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四十七話 兄弟愛
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「私は確かに子供の頃から賢かったけれど、それは悟っているとは又違うからね」
セリス殿下と同類という訳ではない。そうロゼは淡々と話す。
それでも当時の彼女が同じ年の女子より大人びていたことはわかる。
だが、ロゼが言う通りそういうことではないのだろう。
「王子というより聖職者と話しているみたいだったよ。ただ弟のことは溺愛しているようだった」
そこは年相応だったかな。懐かしそうな表情で婚約者候補だった少女は語った。
セリス殿下の弟と言えばアリオス殿下しかいない。
だが溺愛されていたという彼が兄を慕っている様子は感じられなかった。
少なくともセリス殿下の死に対し悲しんでいるようには見えなかった。
王族としてそういう感情を人に見せるのを嫌っているのかもしれないが、それでもだ。
私がそう言うとロゼは肩を竦めた。
「愛したからってその相手から愛されるとは限らない」
そうだろう?
彼女の言葉の意味を理解した瞬間、胸に刃物を突き立てられたように痛んだ。
アリオス殿下を一方的に愛し続けたエミアの悲しみを思い出したのだ。
「確かに、そうね。忘れていたわ」
「ロゼマリア!」
アルが怒りを孕んだ声で姉の名を呼ぶ。私は彼を視線で制した。
彼女は当たり前のことを語ったに過ぎない。
それに衝撃を受けたことで気づいたことがある。
いやエミアの記憶の一部を手に入れたという感じか。
「アリオス殿下はセリス殿下に嫉妬していた。自分よりも兄の方が親に愛されていると気づいた日から」
今より少し幼い、まだ子供の面影を残す少年。
その日が来るまでは怒りっぽくて我儘だったがごく稀に笑顔を見せることもあった。
エミアのことは婚約者というより子分扱いだったけれど。
彼のあの時の涙も怒りも、言葉も当時のエミアには理解できなかった。
けれど今の私ならわかる。
「……もし二人の内どちらかが死ななければいけないなら、皆自分を選ぶんだって」
昔アリオス殿下が一度だけエミアに弱音を吐き出したのよ。
浮かんだ光景を姉弟に伝える。
ただ、その時縋られた彼女はどう返したのだろうか。
それだけが上手く思い出せなかった。
セリス殿下と同類という訳ではない。そうロゼは淡々と話す。
それでも当時の彼女が同じ年の女子より大人びていたことはわかる。
だが、ロゼが言う通りそういうことではないのだろう。
「王子というより聖職者と話しているみたいだったよ。ただ弟のことは溺愛しているようだった」
そこは年相応だったかな。懐かしそうな表情で婚約者候補だった少女は語った。
セリス殿下の弟と言えばアリオス殿下しかいない。
だが溺愛されていたという彼が兄を慕っている様子は感じられなかった。
少なくともセリス殿下の死に対し悲しんでいるようには見えなかった。
王族としてそういう感情を人に見せるのを嫌っているのかもしれないが、それでもだ。
私がそう言うとロゼは肩を竦めた。
「愛したからってその相手から愛されるとは限らない」
そうだろう?
彼女の言葉の意味を理解した瞬間、胸に刃物を突き立てられたように痛んだ。
アリオス殿下を一方的に愛し続けたエミアの悲しみを思い出したのだ。
「確かに、そうね。忘れていたわ」
「ロゼマリア!」
アルが怒りを孕んだ声で姉の名を呼ぶ。私は彼を視線で制した。
彼女は当たり前のことを語ったに過ぎない。
それに衝撃を受けたことで気づいたことがある。
いやエミアの記憶の一部を手に入れたという感じか。
「アリオス殿下はセリス殿下に嫉妬していた。自分よりも兄の方が親に愛されていると気づいた日から」
今より少し幼い、まだ子供の面影を残す少年。
その日が来るまでは怒りっぽくて我儘だったがごく稀に笑顔を見せることもあった。
エミアのことは婚約者というより子分扱いだったけれど。
彼のあの時の涙も怒りも、言葉も当時のエミアには理解できなかった。
けれど今の私ならわかる。
「……もし二人の内どちらかが死ななければいけないなら、皆自分を選ぶんだって」
昔アリオス殿下が一度だけエミアに弱音を吐き出したのよ。
浮かんだ光景を姉弟に伝える。
ただ、その時縋られた彼女はどう返したのだろうか。
それだけが上手く思い出せなかった。
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