【完結】嫉妬深いと婚約破棄されましたが私に惚れ薬を飲ませたのはそもそも王子貴方ですよね?

砂礫レキ

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アイリスフィアの章

王家の問題点

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 王妃が倒れたことを区切りにして式典は中止になった。

 けれどその場にいた貴族たちはすぐに解放されることはなかった。

 第二王子がこの国の宗教の象徴である聖女にいかがわしい薬を盛った。

 そのような事が他の貴族や何よりも民に知られれば大騒動になる。王家に不信と批判が集中することは想像に難くない。

 女神を崇めるこの国では王家よりも聖女の人気の方が高い。もっと掘り下げてしまうと現王家はそこまで慕われていない。

 王の後妻であるサンドラ王妃の我が子のみへの寵愛は有名な話だ。その結果第一王子であるグラン様が粗雑に扱われているという噂まで流れている。

 それが事実かはわからない。ただグラン第一王子は寡黙で不器用な印象の男性で、そして弟であるジルク様とは大分年が離れていた。

 血のつながらない母と、腹違いの弟に遠慮し目立たないようにしていた可能性はある。

 一般の家庭なら優しく不憫な兄で終わったのかもしれない。けれど彼らは王族だった。

 グラン王子が受け入れたとしてもサンドラ王妃とジルク王子の増長を国王陛下は諫めなければいけなかったのだ。

 ただ、もう最悪な事態にはなってしまった。


「聖女に毒を飲ますなど、王子の身分でも自害は免れないだろう」

「いやしかし、薬を飲んだというが聖女レノアはいつもどおりの静かなお姿ではないか」

「本当にジルク王子はセイレーンの涙というものを聖女に飲ませたのか?」

「聖女は女神の加護で毒が効かない御体になっている。貴族学校時代に宗教学で習った筈だが?」

「そうだ、そうだったな。しかし効かなかったからといってジルク王子の罪が軽くなるのはおかしかろうよ」


 聖堂から出ることを許されず待機を命じられて貴族たちの話声が聞こえる。まるで学生自体の集会の時のようだ。

 しかし完全に流れが変わってしまった。もうこの場の誰も私のことなど頭に残っていなさそうだ。流石に両親は違うだろうが。

 婚約者である貴族の娘に惚れ薬を飲ませること。

 生涯純潔を定められている聖女に惚れ薬を飲ませ強引に結ばれようとすること。

 並べてみると我がことながら、前者が弱いと感じる。

 もし私がセイレーンの涙の被害を訴えてみても婚約者同士の痴話喧嘩で流されて終わった可能性もある。

 きっとサンドラ王妃ならそうさせるだろう。私の方に問題があるとお叱りがあるかもしれない。

 けれど流石に今の現状でそのようにはならないだろう。

 神官たちに囲まれ国王陛下と何事か話をしている聖女の姿を見つめる。

 すると急に彼女がこちらを振り向いて微笑んだ。

 唇の動きで「大丈夫ですよ」と言われる。

 本当に女神のようだと思った。


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