前世の記憶を取り戻したら貴男が好きじゃなくなりました

砂礫レキ

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七十一話 巫女姫の説法

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 私が待ち望んでいた赤髪の麗人が女子教室に訪れることは無かった。

 結果、放課後になるまで私は休み時間が来る度に隣国の姫に付き纏われることになった。

 やはりアルとロゼ以外に友人を増やしておくべきだったのか。

 不幸中の幸いというべきはルイーダ姫が他の女生徒に慕われている様子がないことだった。

 あそこまで自国の信仰を押し付けてくる相手なら避けて当然かもしれないが。

 しかしそれを誤魔化す様に女従者がルイーダ王女に騒がしく追従するのにはうんざりした。

 主人と違って正面切って私を馬鹿にすることはないが、こちらを見ながらひそひそと魔女がどうとか呟いてくる。わざとらしいことだ。

 こう言った手合いには無礼な真似は止めるようにと言っても無駄だ。それこそ不快に思ったという理由だけで処罰できる権限がなければ。

 ルイーダ王女は上から目線で話しかけてくるが、彼女の話を理解するのは難しい。


「私がこの国に使わされたのは私の祈りと真心でアリオス殿下をお救いし、ルーン国を救う為なのです」

「彼の心は恐らく長年続く魔女の呪縛で荒れ果て頑なになっています、けれど邪悪な力は巫女の聖なる力に勝つことは出来ません」

「その髪色と瞳はこの国の伝説の聖女と似ているという話ですがそもそもその聖女は本当に正しき存在だったのでしょうか?」

「偶然かもしれませんが我が国では寧ろ……」


 こちらの返答も待たず一方的に話し続けて授業が始まる前に席に戻っていく。声は美しいがどこかおぞましさを感じた。

 前世で教会に買われた私が言うのも妙だが宗教色が強すぎる。目の輝きがおかしいのだ。興味を引く単語もあるが会話したくないと感じさせる。

 しかも私がサマリアの国教に熟知していること前提で話続けるから困る。知らないと答えれば答えたで面倒くさいことになる気がする。
 
 こういう手合いの話は自分に損得が発生しそうな部分にだけ気を付けて聞き流すしかない。

 博識なロゼマリアが隣にいてくれれば興味深く聞くこともできたかもしれないが、無い物ねだりをしても仕方がなかった。

 しかし同じクラスとはいえ授業が終わる度によく飽きず私の元へ来るものだと感心してしまう。

 ルイーダ王女は一方的に話し続けるだけだし、合いの手は従者たちが入れるから私は相槌さえしていない。

 次第に最初は感じていた緊張感と敵意も徐々に薄れてきて、面倒臭さと鬱陶しいという感情が前面に出てくる。 

 その為つい口が滑ってしまった。


「そろそろ壁に向かって話してくれないかしら」


 女子教室内の温度が下がったのを感じた。



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