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六十二話 帰宅

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 下校を告げる鐘が聞こえたなら帰宅しなければならない。

 特に私は寮暮らしの二人と違って使用人に朝と夕送迎をして貰っている。

 部活を始めてからは帰宅予定時間を遅くして貰っているとはいえ、この時間が限度だろう。


「じゃあ今日はミーヤを送って解散にするか」


 あっさりとロゼが告げて私たち三人は荷物を持って玄関まで歩いていく。彼女からの呼び名が微妙に変わっていたが流すことにした。

 時間のせいか他の生徒たちとは殆ど擦れ違わない。

 目撃されてもロゼとアルは双子で、私とロゼは友人だ。変な勘繰りはされないだろう。

 それでも疑われたならその時は言葉で説明すればいい。

 アリオス殿下の場合は何を言っても納得しなさそうだが、彼に理解を求めるだけ無駄だろう。

 そういえば彼は当たり前だが王族だ。しかも今のところ次期国王になる可能性が高い。

 もしかして彼ならば、竜の谷が出来た理由などについて知っているのではないだろうか。

 だが私は彼に対し一貫して刺々しい態度を取っているし何より婚約解消を申し入れた側である。

 教えてと頼んだ所で素直に答えてくれる筈がない。


「エミー、変な事を考えないようにね」


 まるで私の考えが見えるかのようにアルから言葉で釘を刺される。

 転生後のアルは前世よりも切れ者の印象が強い気がする。

 いや騎士団長時代も決して腕っぷしだけが強かった訳ではないけれども。

 寧ろ力というか魔力任せなのは私の方だった。

 ただ前世では子供の頃からの付き合いだったのでお互いの未熟な部分を知っていたのだ。

 今の彼は初めて会った時から大人みたいな顔をしている。

 私も最初から過去の記憶を持ったままで生まれてればそんな顔つきをしていたのだろうか。

 でもそんなこと今更考えても意味がない。


「別に変な事なんて考えていないわ。竜の谷に一度行ってみたいなと思っただけ」

「いいね。今度の休みに遊びに来るかい?」


 私の言葉にロゼが好意的な返事をくれる。

 アルが溜息を吐いて、日帰りで行ける場所じゃないと突っ込みを入れた。


「なら、纏まった休みの時に招待すればいいじゃないか。今度スケジューリングしよう」


 ああ、別にお前はついてこなくていいぞ愚弟。そう澄ました顔で毒を吐くロゼを私は軽く窘めた。

 もし竜の谷に行くのならアルも一緒が良い。

 私の言葉にロゼが「仲が良くて妬けてしまうな」とおどけて呟いた。
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