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二十五話 試験の思い出

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 アル特製ハーブテイーは泥水の方が飲みやすい味だった。
 
 しかしその強烈な味と謎の薬効によって確かに目が冴えて眠気が霧散する。

 私は彼から茶葉を分けて貰い睡眠時間を削って教科書を読み漁った。

 そして次の日の放課後に部室でアルにわからなかった部分を教えて貰うということを繰り返していた。

 学院の行事や慣習についても並行して学んだ。


「常識部分は兎も角、学業はそこまで頑張らなくてもいいと思うけれど」


 シュタイト嬢は元々成績が良くなかったわけだし。

 そうアルは私の勉強を見てくれながら言う。

 私は参考書に目を通しながら答えた。 


「エミアの成績が落ちたのはアリオス殿下のせいだわ」

「なんだって?」

「入学して初めての試験で彼より点数が上だった時に怒られて気に病んだのよ」

「……惨めな男だな」


 軽蔑を隠しもせずにアルは吐き捨てた。私もそれに頷いて同意する。

 自室で、彼女が使っていた辞書や参考書に触れることでエミヤの記憶が浮かんだ。

 それは勉強を嫌がるのではなく、勉強をすることで婚約者に嫌われたくないという気持ちだった。


「女の癖に男を下すな、お前は婚約者に恥をかかせるのか」


 そう試験結果が張り出された時にアリオス殿下に言われた言葉がエミアの心にはナイフのように突き刺さっていた。

 彼女は愛する人を怒らせて傷ついていたが、言われたのが私だったら呆れてアリオス殿下を内心軽蔑しまくったただろう。

 言葉に出して嫌味を言ったかもしれない。


「絶対次の試験ではあの男に圧勝してやるわ。もう婚約者じゃありませんし?」   
  
「それは難しくはないと思うけれど……程々にね」


 徹夜もアリオス殿下を挑発するのも。そうアルに窘められながら私は勉強に燃えていた。

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