72 / 74
七十一話 巫女姫の説法
しおりを挟む
私が待ち望んでいた赤髪の麗人が女子教室に訪れることは無かった。
結果、放課後になるまで私は休み時間が来る度に隣国の姫に付き纏われることになった。
やはりアルとロゼ以外に友人を増やしておくべきだったのか。
不幸中の幸いというべきはルイーダ姫が他の女生徒に慕われている様子がないことだった。
あそこまで自国の信仰を押し付けてくる相手なら避けて当然かもしれないが。
しかしそれを誤魔化す様に女従者がルイーダ王女に騒がしく追従するのにはうんざりした。
主人と違って正面切って私を馬鹿にすることはないが、こちらを見ながらひそひそと魔女がどうとか呟いてくる。わざとらしいことだ。
こう言った手合いには無礼な真似は止めるようにと言っても無駄だ。それこそ不快に思ったという理由だけで処罰できる権限がなければ。
ルイーダ王女は上から目線で話しかけてくるが、彼女の話を理解するのは難しい。
「私がこの国に使わされたのは私の祈りと真心でアリオス殿下をお救いし、ルーン国を救う為なのです」
「彼の心は恐らく長年続く魔女の呪縛で荒れ果て頑なになっています、けれど邪悪な力は巫女の聖なる力に勝つことは出来ません」
「その髪色と瞳はこの国の伝説の聖女と似ているという話ですがそもそもその聖女は本当に正しき存在だったのでしょうか?」
「偶然かもしれませんが我が国では寧ろ……」
こちらの返答も待たず一方的に話し続けて授業が始まる前に席に戻っていく。声は美しいがどこかおぞましさを感じた。
前世で教会に買われた私が言うのも妙だが宗教色が強すぎる。目の輝きがおかしいのだ。興味を引く単語もあるが会話したくないと感じさせる。
しかも私がサマリアの国教に熟知していること前提で話続けるから困る。知らないと答えれば答えたで面倒くさいことになる気がする。
こういう手合いの話は自分に損得が発生しそうな部分にだけ気を付けて聞き流すしかない。
博識なロゼマリアが隣にいてくれれば興味深く聞くこともできたかもしれないが、無い物ねだりをしても仕方がなかった。
しかし同じクラスとはいえ授業が終わる度によく飽きず私の元へ来るものだと感心してしまう。
ルイーダ王女は一方的に話し続けるだけだし、合いの手は従者たちが入れるから私は相槌さえしていない。
次第に最初は感じていた緊張感と敵意も徐々に薄れてきて、面倒臭さと鬱陶しいという感情が前面に出てくる。
その為つい口が滑ってしまった。
「そろそろ壁に向かって話してくれないかしら」
女子教室内の温度が下がったのを感じた。
結果、放課後になるまで私は休み時間が来る度に隣国の姫に付き纏われることになった。
やはりアルとロゼ以外に友人を増やしておくべきだったのか。
不幸中の幸いというべきはルイーダ姫が他の女生徒に慕われている様子がないことだった。
あそこまで自国の信仰を押し付けてくる相手なら避けて当然かもしれないが。
しかしそれを誤魔化す様に女従者がルイーダ王女に騒がしく追従するのにはうんざりした。
主人と違って正面切って私を馬鹿にすることはないが、こちらを見ながらひそひそと魔女がどうとか呟いてくる。わざとらしいことだ。
こう言った手合いには無礼な真似は止めるようにと言っても無駄だ。それこそ不快に思ったという理由だけで処罰できる権限がなければ。
ルイーダ王女は上から目線で話しかけてくるが、彼女の話を理解するのは難しい。
「私がこの国に使わされたのは私の祈りと真心でアリオス殿下をお救いし、ルーン国を救う為なのです」
「彼の心は恐らく長年続く魔女の呪縛で荒れ果て頑なになっています、けれど邪悪な力は巫女の聖なる力に勝つことは出来ません」
「その髪色と瞳はこの国の伝説の聖女と似ているという話ですがそもそもその聖女は本当に正しき存在だったのでしょうか?」
「偶然かもしれませんが我が国では寧ろ……」
こちらの返答も待たず一方的に話し続けて授業が始まる前に席に戻っていく。声は美しいがどこかおぞましさを感じた。
前世で教会に買われた私が言うのも妙だが宗教色が強すぎる。目の輝きがおかしいのだ。興味を引く単語もあるが会話したくないと感じさせる。
しかも私がサマリアの国教に熟知していること前提で話続けるから困る。知らないと答えれば答えたで面倒くさいことになる気がする。
こういう手合いの話は自分に損得が発生しそうな部分にだけ気を付けて聞き流すしかない。
博識なロゼマリアが隣にいてくれれば興味深く聞くこともできたかもしれないが、無い物ねだりをしても仕方がなかった。
しかし同じクラスとはいえ授業が終わる度によく飽きず私の元へ来るものだと感心してしまう。
ルイーダ王女は一方的に話し続けるだけだし、合いの手は従者たちが入れるから私は相槌さえしていない。
次第に最初は感じていた緊張感と敵意も徐々に薄れてきて、面倒臭さと鬱陶しいという感情が前面に出てくる。
その為つい口が滑ってしまった。
「そろそろ壁に向かって話してくれないかしら」
女子教室内の温度が下がったのを感じた。
13
お気に入りに追加
4,715
あなたにおすすめの小説

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜
八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」
侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。
その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。
フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。
そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。
そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。
死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて……
※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません
おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。
ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。
さらっとハッピーエンド。
ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる