敗北ルートが悲惨すぎる悪役令嬢の飼い猫に転生しました~ご主人様は天使なので絶対破滅させません~

砂礫レキ

文字の大きさ
上 下
15 / 24

15・衝撃の新事実です

しおりを挟む
 私は獣人形態のレックスを通訳にしてオーウェンに事情を話した。

 ただし教えた情報は選んでいる。

 病気のアミーラさんがベアトリスちゃんの前に一切顔を見せない事。

 けれどベアトリスちゃんに長時間ピアノを弾いて欲しいとメイドを通じて頼んできたこと。

 そしてベアトリスちゃんが言うとおりにしたらマクシミリアンが怒鳴り込んできたことを話した。

 今回の説明では私の前世などについては語らないことにした。

 私の生前について話すことでこの世界が乙女ゲーム、いわば架空の世界であるとオーウェンに知られかねないと思ったからだ。

 自分が生まれ過ごしている世界が本物ではないなんて、その世界の住人に教えるのは悪趣味すぎる。それに何の益もない。

 だからベアトリスちゃんやオーウェンのゲーム時代の性格や状況についても教えていない。

 あえて先に伝えておくことで最悪な状況は回避できるかもしれないが、ただ今の時点でベアトリスちゃんやオーウェンの環境はかなり変わっていると思う。

 ベアトリスちゃんには私というペットがいるし、オーウェンだってゲームだと死ぬ間際にやっと気づいたレックスの獣人設定を既に受け入れている。

 だったら変に暗い未来を告げてぎくしゃくさせるより、このまま子供たちの意志で成長する方がいいと思う。

 ただアミーラさんの病死については匂わせる程度に話しておいた。

 彼女の死がきっかけでマクシミリアンは今以上にベアトリスちゃんに冷淡に当たり、数年後に妻に似た顔の少女を連れてくることになる。

 その間ベアトリスちゃんが闇落ちし悪役令嬢にならない為のフォローを私と協力して婚約者のオーウェンに頼みたいのだ。

 勿論デリケートな話題なのでアミーラさんはその内死ぬなんてダイレクトなことは言わない。

 部屋から出ることもできないぐらい弱っている程度に留めて置いている。

 けれどオーウェンは私のベアトリスちゃんの母親に関する説明を聞いて不思議そうな顔をした。


「……アミーラおばさんが重い病気にだって話、俺父さんたちから一度も聞いてないぞ?」


 は? 私は口をあんぐりと開ける。なにその新事実。

 じゃあなんで彼女は部屋から一歩も出ず実の娘であるベアトリスちゃんは会う事を許されないのだ。


「あのね、ベロア。ちょっといたい」


 知らず私を抱き上げていたレックスの腕に爪を立てていたらしい。

 私は彼に謝った。


「うん。大丈夫。ベロアが怒るのはとうぜんだとおもう。ベアトリスのいえの大人たち、ぜんいんおかしい」

「……確かにおかしいよな。だって俺の父さん、ベアトリスの家のかかりつけ医だぜ?」


 また新しい重大情報が出てきた。

 確かにオーウェンが医者の息子だというのはゲーム時代のプロフィールで知っている。

 しかしそんな所でもベアトリスちゃんの家と繋がっているとは。びっくりしたが好都合である。

 私はレックスににゃごにゃごと通訳を頼んだ。

 
「あのねベロア。とーさんにアミーラのシンサツしてほしい、だって」

「……うん。そうだな。俺今日帰ったら父さんに頼んでみるよ。色々な意味で放っとけないもんな!」


 あと母さんがアミーラおばさんと友達だから母さんにも話してみる。

 そう自分の胸を叩きながら言うオーウェンはまだ子供なのに非常に頼もしく思えた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

処理中です...