前世の記憶を取り戻したら貴男が好きじゃなくなりました

砂礫レキ

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二十八話 優等生の本性

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『これは勅命だ。受けねばお前もお前が養っている孤児どもも死ぬぞ』

『何を勘違いしてる?聖女と呼ばれ図に乗ったか? お前は選ぶ側ではない』

『お前を崇める下民どもを邪教者として吊るされたいのか?』




 過去に言われたおぞましい言葉の数々が脳裏に浮かんだ。そしてその瞬間、少し離れた場所で鈍い音が聞こえた。

 続いて小さくない悲鳴が耳に届き私は意識をアルたちに再度向けた。

 
「うげっ!」

「……勘違いしてくれるなよ」


 絡んできた男子生徒の一人を壁に叩き付けアルは冷たく吐き捨てる。

 転生後の姿では初めて見る彼の暴力的な行為に私の心はざわめいた。

 涼し気な顔で自分と体格の違わない相手を腕一本で押さえ込んでいる。

 流石元騎士というべきか、大人げないと感じるほどに男子生徒との力量差は圧倒的だった。


「おっ、お前俺たちを誰だと」

「君たちのことは知っているさ、アルナー子爵の次男にゲイツ男爵家の三男。……王子だというのに取り巻きがこの程度なのはある意味安心していたんだけれどね」


 他の貴族たちの判断能力に。そう呟きながら緑色の瞳で男子生徒たちを彼は見比べた。

 逆に君たちは僕の父親が誰かわかっているのか。そう声だけは淡々とアルはアリオス殿下の子分たちに聞く。

 二人は顔を見合わせた後、すぐ馬鹿にするような表情を浮かべた。ある意味大物かもしれない。


「誰って、田舎者の辺境伯だろ!」

「そうだ、領地に引きこもって王にも滅多に顔を見せない不敬者だって殿下が仰ってたぜ」

「……あの陛下相手にその無礼が許される人間なのだと、そこまで考えられないのは本当に哀れだな」


 君たちがその頭の悪さで処刑されないよう、この国の貴族史について講義してあげるよ。

 アルはにっこりと笑って、もう一人の男子生徒の襟首も掴んだ。

 そして二人を軽々と引きずってどこかへ消えていく。その最中急に振り返ると私にウィンクをした。

 あのアルはアルバートじゃなくて、アルファード、鬼の騎士団長の方のアルだった。私はアリオス殿下の取り巻きたちの末路について祈った。

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