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一話 さようなら、エミア・シュタイト
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「勘違いするなよ、お前との婚約は親が決めたのであって俺はお前なんて好きじゃない」
だから馴れ馴れしくするな。
そう初めて見た時から最愛の人になったアリオス様に言われて、私は心臓が張り裂けそうになった。
けれどこの痛みにはもう慣れている。何度も、何十回も、言われ続けているから。
アリオス・ルーンファクト様。ルーン王家の第二王子。そして七歳の頃から私の婚約者だった人。
私だけがずっと好きで、愛されたくて、けれどそれを決して許してくれなかった人。
勘違いするな、馴れ馴れしくするな、お前とは政略結婚だ。
そう口癖のように言われて、けれどそう言わせてしまう私が悪いのかもしれない。
政略結婚なのに、彼は私を愛していないのに、愛して欲しいと願い続ける愚かな私が。
「お前は俺の子を産む役目だけの存在だ、俺にそれ以上を求めるな」
本当に俺を愛しているなら、それだけで十分喜べるだろう?
そうアリオス様に言われて私は頷こうとした。けれど出来なかった。
私の中の『誰か』がそれを許さなかった。そのことに混乱し冷たくなっていく指先を握りしめた。まるで祈りの形のように。
けれど、もし私の中に私ではない私がいるなら。
この私と、アリオス様を愛することを止められない私と入れ替わって欲しい。
愛している人に疎ましがられ迷惑がられ、嘲られるしかない私なんていらないから。消えてしまっていいから。
そう強く願った瞬間、私は前世を思い出した。
一人の人間として、誰も愛さず、誰にも頼らず生き抜いた人生を。
それはとても孤独だったけれど、私にはとても強い生き方に思えた。その感想を最後に私は睡魔に襲われる。
深い海の底にゆったりと落ちていくように私、エミア・シュタイトの意識は千切れ溶けていく。
「はい、貴男には何も求めません。何の価値もありませんから」
そう自分の声で、自分なら決して言わない言葉を聞きながら公爵令嬢として生きてきた私の意識は沈んだ。
だから馴れ馴れしくするな。
そう初めて見た時から最愛の人になったアリオス様に言われて、私は心臓が張り裂けそうになった。
けれどこの痛みにはもう慣れている。何度も、何十回も、言われ続けているから。
アリオス・ルーンファクト様。ルーン王家の第二王子。そして七歳の頃から私の婚約者だった人。
私だけがずっと好きで、愛されたくて、けれどそれを決して許してくれなかった人。
勘違いするな、馴れ馴れしくするな、お前とは政略結婚だ。
そう口癖のように言われて、けれどそう言わせてしまう私が悪いのかもしれない。
政略結婚なのに、彼は私を愛していないのに、愛して欲しいと願い続ける愚かな私が。
「お前は俺の子を産む役目だけの存在だ、俺にそれ以上を求めるな」
本当に俺を愛しているなら、それだけで十分喜べるだろう?
そうアリオス様に言われて私は頷こうとした。けれど出来なかった。
私の中の『誰か』がそれを許さなかった。そのことに混乱し冷たくなっていく指先を握りしめた。まるで祈りの形のように。
けれど、もし私の中に私ではない私がいるなら。
この私と、アリオス様を愛することを止められない私と入れ替わって欲しい。
愛している人に疎ましがられ迷惑がられ、嘲られるしかない私なんていらないから。消えてしまっていいから。
そう強く願った瞬間、私は前世を思い出した。
一人の人間として、誰も愛さず、誰にも頼らず生き抜いた人生を。
それはとても孤独だったけれど、私にはとても強い生き方に思えた。その感想を最後に私は睡魔に襲われる。
深い海の底にゆったりと落ちていくように私、エミア・シュタイトの意識は千切れ溶けていく。
「はい、貴男には何も求めません。何の価値もありませんから」
そう自分の声で、自分なら決して言わない言葉を聞きながら公爵令嬢として生きてきた私の意識は沈んだ。
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