26 / 74
二十五話 試験の思い出
しおりを挟む
アル特製ハーブテイーは泥水の方が飲みやすい味だった。
しかしその強烈な味と謎の薬効によって確かに目が冴えて眠気が霧散する。
私は彼から茶葉を分けて貰い睡眠時間を削って教科書を読み漁った。
そして次の日の放課後に部室でアルにわからなかった部分を教えて貰うということを繰り返していた。
学院の行事や慣習についても並行して学んだ。
「常識部分は兎も角、学業はそこまで頑張らなくてもいいと思うけれど」
シュタイト嬢は元々成績が良くなかったわけだし。
そうアルは私の勉強を見てくれながら言う。
私は参考書に目を通しながら答えた。
「エミアの成績が落ちたのはアリオス殿下のせいだわ」
「なんだって?」
「入学して初めての試験で彼より点数が上だった時に怒られて気に病んだのよ」
「……惨めな男だな」
軽蔑を隠しもせずにアルは吐き捨てた。私もそれに頷いて同意する。
自室で、彼女が使っていた辞書や参考書に触れることでエミヤの記憶が浮かんだ。
それは勉強を嫌がるのではなく、勉強をすることで婚約者に嫌われたくないという気持ちだった。
「女の癖に男を下すな、お前は婚約者に恥をかかせるのか」
そう試験結果が張り出された時にアリオス殿下に言われた言葉がエミアの心にはナイフのように突き刺さっていた。
彼女は愛する人を怒らせて傷ついていたが、言われたのが私だったら呆れてアリオス殿下を内心軽蔑しまくったただろう。
言葉に出して嫌味を言ったかもしれない。
「絶対次の試験ではあの男に圧勝してやるわ。もう婚約者じゃありませんし?」
「それは難しくはないと思うけれど……程々にね」
徹夜もアリオス殿下を挑発するのも。そうアルに窘められながら私は勉強に燃えていた。
しかしその強烈な味と謎の薬効によって確かに目が冴えて眠気が霧散する。
私は彼から茶葉を分けて貰い睡眠時間を削って教科書を読み漁った。
そして次の日の放課後に部室でアルにわからなかった部分を教えて貰うということを繰り返していた。
学院の行事や慣習についても並行して学んだ。
「常識部分は兎も角、学業はそこまで頑張らなくてもいいと思うけれど」
シュタイト嬢は元々成績が良くなかったわけだし。
そうアルは私の勉強を見てくれながら言う。
私は参考書に目を通しながら答えた。
「エミアの成績が落ちたのはアリオス殿下のせいだわ」
「なんだって?」
「入学して初めての試験で彼より点数が上だった時に怒られて気に病んだのよ」
「……惨めな男だな」
軽蔑を隠しもせずにアルは吐き捨てた。私もそれに頷いて同意する。
自室で、彼女が使っていた辞書や参考書に触れることでエミヤの記憶が浮かんだ。
それは勉強を嫌がるのではなく、勉強をすることで婚約者に嫌われたくないという気持ちだった。
「女の癖に男を下すな、お前は婚約者に恥をかかせるのか」
そう試験結果が張り出された時にアリオス殿下に言われた言葉がエミアの心にはナイフのように突き刺さっていた。
彼女は愛する人を怒らせて傷ついていたが、言われたのが私だったら呆れてアリオス殿下を内心軽蔑しまくったただろう。
言葉に出して嫌味を言ったかもしれない。
「絶対次の試験ではあの男に圧勝してやるわ。もう婚約者じゃありませんし?」
「それは難しくはないと思うけれど……程々にね」
徹夜もアリオス殿下を挑発するのも。そうアルに窘められながら私は勉強に燃えていた。
44
お気に入りに追加
4,726
あなたにおすすめの小説

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~
juice
ファンタジー
過去に名家を誇った辺境貴族の生まれで貴族の三女として生まれたミラ。
しかし、才能に嫉妬した兄や姉に虐げられて、ついに家を追い出されてしまった。
彼女は森で草を食べて生き抜き、その時に食べた草がただの草ではなく、ポーションの原料だった。そうとは知らず高級な薬草を食べまくった結果、体にも異変が……。
知らないうちに高価な材料を集めていたことから、冒険者兼薬師見習いを始めるミラ。
新しい街で新しい生活を始めることになるのだが――。
新生活の中で、兄姉たちの嘘が次々と暴かれることに。
そして、聖女にまつわる、実家の兄姉が隠したとんでもない事実を知ることになる。
加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました
黎
ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。
そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。
家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。
*短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月
りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。
1話だいたい1500字くらいを想定してます。
1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。
更新は不定期。
完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。
恋愛とファンタジーの中間のような話です。
主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

領地運営は私抜きでどうぞ~もう勝手におやりください~
ネコ
恋愛
伯爵領を切り盛りするロザリンは、優秀すぎるがゆえに夫から嫉妬され、冷たい仕打ちばかり受けていた。ついに“才能は認めるが愛してはいない”と告げられ離縁を迫られたロザリンは、意外なほどあっさり了承する。すべての管理記録と書類は完璧に自分の下へ置いたまま。この領地を回していたのは誰か、あなたたちが思い知る時が来るでしょう。

愛されない皇子妃、あっさり離宮に引きこもる ~皇都が絶望的だけど、今さら泣きついてきても知りません~
ネコ
恋愛
帝国の第二皇子アシュレイに嫁いだ侯爵令嬢クリスティナ。だがアシュレイは他国の姫と密会を繰り返し、クリスティナを悪女と糾弾して冷遇する。ある日、「彼女を皇妃にするため離縁してくれ」と言われたクリスティナは、あっさりと離宮へ引きこもる道を選ぶ。ところが皇都では不可解な問題が多発し、次第に名ばかり呼ばれるのはクリスティナ。彼女を手放したアシュレイや周囲は、ようやくその存在の大きさに気づくが、今さら彼女は戻ってくれそうもなく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる