敗北ルートが悲惨すぎる悪役令嬢の飼い猫に転生しました~ご主人様は天使なので絶対破滅させません~

砂礫レキ

文字の大きさ
上 下
19 / 24

19・まともな大人を連れてきてください、はやく

しおりを挟む
「アミーラはね、元々は別の男と夫婦だったのよ。ベアトリスはその時に出来た子ってわけ」


 衝撃の事実過ぎる。

 だがこれでマクシミリアンのベアトリスちゃんに対する冷淡な態度の原因が分かった。

 いや、やっぱわからない。あんなに冷たく接するならマクシミリアンは何故血の繋がらない娘を引き取った?

 何よりもベアトリスちゃんの本当のお父さんは?

 私が聞き耳を立てているのが分かったのかメイド女はペラペラと言葉を続ける。

 もしかしたらこうやってずっと誰かに話したかったのかもしれない。

 先程言ってた「私の役に立て」ってもしかしたら愚痴の聞き役にでもする気なのだろうか。

 まあペットって大体そういう役割をしている気がするけれど。


「でも娘が生まれてから間もなく旦那の方が事故で他界。途方に暮れたあの女を熱心に口説いたのがマクシミリアン様よ」


 生まれたばかりの赤子共々養って見せるってね。

 その事故って、もしかして……。

 いや流石にマクシミリアンといえどもそこまで非道な真似はしない……とも言い切れないのが困る。

 だってあいつ自分のルートでベアトリスちゃんを躊躇いなく刺し殺していたし。

 本当ドロドロして嫌な世界だな、このゲーム。いや今は現実だけれど。


「そうしてアミーラはマクシミリアン様の妻になってベアトリスも娘になった。けれど血の繋がっていない娘なんて愛せると思う?」


 女は無理だとでも言う様に蓮っ葉な声を立てて笑った。

 ……いや、ゲーム世界では普通に血の繋がらないヒロインを溺愛してるんだよなあマー坊。

 マクシミリアンがベアトリスちゃんを可愛がらない理由は単純に母親似じゃないからだと思う。

 そこに、自分の血を引いてないからとか亡くなったお父さんに似ているからとかが追加されているだけじゃないだろうか。

 イケFを知らないこのメイド女がアミーラさんそっくりなヒロインの存在を知っている訳がないから仕方ないけれど。


「あの女も薄々それに気付いていた。でも連れ子を可愛がれなんて図々しいことは流石に言えなかったのね」 


 だったら離婚すればいいのに。と思ってしまうのは自分が前世の価値観を持っているからだろうか。

 いやだってこれ誰も幸せになってないでしょ。アミーラさんもベアトリスちゃんも。

 マクシミリアンは……アミーラさんが手に入ればいいのかもしれないけれど。


「でも彼との子供が出来れば娘が益々邪険にされると思って体調不良を理由にずっと共寝を拒み続けているのよ」


 いや、やっぱりそこまでやるなら離婚しようよアミーラさん!

 その件に関してはマー坊もよく耐えてるよ、いや耐えてないからこの女と浮気してるのか。まっこと最悪な大人しかいないな。


「まあ、今の体調不良は仮病じゃないけれどね……私のおかげで」


 にたりと笑いながら女はスカートのポケットから何かを取り出す。

 どこか見覚えのある小瓶がその指に捉えられていた。


「少しずつ少しずつ……側付きメイドの立場を利用して毒を飲ませ続けたわ、色々な物に混ぜてね。アミーラは気鬱による衰弱だと信じ切っている」


 彼女が死んだら私がマクシミリアン様の妻よ。

 そう高笑いをしながら言う女はお伽噺の悪い魔女そのものだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

処理中です...