敗北ルートが悲惨すぎる悪役令嬢の飼い猫に転生しました~ご主人様は天使なので絶対破滅させません~

砂礫レキ

文字の大きさ
上 下
12 / 24

12・服を着ろ、話はそれからです

しおりを挟む
「うわっ、レックスが人間になった!!」

「……にゃおん」


 いや、正確には獣人です。

 私はそう説明したが当然猫の言葉がオーウェンに伝わる筈はなかった。

 獣人の仔狼レックスが突然人間の姿になった。

 結果、少年少女が互いの可愛いペットをお披露目し合うという微笑ましい空間が一気に混乱に陥る。

 それはそうだ。子犬みたいな生き物が消えたと思ったら獣耳の生えた美少年が突如現れたのだから。

 それはほんの少し前の会話がきっかけだった。

 籠から解放され嬉しさ全開のレックスにびしょびしょになるぐらい舐められながら私は彼に聞いたのだ。


『ねえ、アンタって人間の姿になれる?』

『なれるよ!みてて!!』


 元気のいい返事と共にレックスが発光した。なれるか聞いただけで今なって欲しいわけではない。そう説明する間もなかった。

 眩しさに閉じた目を開いた後、そこにはオーウェンより少し背の高い狼耳の生えた少年が立っていた。

 真っ裸で。


「キャアアアアアア!!」 


 ベアトリスちゃんが悲鳴を上げる。そりゃそうだろう。

 箱入りお嬢様が自分と同年代らしき少年の裸なんて見慣れている筈がないのだから。

 レックスの下半身が毛深いお陰で着ぐるみを腰のあたりまで脱いだ人っぽくなっているが上半身はツルッツルだ。

 そりゃあ初心なベアトリスちゃんは真っ赤になる。


「いやああああ!!無礼者!!」

「あはは、オーウェンのつがいのメス、げんきいっぱい!すっごいうるさい!!」

『ベアトリスちゃんをメス呼ばわりするなバカ犬!!』


 無礼なレックスの言葉に私は毛を逆立てて抗議をする。

 すると彼は私の前にしゃがみ込み、そのまま私の脇の下に手を回して抱き上げてきた。 


「あ、ベロア。ボクね、ニンゲンになれたでしょ?ほめて!ほめて!」


 銀色の獣耳をピコピコと揺らしながらレックスが大声で言う。

 思わずその動きに合わせて前脚を動かしながら私も言い返した。


『その前に、服を……服を着ろーーーー!!』


 子供とはいえ裸の胸に私の体を密着させるな!!
 
 恐慌状態のベアトリスちゃんと一緒に私も叫んだ。 


「え?でもボクの服なんてこの部屋にあるの?あっ、オーウェンからはがせばいいか!」

「は?レックスお前、よりにもよって俺から追剥を?!ショックだ!!」

『飼い主相手に犯罪はやめなさい!!』


 私がレックスに元の姿に戻れと命令すればいい事に気づくまで子供部屋が静かになることはなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

処理中です...