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アイリスフィアの章
聖女との学生生活
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聖女レノアは学園時代私の一つ下の後輩だった。
彼女は元々アージュ伯爵家の三女で、生まれた時から強い光の魔力に包まれていたと言われている。
そんなレノアと私は子供時代に何回か顔を合わせて話をしたことがある。
その時点で既に彼女はただの愛らしい子供ではなく高貴な妖精のような特別な雰囲気があった。
聖女としての修行をする為伯爵家を出た彼女と私は縁遠くなり、しかしアリシア貴族学園で数年後再開する。
本来、純潔を大切にする聖女が名門とはいえ共学校に通うなどありえない。
けれど彼女は「私が殿方に心を惑わせることは断じてありません」と断言し事実浮ついた噂の一つもなかった。
作法も勉強も完璧で、常に優しい笑みを浮かべるレノアは男女関係なく慕われた。
少女になったリノアは本当に美しくなっていた。真っ白な髪はさらさらと細く。赤い瞳は宝石のような光を放つ。
美しいからこそ軽率に触れることを躊躇われる。私はそんな彼女の髪を梳かして色々な髪型にするのが好きだった。
卒業生たちが去り、部員が自分だけになった読書部にレノアが入部してきた時はお驚いた。
静かな場所で本を読むのが好きだと言う彼女と二人、居心地のいい部室で好きな本を読んで感想を語り合った。
そこには公爵令嬢の立場も、聖女の立場もなかった。ただの仲のいい先輩と後輩の二人だった。
けれどそんな日常にジルク王子が絡み付いてきた。彼はこの国の第二王子で、私婚約したばかりだった。
彼はレノアを「聖女」と呼び私を「女神」と呼んだ、その上で女性二人の間に割り込んで得意げに笑うような人だった。
二人の時間を彼の感性で汚されるのが嫌でジルク王子の前でリノアと話をしたりをしなくなった。
その後、私は婚約者であるジルク王子に校内で絡まれることが増えてうんざりしていた。
確かに彼とは親同士が決めた婚約者だ。いずれは彼の子供を自分は産むのだろう。そう理解している。
けれどそれは結婚した後の話だ。
今でも二人で手をつなぎ風景の綺麗な道を歩く程度なら問題ないが、学生の立場で体を重ねるなんて絶対嫌だった。
そんな私の強い信念はジルクの使った妖しい薬にあっさりと溶かされてぐずぐずになってしまったけれど。
そしてそんな私を心配して近づいてきたレノアにジルクは邪な企みを考えたのかもしれない。
私を放置しレノアに親し気に話しかけるようになったジルク王子に私は強く悋気を焼き、レノアは罵声とともに追い払った。
そのようなことを何回も繰り返した。たまに苛立ったジルク王子に本気で殴られながら。
「あんな女、貴男にふさわしくありませんっ、貴男には、私がっ」
言い切る前に殴られる。けれどレノアへの嫉妬の炎は胸に燃え続けたままだ。
王子は彼女に手を出さないようにして欲しい。レノアがジルクに会わないように校内のスケジュールを確認調整しなければ。
いや、もう王に訴えた方がいいのかもしれない。けれどその為には証拠が足りなかった。
聖女レノアがジルク王子にしつこく言い寄られている証拠がなかった。
だってジルク王子が彼女に絡もうとすれば、薬に操られた私は嫉妬全開でそれを邪魔するに決まっている。
聖女に乗り換えようとしているジルク王子、そんな彼にショックを受け相手の聖女を嫉妬で攻撃する公爵令嬢。
卒業間近な私たちは完全に笑いものだったと思う。
けれど今はもう笑い話ではすまなくなってしまった。
少なくともジルク王子とは今後直接話す機会は皆無になりそうだ。それだけでこころがほっとした。
彼さえいなければ私とレノアはもっと多くの事を学生時代語り合えただろうに。
責める意図で彼のいる場所を睨んだ所、ジルク王子は何を勘違いをしたのかこちらに助けを求めてきた。
彼女は元々アージュ伯爵家の三女で、生まれた時から強い光の魔力に包まれていたと言われている。
そんなレノアと私は子供時代に何回か顔を合わせて話をしたことがある。
その時点で既に彼女はただの愛らしい子供ではなく高貴な妖精のような特別な雰囲気があった。
聖女としての修行をする為伯爵家を出た彼女と私は縁遠くなり、しかしアリシア貴族学園で数年後再開する。
本来、純潔を大切にする聖女が名門とはいえ共学校に通うなどありえない。
けれど彼女は「私が殿方に心を惑わせることは断じてありません」と断言し事実浮ついた噂の一つもなかった。
作法も勉強も完璧で、常に優しい笑みを浮かべるレノアは男女関係なく慕われた。
少女になったリノアは本当に美しくなっていた。真っ白な髪はさらさらと細く。赤い瞳は宝石のような光を放つ。
美しいからこそ軽率に触れることを躊躇われる。私はそんな彼女の髪を梳かして色々な髪型にするのが好きだった。
卒業生たちが去り、部員が自分だけになった読書部にレノアが入部してきた時はお驚いた。
静かな場所で本を読むのが好きだと言う彼女と二人、居心地のいい部室で好きな本を読んで感想を語り合った。
そこには公爵令嬢の立場も、聖女の立場もなかった。ただの仲のいい先輩と後輩の二人だった。
けれどそんな日常にジルク王子が絡み付いてきた。彼はこの国の第二王子で、私婚約したばかりだった。
彼はレノアを「聖女」と呼び私を「女神」と呼んだ、その上で女性二人の間に割り込んで得意げに笑うような人だった。
二人の時間を彼の感性で汚されるのが嫌でジルク王子の前でリノアと話をしたりをしなくなった。
その後、私は婚約者であるジルク王子に校内で絡まれることが増えてうんざりしていた。
確かに彼とは親同士が決めた婚約者だ。いずれは彼の子供を自分は産むのだろう。そう理解している。
けれどそれは結婚した後の話だ。
今でも二人で手をつなぎ風景の綺麗な道を歩く程度なら問題ないが、学生の立場で体を重ねるなんて絶対嫌だった。
そんな私の強い信念はジルクの使った妖しい薬にあっさりと溶かされてぐずぐずになってしまったけれど。
そしてそんな私を心配して近づいてきたレノアにジルクは邪な企みを考えたのかもしれない。
私を放置しレノアに親し気に話しかけるようになったジルク王子に私は強く悋気を焼き、レノアは罵声とともに追い払った。
そのようなことを何回も繰り返した。たまに苛立ったジルク王子に本気で殴られながら。
「あんな女、貴男にふさわしくありませんっ、貴男には、私がっ」
言い切る前に殴られる。けれどレノアへの嫉妬の炎は胸に燃え続けたままだ。
王子は彼女に手を出さないようにして欲しい。レノアがジルクに会わないように校内のスケジュールを確認調整しなければ。
いや、もう王に訴えた方がいいのかもしれない。けれどその為には証拠が足りなかった。
聖女レノアがジルク王子にしつこく言い寄られている証拠がなかった。
だってジルク王子が彼女に絡もうとすれば、薬に操られた私は嫉妬全開でそれを邪魔するに決まっている。
聖女に乗り換えようとしているジルク王子、そんな彼にショックを受け相手の聖女を嫉妬で攻撃する公爵令嬢。
卒業間近な私たちは完全に笑いものだったと思う。
けれど今はもう笑い話ではすまなくなってしまった。
少なくともジルク王子とは今後直接話す機会は皆無になりそうだ。それだけでこころがほっとした。
彼さえいなければ私とレノアはもっと多くの事を学生時代語り合えただろうに。
責める意図で彼のいる場所を睨んだ所、ジルク王子は何を勘違いをしたのかこちらに助けを求めてきた。
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