前世の記憶を取り戻したら貴男が好きじゃなくなりました

砂礫レキ

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六十七話 急展開

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 倒れた理由は正直自分にもわからない。

 急に飛行術や光魔法を使ったことで体に負担がかかったのかもしれない。

 それとも鏡に映ったエミアの偽物が私に何かしていったのかもしれない。でも全部推測だ。

 はっきりとわかるのは私が一週間も意識不明になったことで、周囲にとても心配をかけてしまったことだけだ。




 私が目覚めた事を聞いて部屋を訪れたフレイ父様は彼の方が病人のようだった。

 目の下には濃い隈が出来ていて、顔色も酷く悪かった。

 それでも私が起きていることを自分の目で確認した時の笑顔は酷く暖かで安心できるものだった。

 心配をかけたことを謝ろうとしたが声が上手く出てこないことに気づき戸惑う。

 それを察した父により私は自分が一週間ひたすら眠り続けていたことを初めて知ったのだ。流石に驚いた。

 持ってきてもらった手鏡に映った自分は痩せていた。やつれたといった方が正しいかもしれない。

 食事は当然出来ないから、牛乳や果汁などを使って延命してくれていたらしい。

 ただ死を覚悟されていたのは事実のようで、だからこそ私が目覚めた時父はあんなにも喜んだのだろう。

 正直死ぬような目に遭ったという意識は私には薄かった。

 確かに部屋に不審者は出たが鏡越しの対面で直接何かされた記憶はない。

 ただ自分が無意識に光魔法を繰り出したことから考えて危険な人物であることは間違いないだろう。

 アリオス殿下の殺害を示唆する発言をしていたし。

 そうだ、危険というなら彼の方だろう。

 私は声枯れで上手く言葉が出てこないことに苛立ちながらも父にそのことを伝えようとした。

 ただフレイ父様は私の口から彼の名前が出た途端表情を険しい物に変えた。そこに浮かんでいたのは怒りだった。

 
「あんな男の名前を口にするのは止めなさい」


 殿下のことは忘れて元気になることだけを考えるんだ。そう一息に言って父は部屋から出て行った。

 そのことに戸惑っていると、室内にいたメイドが表情を暗くしていた。

 確か彼女は私が目覚めたことに真っ先に気づき父に知らせに言ってくれた人だ。

 先程までは疲れを見せながらも私が起きたことを喜んでくれていたのに。

 私は彼女の目をじっと見る。そして「おしえて」と言葉を絞り出した。

 メイドは散々迷った後にアリオス殿下が隣国の姫と婚約したことを私に伝えた。

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