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六十九話 好戦的で大袈裟な姫君
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久しぶりに屋敷に帰ってきた弟と色々あったりしたが、私は取り合えず登校してみた。
アルとロゼに会って話をしたくて堪らなかったのだ。
しかし一週間寝たきりで目覚めた翌日すぐ学校という訳にはいかなかった。
体力や食事の関係もあり元通り通学できるまで眠っていた期間も含め二週間程経ってしまった。
そしてその間に学園内では一つの変化が起きていた。
アリオス殿下の新しい婚約者、ルイーダ王女が留学生としてやってきたのである。
随分と行動的な女性だなと思ったが、そもそも婚約にこぎつけるまでの過程を思い出し納得する。
ルイーダ・エル・サマリア。艶やかで波打つ黒髪と濃く青い瞳はエキゾチックさを感じさせる美女だ。
女性にしては長身で豊かな胸部は制服越しでもわかる。彼女は学生でありながら既に完成された美貌を持っていた。
実際化粧が濃いのもあり年上にしか見えない。
化粧については文化の違いもあるかもしれないが彼女が美人だという認識はこの国でも有効だ。
ルイーダ王女がアリオス殿下の婚約者でなければ男子学生たちは血眼になって彼女を口説いていたかもしれない。
しかし彼女はなりたてといえこの国の王子の婚約者で
「貴男がアリオス様の元婚約者?随分貧相な体をしているのね。しかも病弱だとか。そんな体では世継ぎを産むなんて無理ね」
更に初対面かつ隣国の公爵令嬢である私に正面から喧嘩を売る程、厄介な性格をしていた。
これはもしかしなくても、女性版アリオス殿下では?
そんなことを思いながら私は教室の扉の前に立ち塞がる彼女を見つめる。
二百年前なら邪魔だと蹴り飛ばしていただろうか。身分の高い相手だから単純に無視して踵を返していただろうか。
私が対応に迷い無言でいる間にルイーダ王女は私を気弱な人間だと判断したようだった。
「勘違いしないで頂戴ね、私弱い者虐めをする趣味は無くてよ。ただ元婚約者様に挨拶をしようと思っただけなの」
「気が合いますね。私も弱い者虐めは嫌いです。挨拶も今頂けたものだけで結構ですわ」
だからそこをさっさと退いて私を女子教室の中に入れて貰えないだろうか。
私がそう思っているとルイーダ王女は大袈裟に自らの口元に手を当てて嘆いた。
「まあ、なんて刺々しい言葉遣い!……私はただシュタイト公爵令嬢に挨拶をしただけだというのに!!」
「姫様、どうされたのですか!」
「姫様、悲しまないでください!」
王女本人の体に隠れてよく見えないが教室の中には彼女の従者が数人いるようだ。益々自分の席に辿り着くのが困難になる。
お供がいる分だけ、ある意味アリオス殿下より悪質かもしれない。そんなことを考えていた罰が当たったのだろうか。
急に背後から肩を掴まれる。
「やっと見つけたぞ、エミア・シュタイト……」
振り返らなくても分かる。前の姫、後ろの王子。
私の背後には怒りを露にしたアリオス殿下が立っていた。
---
第14回恋愛小説大賞 に参加しています。
宜しければ投票頂けると大変嬉しいです。
アルとロゼに会って話をしたくて堪らなかったのだ。
しかし一週間寝たきりで目覚めた翌日すぐ学校という訳にはいかなかった。
体力や食事の関係もあり元通り通学できるまで眠っていた期間も含め二週間程経ってしまった。
そしてその間に学園内では一つの変化が起きていた。
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随分と行動的な女性だなと思ったが、そもそも婚約にこぎつけるまでの過程を思い出し納得する。
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女性にしては長身で豊かな胸部は制服越しでもわかる。彼女は学生でありながら既に完成された美貌を持っていた。
実際化粧が濃いのもあり年上にしか見えない。
化粧については文化の違いもあるかもしれないが彼女が美人だという認識はこの国でも有効だ。
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しかし彼女はなりたてといえこの国の王子の婚約者で
「貴男がアリオス様の元婚約者?随分貧相な体をしているのね。しかも病弱だとか。そんな体では世継ぎを産むなんて無理ね」
更に初対面かつ隣国の公爵令嬢である私に正面から喧嘩を売る程、厄介な性格をしていた。
これはもしかしなくても、女性版アリオス殿下では?
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私が対応に迷い無言でいる間にルイーダ王女は私を気弱な人間だと判断したようだった。
「勘違いしないで頂戴ね、私弱い者虐めをする趣味は無くてよ。ただ元婚約者様に挨拶をしようと思っただけなの」
「気が合いますね。私も弱い者虐めは嫌いです。挨拶も今頂けたものだけで結構ですわ」
だからそこをさっさと退いて私を女子教室の中に入れて貰えないだろうか。
私がそう思っているとルイーダ王女は大袈裟に自らの口元に手を当てて嘆いた。
「まあ、なんて刺々しい言葉遣い!……私はただシュタイト公爵令嬢に挨拶をしただけだというのに!!」
「姫様、どうされたのですか!」
「姫様、悲しまないでください!」
王女本人の体に隠れてよく見えないが教室の中には彼女の従者が数人いるようだ。益々自分の席に辿り着くのが困難になる。
お供がいる分だけ、ある意味アリオス殿下より悪質かもしれない。そんなことを考えていた罰が当たったのだろうか。
急に背後から肩を掴まれる。
「やっと見つけたぞ、エミア・シュタイト……」
振り返らなくても分かる。前の姫、後ろの王子。
私の背後には怒りを露にしたアリオス殿下が立っていた。
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