている。

 私はアイリ様を救いたいし、ジルクに天誅を下したい。それが女神の意思なのかはわからない。

 わからないが私は女神に計画が上手くいことを願った。

 アイリ様ではなくジルク王子に時間と行動を合わせる。そして対面時に彼のこちらに対する傲慢な態度を観察する。

 嫌悪感を表に出してもジルク王子の謎の余裕は変わらない。寧ろ益々楽しそうにさえしている。

 この男は、自分を嫌っている相手を虜にする方法を持っているのだ。そう推測した私は彼の茶会に呼ばれた。

 そしてジルク王子の淹れた紅茶を飲み気づく。ああこれがこの男の自慢の手段なのかと。何か、妙な薬が混ざっている。

 けれど聖女である私に毒物は聞かない。元々効きづらい体質であり、更に耐毒の修行も受けている。 

 けれど、少しだけ効いた振りをする。薬に酔った様子で紅茶の残りをカップから制服の上に零し布地に吸い込ませた。

 そのことに慌てた振りをして私はふらつきながら部屋から出ていく、わざと頬を赤らめて。

 しかし見せない腹の中はこの卑怯な男への怒りで逆に冷え切っていた。

   
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