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十五話 波乱の学校生活(1)
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イルミナージュ高等学院とはエミアやアリオス殿下が通っている王族貴族専門の教育機関だ。
前世には存在しなかったし王族と貴族が同じ場所で共同生活を送るということに正直エミヤとしては違和感がある。
『若い時期を共に過ごすことで絆が生まれ各々が協力して国を盛り立てていけるだろう』
こういった狙いで王族の一人が創立したらしい。
つまり貴族は国の為に仲良くしてね、王家にも反逆しないでねということなのだろう。
しかしその絆とやらを王家に対し抱かせたいのならアリオス殿下は入学させるべきではなかった気がする。
授業前の空き時間、私は隣のクラスを後ろの扉からこっそり覗きながら思った。
イルミナージュ学院は共学だがクラスは男女別々だ。
なので彼と同じクラスではないことは唯一の救いなのだが。
「お前、気に食わないんだよ!」
「いつも俺たちを馬鹿にしているような目で見やがってよ」
「学年一位だからって偉ぶってよ、大体お前が一位を取るなんて殿下に対して失礼だろうが!」
男子クラスの中央で一人の少年が着席して本を読んでいる。金色の髪に緑の瞳、眼鏡をかけていて賢そうだ。
そしてそれを一目で賢くないとわかる男子たちが取り囲んでいる。そこから少し離れた席でアリオス殿下が行儀悪く座っていた。
彼自身は眼鏡の少年に対し何かを言うわけではないが、取り巻きたちは当たり前のように殿下の威を借りて因縁をつけている。
これが本当に貴族の子弟なのか。私はあまりの幼稚さに溜息を吐いた。
しかし何を言われても少年は無言で厚い本を読んでいる。
恐らく彼は虐められているのだと思うが罵声を完璧に黙殺していて全く悲壮感がない。
寧ろキャンキャンと騒ぎ続けている男子生徒たちの方が必死に見えてきた。
アリオス殿下は何もしないが表情がどんどん不機嫌になっている。そのせいかもしれない。
手下に圧力をかける様が惨めすぎてなんというか、もう自分自身で少年に喧嘩を売りに行けと思ってしまう。
それはそれで大事になるかもしれないが余りにも見苦しすぎる。
少年は流石にうんざりしたらしく本を持って席を立った。
「おいおい優等生様が今からサボリかよ」
「ハハッ、授業がつまらないからサボるって言っといてやるからな」
嬉しそうに不良生徒が囃したが完全に無視だ。
彼は教室中がひっそりと見守る中すたすたと歩き、そして後ろの扉に手をかけて大きく開けた。
すると当然覗いていた私の姿が教室内から丸見えになる。
その瞬間男子生徒たちの視線が彼から私に移るのがわかった。
前世には存在しなかったし王族と貴族が同じ場所で共同生活を送るということに正直エミヤとしては違和感がある。
『若い時期を共に過ごすことで絆が生まれ各々が協力して国を盛り立てていけるだろう』
こういった狙いで王族の一人が創立したらしい。
つまり貴族は国の為に仲良くしてね、王家にも反逆しないでねということなのだろう。
しかしその絆とやらを王家に対し抱かせたいのならアリオス殿下は入学させるべきではなかった気がする。
授業前の空き時間、私は隣のクラスを後ろの扉からこっそり覗きながら思った。
イルミナージュ学院は共学だがクラスは男女別々だ。
なので彼と同じクラスではないことは唯一の救いなのだが。
「お前、気に食わないんだよ!」
「いつも俺たちを馬鹿にしているような目で見やがってよ」
「学年一位だからって偉ぶってよ、大体お前が一位を取るなんて殿下に対して失礼だろうが!」
男子クラスの中央で一人の少年が着席して本を読んでいる。金色の髪に緑の瞳、眼鏡をかけていて賢そうだ。
そしてそれを一目で賢くないとわかる男子たちが取り囲んでいる。そこから少し離れた席でアリオス殿下が行儀悪く座っていた。
彼自身は眼鏡の少年に対し何かを言うわけではないが、取り巻きたちは当たり前のように殿下の威を借りて因縁をつけている。
これが本当に貴族の子弟なのか。私はあまりの幼稚さに溜息を吐いた。
しかし何を言われても少年は無言で厚い本を読んでいる。
恐らく彼は虐められているのだと思うが罵声を完璧に黙殺していて全く悲壮感がない。
寧ろキャンキャンと騒ぎ続けている男子生徒たちの方が必死に見えてきた。
アリオス殿下は何もしないが表情がどんどん不機嫌になっている。そのせいかもしれない。
手下に圧力をかける様が惨めすぎてなんというか、もう自分自身で少年に喧嘩を売りに行けと思ってしまう。
それはそれで大事になるかもしれないが余りにも見苦しすぎる。
少年は流石にうんざりしたらしく本を持って席を立った。
「おいおい優等生様が今からサボリかよ」
「ハハッ、授業がつまらないからサボるって言っといてやるからな」
嬉しそうに不良生徒が囃したが完全に無視だ。
彼は教室中がひっそりと見守る中すたすたと歩き、そして後ろの扉に手をかけて大きく開けた。
すると当然覗いていた私の姿が教室内から丸見えになる。
その瞬間男子生徒たちの視線が彼から私に移るのがわかった。
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