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二十一話 過去との再会

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「アルファード・ウェイン……? 貴方、もしかして泣き虫アルなの?!」

「……予想通りの正体で嬉しいけど、相変わらず口が悪いなエミーは」


 まさか二百年後の世界で再びその名を聞くとは思わなかった。しかも本人から。

 騎士団長アルファードとは前世で王にこき使われる者繋がりで仲が良かった。

 同僚のような戦友のような関係だった。

 まさか再会できるなんて。私は遠慮なしに彼をべたべたと触った。

 最後に会った時よりも若いし体が細い。身長も低い。子供だ。

 私がそう言うとそれは君も同じだろうと返された。確かにそれはそうだ。


「でもやっぱり顔が違うわね。全く似ていない訳でもないけれど、親戚って感じ」

「転生して別人に生まれ変わったからね。……君と同じように前世の記憶は残っていたけれど」


 君にも当然残っているんだよね?

 確かめるように言われて私は頷く。アルは疲れた顔をしながら「よかったよ」とだけ言った。

 ソファーを勧められて対面に座る。


「そうなると僕の事を何一つ知らないシュタイト令嬢はエミーの双子の妹か姉なのかい?そもそも君を校内で見たのは初めてだけれど」

「ちょっと待ってアル、一から話すから……」

 私は彼の推理を止める。


「私別に私は双子として転生したわけじゃないの。ただ一つの体に魂が二つあったというか分けたというか……」


 転生した赤子の中に前世の自分が丸々残っていた。だから魂を分離させた。聖女の記憶持ちの魂は厳重に封じて隠した。それが私だ。
 そして何も知らない魂はエミアと名付けられて両親に可愛がられながら公爵令嬢として育っていった。
 今は色々あってエミアが肉体を放棄しているから自分が動かしている。そう説明するとアルは砂利を噛んだような顔をして考え込んだ。


「何でわざわざそんな面倒くさいことしたんだ?」

 ぽつりと聞かれ今度は私が答えに困る。折角生まれ変われたのだから過去の自分なんて邪魔なだけだけろう思ったからそうしたのだが。

 前世の記憶を持ちながら生きることを当たり前に選択したらしいアルに話すには気まずい考えではある。

 けれど私の態度に察したのはアルは眼鏡を指で直しながら再度自分から話し始めた。


「……そもそも前世の記憶があっても別に良くないか?魂を二つにわけるなんて聖女だから出来ることだからある意味凄いと思うけれど」

「その時の私には不要だと思えたのよ、アル。新しい自分は何も知らず自由な生き方をして欲しかった」


 貴族の家に生まれた以上それは難しい願いだったのかもしれないけれど。

 私の答えが不満だったのかアルは茶を淹れてくるとソファーから立ち上がった。

「違うねエミー。君は自分の前世にうんざりしていたんだ。また聖女扱いされてこき使われる人生が心底嫌だったのさ」

 その為に魂を分離させるまでした。台所へ続くらしい扉に手をかけながらアルファードが言う。


「でも安心していい。僕はアルファードのままだが騎士にはならない。君もエミヤのままで聖女以外になるといいさ」


 前世からの縁だ。手助け程度はしてあげるよ。

 私のことをよく知る長い付き合いの彼。その言葉に私の涙腺は急激に崩壊した。
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